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【選挙ウォッチャー】 命の選別「トリアージ」をすると宣言した吉村洋文知事。

新型コロナウイルスの感染者数は、連日、過去最多を更新し続け、日本でも欧米のように感染が広がり、医療崩壊が起こるのではないかと心配されています。これから冬の寒さが本格化する日本で、もし第3波が起ころうものなら大変深刻な状況に陥っても不思議ではないと警鐘を鳴らしてきた人たちはたくさんいました。ところが、国単位で見れば「GoToトラベル」「GoToイート」といった経済政策に明け暮れ、大阪府という単位で見れば「大阪都構想」に明け暮れていました。経済政策の方は、新型コロナウイルスでさまざまな業界が大ダメージを負っていることもあり、これも新型コロナウイルス対策の一環だと考えることもできるのですが、「大阪都構想」は、今、このタイミングでやることに、まったく意味がありませんでした。第3波の予兆がフツフツしている時にろくすっぽ対策らしい対策を打たないままだったので、今、大阪の感染状況は非常に悪いのです。


■ 「トリアージ」を宣言した吉村洋文知事

あろうことか、吉村洋文知事は記者に囲まれ、大阪ではこれから「病床トリアージをする」と宣言しました。「病床トリアージ」というのが何を意味しているのかという話になってくるのですが、産経新聞によれば、一般の病気やケガの患者と新型コロナウイルスの患者を病院ごとに分けるという意味のようです。しかし、本当はこの「病床トリアージ」という言葉には、その先の意味が含まれているのではないかと考えられるのです。というのも、ただ入院する病院を振り分けるだけなら「振り分ける」と言えばいいだけなのですから、わざわざ「トリアージ」という言葉を使う必要はありません。「トリアージ」とは、大規模な事故が起こった時などに、命が助かりそうな人を優先的に治療することです。過去には、JR福知山線脱線事故や秋葉原無差別殺傷事件などでトリアージが行われました。本当は全員の命を平等に助けなければならないのだけど、事故や事件などで大量のケガ人が出てしまった時に、全員の命を救うことが物理的に不可能で、このままではより多くの犠牲者が出てしまう時に、1人でも多くの命を救うための選択として行われるのが「トリアージ」です。本当だったら「トリアージ」なんていうことは考えない方がいいわけで、緊急の緊急で、本当にどうしようもない時に使われるものです。ところが、吉村洋文知事というのは、これから重症患者が増えそうだという時に、重症患者を増やさないために最善の努力を尽くすわけでもなく、簡単に「トリアージ」という言葉を使っているのです。これは非常に危険な思想です。わざわざ「トリアージ」という言葉を使うからには、そこには必ず「命の選別」があるはずです。


■ 振り分けが「トリアージ」であるわけがない

吉村洋文知事の説明では、もしも新型コロナウイルスの重症患者が増えてしまうと、病院のベッドが埋まってしまうので、交通事故や脳梗塞などで入院を必要とする人たちが入院できなくなってしまう。だから、これからは新型コロナウイルスの感染者が入院している病院と、そうでない病院に分ける必要があって、これを「病床トリアージ」と呼ぶんだということになっています。しかし、本当にそうなのでしょうか。もし新型コロナウイルスの感染者を受け入れる病院と受け入れない病院に分け、感染者を特定の病院に集めるのだとすると、それはキャパシティーを逆に狭めることになりかねません。例えば、病床数100のA病院とB病院があったとしましょう。新型コロナウイルスの感染者をA病院、そうでない人をB病院に分けるとすると、200あるうちの100しか入院できないことになります。B病院でも受け入れることにすれば、そのうちの半分をコロナ感染者、もう半分を事故や病気の患者だということにして、両病院で最大150床にできるのですが、病院ごとに分けるというのですから、それでは100床が最大となり、受け入れられる患者の数は少なくなってしまうという現象が起こります。そうだとすると、この「病床トリアージ」というのは、とてつもなく頭の悪い政策だということになります。だいたい、交通事故にしろ、脳梗塞にしろ、命を助けるということで言えば1分1秒を争うものだと思いますが、病院ごとに振り分けてしまうのだとすると、本当はA病院なら3分で着くのに、A病院は新型コロナウイルス専門の病院になっているので、20分かけてB病院に行かなければならないという事態が発生します。そうなると、助かる命も助からなくなってしまうかもしれない。つまり、病院ごとに分けるというのは、「新型コロナウイルスにイソジンが効く」と言ってしまうぐらいに頭が悪いのです。こんなに頭の悪い政策のために、わざわざ「病床トリアージ」とか言ってドヤ顔をしているのだとすると、ゲロを吐きそうになるので、どこからどう見ても、限られた病床の中で本当に命の選別をするつもりなのではないかと思えてしまうわけです。吉村洋文知事には、本当はどういうつもりで言っているのかを問いただす必要があるし、もし「命の選別」という意味が微塵も込められていないというのであれば、どうしてこんなに頭の悪い政策でドヤ顔で語れるのかを問いただす必要があると思います。


