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変わること、そして、変えないこと。 【PERFECT DAYS】

高校生の頃から貪るように映画を観ていた私。

印象的だったものは手帳に記録していたけれど、せっかくなのでこちらでも書いてみることに。

今回の映画は【PERFECT DAYS】

こんなふうに生きていけたなら

東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は、
静かに淡々とした日々を生きていた。
同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働いた。
その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、
同じ日は1日としてなく、
男は毎日を新しい日として生きていた。
その生き方は美しくすらあった。男は木々を愛していた。
木々がつくる木漏れ日に目を細めた。
そんな男の日々に思いがけない出来事がおきる。
それが男の過去を小さく揺らした。

https://www.perfectdays-movie.jp/story/


タイトルにもありますが、
個人的にこの映画を簡潔に表すとするなら


変わること、そして、変えないこと。


毎日規則正しく生きる平山の
ルーティーン化された日々。

一見すると、毎日同じことの繰り返しのように思えるけれど、その日々のなかには、小さな変化がたくさん落ちていて。

彼はそれらを丁寧に拾って、感じて、
生きているんですね。

彼にとっては1日として同じ日はない。

映画の序盤から中盤にかけては、ゆっくりと描かれるこの平山の日常を通して、忙しなく生きる私たちが見逃してしまっている大切なものに気づかせてくれる。

しかし中盤以降、この規則正しい平山の日常が周りに人々によって、徐々に崩れていくことに。

途中平山が「変わらないことなんてない」と呟く場面があるのですが、この一言で、私のこの映画に対する見方が変わりました。

それまで変化というものは、平山のルーティーン化された日常にほどよい刺激を与えるものとして、好意的に描かれていると捉えていました。

でもこの言葉を聞いて
ああ、平山は逆だったんだ、と。

彼にとって、ルーティーン化された日々というのは、変わらないことなんてないこの世の中で、なるべく変わらない自分の世界を構築するための、ある種、自己防衛のようなもの。

このルーティーンがあるからこそ、目まぐるしく変わる社会や時の流れから隔離された自分だけの時間を保てる世界がうまれ、それが平山の心の平安、穏やかな日常に繋がっている。

でも、生きている以上、人と関わっている以上、そのペースが崩れ、心が掻き乱されてしまうことも必ずある。

その時はその変化を拒絶するのではなく、
ゆっくりでもその状況を受け入れていくこと。

彼の確立された禅的な生き方と
そこに垣間見える心の葛藤に
人間らしさと愛おしさを感じました。


社会人になりたての20代前半は、ひたすら毎日に何かしらの変化や刺激を求めていた私。

でも20代後半になり、変化を求めつつも、
その怖さや悲しさというものが
徐々に分かるように。


変わること、そして、変えないこと。


この映画はそんな私に、穏やかに生きるヒントを教えてくれた気がします。





観ている人の解釈に委ねるような
説明しすぎない、余白を持たせたストーリー。

そして、全てがつまっていた
ラストのあの表情。

忘れられません。

鑑賞後は、まるでワインのように
いい余韻がゆっくり、じんわりと
続いていました。

映画に限らず、いい芸術作品というのは
鑑賞後もずっと、観た人のこころに
心地よい余韻をもたらしてくるものだなと
改めて感じた1本です。


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