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シワのある手は恥ずかしいですか🤚

            ( 約1,100字 )

いつも読んでいる方の記事です。

私は、一緒に暮らしていた祖母のことを思い出しました。

私が生まれたのは春でした。
もう50年くらい前。
当時、静岡市に古い国立病院がありました。

現在は、社会福祉施設が建っています。

母は、その病院でわたし達3人のきょうだいを生みました。

私は長女で、その翌年には弟が生まれ、
その3年後には妹が誕生しました。

私は、当時、保育器に入ってもおかしくない
2,400グラムで生を享けました。

「こんなに大きな声で泣くから、保育器に入れなくても大丈夫でしょう」

と、お医者さんは話したそうです。

保育器に入らなかった私は、異例のスピードで退院して、田舎の家に暮らし始めました。

私のおばあちゃんは、歯に衣着せぬ物言いをする人でした。

「こんなに小さい足で、あるけぇるように
なるだか」

と、私の足を撫でながら言ったそうです。

私は、現在、24㎝の靴を履いています。

弟は、27㎝くらい。妹は、25.5㎝くらい。

私は、幼少期はダントツに小さい足でした。
しかも、手も小さく、学生の頃は、
「もみじ🍁みたいな手だね」と友達から
からかわれていました。

爪は小さくないですが、手全体がちんまりしています。
お楽しみ会で、小銭を掴む大イベントでは、
他の人より群を抜いてお金を掴めませんでした。それは、逆に自慢になるくらいでした。

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 高校生になった頃、
おばあちゃんとテレビを観ながら話していたときのことです。

「白くて、かわいい手だねぇ。
あたしはこんなに真っ黒で、シワシワになっちゃって、歳をとったよ」

と言って、祖母は私の手をさすりました。

私は恥ずかしい気持ちになって、思わず手を引っ込めました。
私は何もしてない、何も出来ない両手をさらして生きている、と思いました。

「おばあちゃんの手は、働いてきた手だよ。
私は畑を耕したり、ジャガイモを掘ったり、シイタケのホダ木を組んだり、できないよ。
私の方が、カッコ悪いよ」

と言ったのを覚えています。

祖母は、とても小柄で、背骨が曲がっていました。誰よりも働き者で、一日中、庭の手入れをしたり、畑仕事をしたり、山を見にいったりしていました。 

一緒に城山(じょうやま)に登り、
どこまでがウチの山の境目かを、
子どもの頃に教わりました。 

これはイノシシの住む穴だとか、猿が食べた椎茸の跡だとか、山菜の採りかたや、栗拾いの仕方を教わりました。

私は、寝るときに万葉集を読む祖母が、外気に焼けた手でめくる本のかすかな音を聞くのが好きでした。

シワの数が増えることは、それだけ働いてきた肉体の証です。

何も恥ずかしいことではありません。

それを醜い、と思うココロが、醜いのです。





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