■ 大阪都構想否決で独裁化が強まる維新

11月1日に大阪都構想の住民投票が否決された後の大阪市議会は、それはそれは「パワハラの嵐」と呼ぶべき悲惨な内容でした。大阪市を4つに分けた場合にはコストが増えるという試算を出した大阪市財政局の職員を吊し上げ、「これだけ頑張ってきた大阪都構想をぶち壊したのは、全部オマエのせいだ」と言わんばかり。「思想を持ってわざとやったんだろう」と因縁をふっかけて、集団リンチも同然。そもそも大阪維新の会が丁寧に試算を出して説明していたらこんなことにはならなかっただろうに、市民が納得する試算を出して説明をしなかったばっかりに、大阪都構想は否決されたのです。増えるコストをどう抑えるのかという議論もほとんどされず、これでは行政サービスの低下につながるのではないかという市民の懸念は、財政局の職員をどれだけ叩いたところで何も変わりません。しかし、大阪維新の会の議員たちは代わる代わる職員叩きをして、早くも3回目の住民投票を見据える始末です。第3波の予兆があるコロナ禍真っ只中に、わざわざ大阪市民を巻き込んで住民投票に行かせ、2回も否決されているのに、勝つまでジャンケンのごとく3回目をやろうとしている大阪維新の会。「大阪都構想の後から維新の独裁政権化が進んだ気がする」という声もあり、今こそ大阪維新の会をよく見守っていく必要があるのですが、大阪市議会で「パワハラの嵐」になっていたことは、ほとんどの大阪市民が知らないのです。


■ 吉村洋文知事にリーダーシップは無い

大阪の重症者数は東京の約2倍で、全国でも最悪となっています。他の自治体に比べて死亡率も高く、医療機関や高齢者施設での集団感染も確認されており、大至急の体制見直しが必要です。ところが、これほどの緊急事態に大阪維新の会は何をしていたのかと言ったら、ホテルの大広間を借り、新しい代表を決めるための選挙をしていました。「新しい代表なんて暫定的に誰がやってもいいから、今は市長や知事の仕事に専念してくれ!」とお願いするべきタイミングで、どいつもこいつも何の疑いもなく、雁首揃えてホテルに集まる始末。ただでも「身を切る改革」だと言って、保健所の数が減らされていて、「コロナかもしれない」となった時になかなか検査してもらえない環境が続いている大阪。独自にPCRセンターを作る自治体もあり、どこも発症の疑いがあった場合に検査するまでのスピードは早くなってきているというのに、地元の声によれば「大阪はいまだに6日近く待たされる」ということで、半年経ってなお、何も進化していないのです。6日もあったら、この間に症状が軽くなってしまった人は出歩いてしまうだろうし、入院もできずに悶絶しながら家で過ごすことになってしまうので、こうしている間に家族の感染リスクが高まるという話になります。一刻も早い対策が求められている時に、自分たちの政党の話に明け暮れて、議会では「職員叩き」に勤しんでいるのですから、このままだと次の選挙で大阪維新の会をトリアージしなければならなくなります。

