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マドンナ

前回「ガール」を読んで気に入ったので、今度は奥田英朗さんの「マドンナ」を読んでみた。ガールとは対照的に、こちらは中年男性のオフィスストーリー短編集である。

私が今まで社会で関わったことのある中年男性といえば、基本上司位で、自分にはその生態は今までほぼ謎であった。父以外にその生活様式を直に観察する機会など無いし、父の単身赴任生活が長かったので、この本を読んで個人的にいくつか新しい発見があった。

この短編集では、彼らのクスッと笑ってしまう様な愛おしい姿や会社のヒエラルキーの中で重圧に耐えながらも頑張る姿、家族に虐げられつつも一家の大黒柱として踏ん張る姿など夫として、会社の一員として、父としての色んな中年男性の姿を垣間見る事が出来る。

ストーリーに引き込まれていく中で、今までぼんやりとしたイメージだった中年男性という存在に色んなカラーが付けられていく。そして以前よりも人間味と親近感が湧くのだ。


カッコつけたい、一家の家長だという自負と家族には尊敬されたいという願望、そんな彼らの「僕」的な部分や内面も細かく描かれているので新鮮であった。その彼らの目に映る女子達の姿は女子から見る女子像とは違っていて、興味深かった。

まぁ自分達若い/中年女子の目に映る中年男性像が男性の目に映る男性像とは異なる様に当然の事なのだろうが。


なんと言っても、前回「ガール」の感想文でも述べた様に、奥田さんの女性目線が本当にリアルで違和感がない。無さすぎる。素晴らしい芸当である。女の気持ちが透視出来てる?!レベルである。笑 

だから、今回も男性、女性両方の登場人物達のリアルな会話や人間模様がストーリーを更に身近に感じさせ、共感を呼ぶ内容に仕上がっている。


これでいいんだ、世の中は。主義だの美意識だのは、生活する上で邪魔なだけだ。自分だけが人とちがうことをして、特別な人間にでもなったつもりでいるのは、子供じみた振る舞いなのだ。ー本文より


そう自分に言い聞かせて、社会の中で生き残る為に割り切って、ストレスも酒とタバコで何とかやり過ごす。そしてまた明日、朝から満員電車やバスに揺られ出勤し、夜遅くまで働くのだ。週末は仕事モードを無理矢理オフして、何とか家族時間を捻出する。こんなちょっと切なくて、でも家族を養う為に頑張る、懸命に生きる、愛すべき姿が容易に想像できた。


これからはもっと父親に優しく、一層リスペクトを持って接しようと思った。毎日お疲れ様です。そしてご苦労様。家長としていつも家族を支え、守ってくれてありがとう。そうきちんと言葉にして伝えたいと思う。


世の中年男性の皆様、今日も本当にお疲れ様です。

そして中年男性だけではなく、全ての皆様、今日もお疲れ様でした。


また明日も素敵な一日となりますように。

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