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フレッシュさとおこがましさは、紙一重

「絶対、誰にも負けないこと」

社内報に今年の新入社員の自己紹介が載っていて、そのお題の1つがこれでした。なんちゅうこと訊くねん。酷やわ。何と答えても不正解やないか。社会人なりたてほやほやの彼ら・彼女らに「責任感です!」「スピードです!」「粘り強さです!」と言われても、「はっはーん(`∀´)」とオツボネ的微笑みがもれてしまうし、「僕は軽々しく”絶対”なんて言いません。絶対に」なんてはすに構えたヤツには、頭グリグリしたくなるし。しまいには、入社2ヶ月たらずで「愛社精神です!」とか宣言しちゃう意識高すぎ君もいて、「落ち着け」とあついお茶をすすめたくなりました。

かくいうわたしも、むかーしむかし、入社1年目で配属発表を受けたとき、「はやく即戦力になれるようがんばります!」(日本語としてオカシイ)と配属先に挨拶に行って、「おまえの仕事は、まず、育つことやから」とOJTのトレーナーをしてくださる先輩に諌められた黒歴史があります。きっと、誰もが通る道なんでしょうね。フレッシュさとおこがましさは、紙一重。

彼ら・彼女らは、これから、自負の鼻をへし折られていくことでしょう。だけど、身の程を知るって、委縮するんじゃなくて、与えられた役割をキャッチすること、キャッチするだけの想像力をもつこと。レスポンスの早さと、その想像力があれば、組織の中で居心地のよさを築いていけるんだよ、と遠くからエールを送ります。そして、先人としてできるのは、想像力を育む風土づくり。たとえば、ノー・モア・ダブルバインド!とかね。

たとえば、試合に負けたあとに、監督が選手たちに「どうして負けたのかのかわかるか?」と訊くような場合がこれ(ダブル・バインド)に当たる。選手たちはこれに正解すれば罰せられ(「なぜ、負ける理由がわかっていながら負けたのだ」)、もちろん誤答しても罰せられる(「エースが大殺界だったからです」というような答えを監督は決して許容しない)。どう答えても叱責されることがわかっている場合、選手たちはうつむいて無言のままこの心理的な拷問に耐えることを学ぶ。

内田樹「態度が悪くてすみません」

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