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吉村洋文知事は、わざわざ記者会見を開き、迂闊にも「新型コロナウイルスにイソジンが効く!」と言ってしまったので、塩野義製薬の株を上げることには成功したものの、自身の株は大暴落。しかし、先日、毎日放送の番組に出演した際、トイレにイソジンが置いてあるのを見て大喜び。丁寧に写までつけて「僕のうがい薬会見を散々批判してたけど、自社のトイレにポビドンヨードのうがい薬を置いてるやんか。思わず使っちゃったよ」と紹介していました。僕がスタッフだったら、吉村洋文知事が来ると言われた瞬間、楽屋にお茶やお菓子を置くのと同じような感覚で、おもてなしの一環としてトイレにイソジンを置いておきますけど、特別な歓迎を受けているのかもしれないとは思わないのでしょうか。そうじゃなかったとしても、これから新型コロナウイルスだけでなく、普通の風邪やインフルエンザが流行る季節になるので、たとえ普通の風邪だったとしても、出入りしている人たちに体調を崩されるとややこしいことになるので、うがい薬を置いておくことはあるかもしれません。少なくとも「新型コロナウイルスに効く」と思って置いているわけではないでしょう。吉村洋文知事は、どこまで天然なのでしょうか。


■ ヤバいのは大阪だけではない

ヤバいのは大阪だけではありません。東京では小池百合子知事がフリップを見せながら「5つの小」と言い出し、「3密」に続く「5小」を唱え始めました。「小人数」「小一時間」「小声」「小皿」「小まめ」だそうです。少ない人数でと言いたいなら「小人数」「少人数」だと思うのですが、「小一時間」が出ている時点で、それはもう大喜利のように強引に捻り出したのではないかと思わずにはいられません。だいたい小池百合子さんにフリップを掲げながら会見をされて、このご時世に何も気にせず居酒屋で飲んでいるオッサンたちが「いっけねぇ、小一時間って言われているのに、もう2時間経つや。解散しようぜ!」となるんでしょうか。なんなら「GoToイートで安いから、もう1軒行こう!ぜ」になってしまうのではないかと思わずにいられません。この国の新型コロナウイルス担当大臣も、なかなかです。西村康稔さんは、これから新型コロナウイルスがどうなりそうかを聞かれて「神のみぞ知る」と答えました。「神のみぞ知る」にならないように仕事をするのが新型コロナウイルス担当大臣の仕事であり、なるべくデータを集め、精度の高いシミュレーションして、少しでも感染者を減らせるように、経済を回せるように手を打つのが「仕事」というものです。この国の科学的・医学的な権威である尾身茂会長も、なかなか強烈です。感染を予防する食事の仕方として、右手にお箸、左手にマスクで、一口食べてはマスクをするという斬新な方法を世の中に提案しました。それではミートソーススパゲティーでも食べていた時には、マスクの裏側がベトベトのミートソースまみれになると思うのですが、実際にやったらどうなるかをまったく考えない机上の空論を並べる始末。菅義偉総理大臣も「マスク会食」なるものを推奨。こうしている間に、この3連休は羽田空港で大行列ができており、みんなが「GoToトラベル」で旅行しまくり。こんなに医療崩壊待ったなしの大流行になりそうな時に、政府が旅行することにお墨付きを与えているのですから、みんな、旅行するに決まっているのです。国家単位でも自治体単位でも、バカが政治家をやっているところは悲惨です。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

僕が選挙ウォッチャーになって口を酸っぱく言っているのは、「バカを政治家にしてはいけない」という一点です。バカを政治家にすると、「トリアージ」みたいな言葉を簡単に使い、命が守られなくなってしまうからです。バカに問題を解決することはできません。なぜなら、バカだからです。問題が難しくなれば難しくなるほど解決できません。バカだからです。自分たちの選んだ政治家がちゃんと仕事をできる人なのかを、改めて見てみる必要があります。新型コロナウイルスの対応一つで、それはよくわかるはずです。

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