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【選挙ウォッチャー】 衆院選2021・東京8区レポート。

 10月19日公示、10月31日投票で、衆院選が行われました。
 この「東京8区」は、1996年に小選挙区制になって以来、ずっと石原伸晃さんが勝ち続けてきた盤石の選挙区ですが、なんと、初めて立憲民主党の吉田晴美さんが勝ちました。これほど劇的な勝利はなく、全体的には自民党の大勝となった今回の衆院選で、甘利明さんに太栄志さんが勝った神奈川13区と並ぶ快挙だと思います。

石原 伸晃 64 現 自民党
吉田 晴美 49 新 立憲民主党
笠谷 圭司 41 新 日本維新の会

 杉並区を中心とする東京8区には、これまでにいろいろな人が挑戦をしてきました。1996年には、のちに杉並区長となり、ネトウヨ界の重鎮となる山田宏さんが新進党から立候補。2009年には現・世田谷区長の保坂展人さんが社民党から立候補。そして、2012年には「れいわ新選組」の代表となった山本太郎さんが立候補。前回の2017年には中核派の斉藤郁真さんも立候補しています。
 こうした乱戦の中で、今回は吉田晴美さんが見事に当選を果たしたわけですが、まさに杉並区から新しい歴史が始まろうとしているという意味で、これは貴重な資料になると思います。


■ 笠谷圭司候補の主張

 笠谷圭司さんは、かなり変わったキャリアのオジサンです。
 もともとはプロ野球選手を目指していましたが、右肘を故障し、手術を受けるも夢を断念せざるを得ず、高校を退学してガソリンスタンドなどでフリーターとして働いていたものの、1995年に阪神・淡路大震災を経験。その時の日本政府と兵庫県の対応の遅さに怒りを感じたことで、政治に目覚めたといいます。
 1997年に大検に合格し、東京大学へ入学。学生時代に高円寺などに住んでいたそうですが、2007年に卒業。当時は既に議員の事務所を訪問して秘書のアルバイトをしていたといいます。その後、時事通信の記者になりましたが、2008年から2015年にかけて自民党所属の三田市議になりました。2015年には三田市長選に立候補しましたが、これが原因で保守分裂状態となり、自民党から離党勧告を受けて追放。選挙資金のために自宅を売却するほどの大勝負に出たのに落選したため、敗北してホームレスになってしまったといいます。
 生きる気力を失い、5ヶ月ぐらいは完全なホームレス状態にあり、空き缶を拾い集めて回収業者に売却して400円をもらい、200円の激安タバコとパンとチョコレートを買ってしのぐような生活だったとWikipedia先生には書いてあります。しかし、再び「頑張ろう」という気持ちが湧き、廃品回収業者に就職。燃やせるゴミを集めて空き地で廃材を燃やしていた時に焼き芋の美味しさに感動し、焼き芋の路上販売を思いつき、その資金で弁当店を開業。経営を真剣に学ぼうとしていたところ、ある企業の社長と知り合い、自民党の国会議員を紹介され、秘書業務を担当。その秘書時代に松井一郎さんと出会い、松井一郎さんに共感をしたことで、自民党から維新に移籍したという、ホームレスの経験がありながら維新に入ってしまうような謎のメンタルの持ち主です。
 ちなみに、この選挙では「業界・団体との癒着構造を外から壊したい」と自民党を批判する一方、「共産党と手を組む立憲民主党にこの国の第一党を任せられるわけがない」というネトウヨ思想を披露。落選後は、新型コロナウイルスのワクチンに関する企業のアドバイザーとして暮らしているそうですが、一体、何のアドバイスができるのでしょうか。


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