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結婚したい私と決めきれない彼とドゥーブルフロマージュ

2018年2月。

せっかくの彼との北海道旅行。
わたしはひとり、小樽を歩いていた。



マンションの更新月が、迫っていた。
更新するとそこから2年間は住むことになる。
彼と私は付き合って数年、
そろそろお互い良い歳で
このタイミングで一緒に住んで結婚、が
正直理想だった。
だってあとまだ2年も待つのかよ…が本音。

結婚しちゃう?

軽めの逆プロポーズ。

この時点での彼の答えは変わらずだった。

「まだ、できない」

まだ、とは、はて。

いつまでも、煮え切らない彼。
いい加減むかついていた。

わたしだってもうアラサーなのよ。
独身の友だちだってほとんどいない。
子どもも欲しいのよ。

なんて自己都合だけれども。

それでも数年付き合って、まだ、とは
なにがまだなんだろうと思っていた。

北海道旅行は
機嫌直しの提案だったのかもしれない。


とはいえせっかくだから、全力で楽しみたい。
あれしたいこれしたい!を考え、当日。
小樽に着いてすぐ、味噌ラーメンを食べた。
はしゃぐ私の隣で彼は突然
「味噌ラーメンの味がしない」
と言い出した。

高熱だった。
インフルエンザだった。

なんでなんだよ。笑

とりあえず病院に行かせ、
ホテルに詰め込み、寝かせる。

ひとりで、小樽観光。

ザクザク、雪の上をあるく。
こんなかわいい雪だるまにも
ちょっと嫉妬したりして。

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ひとりでいると、やはり考える。

なんだか全て、タイミングが悪い。
インフルエンザは、しょうがないが
逆プロポーズを断られたわたしには
なんだか神様の悪戯みたいに思えていた。


結婚したいのなら、すぐに別れて他を探したほうがいいのではないか。
そもそもわたしはこのひとと結婚がしたいのか
結婚がしたいだけなのか

あぁ、ばかばかしくなってくる。
世間体で結婚したいだけなのかもしれない。
もうやめよう。もう言わないでおこう。
結婚がなんだ。結婚教だ。
ひとりだっていい。
一緒にいたいならその気持ちに従う、それでいい。

そんな、お年頃の独身女子がよく陥る思考に襲われ
雪のちらつくなか、気づくとルタオのカフェに着いていた。

ここだって、一緒に来ようと思ってたのに。
甘いものが好きじゃない彼も
チーズケーキなら、食べられるから。

いいんだ、ひとりで食べてやる。

ひとりだって、楽しい。

たらふく色々なものを食べて
白い雪のなかで考えをめぐらし
すこし浄化された私はすっきりしていた。

インフルエンザの彼は病院に来るために北海道にきたのか?と
言っても過言ではないが
数日後に、帰宅した。



2021年、2月。

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突然ドゥーブルフロマージュを買ってきた彼は
夫になっている。


色々とタイミングの合わない2人。
北海道旅行以来、結婚を口にしなくなった私に
彼は2年後、突然
家を買おう。と言い出した。

要するに、「まだ、できない」というのは
当時私と彼は収入がほぼ変わらなかったため
もう少し、役職がついて
稼げる見通しがつくまで、
養えると自信がつくまで、待ってくれ
という意味だった。

何よりも先に
やしろを構えて安心させてあげたいという
彼なりの優しさの、提案。

それ、言ってくれよ。
危うく別れを考えてたわ。
ていうかプロポーズ先でもよかったやんか…
指輪パカッに憧れてたのに…
などなど色々考えたが、
まあ、順番はこの際いいか。


2年間、よく頑張ってくれたんだな。
そして、わたしも、よく頑張ったね。


タイミングの合わない
ただでさえ他人なのだから
これからはちゃんとなんでも
伝えるようにしよう。

コロナ禍もあり、何もできないが
夫婦になって、家も建ったおかげて、
快適に自粛期間を過ごすことができている。


あのときは食べられなかったドゥーブルフロマージュ。
まだ新しいダイニングテーブルで
ウィスキーと共に2人で食べる。


あのときは、ごめんな。これからも、よろしく。
そんな言葉がついてきそうな顔で
彼は夢中で食べる私の頭を撫でた。


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