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ネイティブ教師とノンネイティブ教師、どちらを選ぶ?〜ネイティブ教師はノンネイティブ教師よりえらいのか〜

海外で日本語を教えていると、「日本人の先生だから」と言われることがよくあります。また、外国語を勉強するならネイティブから学びたいと思う人が多いですよね。それについてちょっと考えてみました。

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ネイティブ教師の強み

ネイティブ教師(教えている言語を母語として習得している人)の強みは、なんてったって母語であることです。つまり、ネイティブ教師の強みは、

・文法や語彙の適切な用法が感覚的にわかる

・適切な使用場面が感覚的にわかる

・学習者が作った文章が合っているかどうか(ネイティブが使うかどうか)判断できる

ということがあると思います。

ただし、「感覚的に」わかっても、それが説明できなければ学習者には伝わりません。それを感覚を使いながら論理的に説明できるのが、「ネイティブ教師」、つまり(ただの、というと失礼ですが)ネイティブとの違いだと思います。

ノンネイティブ教師の強み

じゃあ、ネイティブの方がいいんじゃないかと思いますよね。私は、ノンネイティブ教師(教える言語を勉強して習得した人)にも強みがあると思います。

・同じ言語の学習者として、難しい点や母語との類似性が指摘できる

学んだからこそ、「ここは母語と全然違うから難しい」「母語でこういう理解をするといいよ」など、学んだ経験があるからこその教え方ができます。ネイティブは「学んだ」ことはないので、推測でしか話せないんですよね。

・媒介語で説明できる

媒介語とは、勉強している言語(目標言語)以外に学習者と教師が意思疎通できる言語のこと。日本だと、大体どの外国語を勉強するときにも日本語を使いますよね?ネイティブが目標言語で説明してくれるとたくさんリスニングができていいですが、媒介語で説明された方が理解が早く、授業時間内にいろいろなことが説明できるという利点があります。

・安心して勉強できる

ネイティブ教師は、学習者と意思疎通が図れないこともしばしば(特に初級を教え始めた初日は、全く通じません。だって、今日日本語を勉強し始めたんだもん)。それに不安を覚える学習者もいます。ノンネイティブで媒介語があれば、そちらの方が安心して勉強できるという利点もあるようです。

・発音が聞き取りやすい

これは私個人の勝手な理由ですが、ネイティブの発音って、初級の段階だと全く聞き取れないんですね。耳が悪いから。でも、ノンネイティブの発音だと聞き取れるんです。モンゴルでもインドネシアでも、日本人が話しているモンゴル語やインドネシア語を聞いて、「ああ、そうやって言うんだ〜」と思ったことが何度もあります。私のように発音の聞き取りに苦手意識を持っている大人は、あえてノンネイティブ教師に教えてもらった方が聞き取れるので成長が早いんじゃないか?と思ったりします。

ネイティブ教師の弱み

ノンネイティブ教師の強みはネイティブ教師の弱みだと思うんですが、最大の弱みは「ネイティブであること」だと思います。語学教育において、ネイティブは絶対、みたいなところがあって、「ネイティブのいうことは全部正しい」と思われたり、ネイティブ自身も「私が歩く辞書です」みたいにおごりが出てくることもあります。

でも、海外で教えていると「あれ?この日本語ナチュラルかな?」「あれ、この場面ではどっちの使い方がいいんだっけ?」と迷うこともしばしば。日本語を使わない環境にいるので、最新の流行語や使い方を知らなかったりして学習者からの質問に焦ることもあるし、初級ばかり教えすぎてだんだん日本語が下手になったと思うこともあります。

ノンネイティブ教師の弱み

一番の弱みは、「教えられた方法で教えがち」というところです。日本語教育でいうと、自分が勉強した時はしっかり文法を学び、翻訳して覚える方法だったから、その教え方をする、ということです。

しかし今はいろいろな教科書があり、文法を学んで翻訳して、という教え方以外の方法もあります。最初に教えられた方法で学んで成功した(例えば日本語ができるようになった)からこそ、その教え方から抜けられないというのはよくあるようです。

ノンネイティブ教師がいるから、日本語が教えられる

上にあげたのは典型的な例で、今は「母語も目標言語も話せる」先生も増えていると思います。日本人で英語ペラペラな英語の先生のように、モンゴル人やインドネシア人で日本語がほぼネイティブ並みだったり、両方の国に住んだ経験からバイリンガルです、留学や仕事の経験があります、などとなると、上の例には当てはまらないですね…

ある外国語を最初に勉強するとき、ノンネイティブ教師から教わることが多いと思います。海外で日本語を勉強している人のことを考えると、自分の国で勉強するとき、最初はノンネイティブ教師(自分と同じ国の先生)に教わることが多いと思います。

ノンネイティブ教師が最初に日本語を教えて、「おもしろい」と思ってくれるからこそ、力をつけてくれるからこそ、日本語の勉強を続けてくれるし、ネイティブ教師の授業を受けたいと思ってくれる、日本に行きたいと思ってくれるのではないでしょうか。もっとノンネイティブの先生、自信を持ってもいいのにな〜と思いますが、なかなかネイティブの方が立場が上、みたいな力関係は変わらないものですね。お互いのいいところを生かして教えられるようになるといいなと思います。

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