見出し画像

『牛ラボマガジン』創刊のご挨拶

みなさん、初めまして。牛ラボマガジン編集長の山本郁也と申します。このたび『牛ラボマガジン』というメディアをはじめることになりました。

『牛ラボマガジン』とはかんたんに言えば、牛を出発点として、人間や自然や命などについて考えるためのウェブメディアです。テーマは「牛から考える、社会・自然・人間」です。
このメディアを通じて、みなさんと一緒にいろんなことを考えていければと思っています。
と言っても、これだけではまだよくわからないと思いますので、もう少しだけ自己紹介をさせてください。

ぼくたちはいま、千葉市の乳牛育成牧場跡地を利用して、新しい観光施設を作っています。まさにいま、2020年秋のプレオープンを目指して設計を進めている最中です。牧場として牛たちを育てながら、千葉市の魅力を発信できるような、たくさんの人に喜んでもらえる施設を目指しています。遊ぶことができたり、買い物ができたり、泊まることができたり、いろんなことができる施設になる予定です。(施設についての詳しい情報は『牧場つくるマガジン』で紹介しているので、そちらもご覧いただけると嬉しいです。)

🌱🐮🌱

なぜメディアを始めるのか

さて、いちばん最初に編集長と名乗りましたが、ぼくは正直、牧場や牛のことにはまったく詳しくありません。このプロジェクトに関わることが決まってから勉強しはじめたくらいの素人です。だから本当は編集長などと名乗る資格は無いと思っています。ではなぜわざわざ編集長と名乗って、こんなメディアを始めるのか。

それは、牧場や牛のことを勉強していくと、たくさんの気づきがあったからです。これまで勉強したことがないのだから当たり前かもしれませんが、知らないことばかりでした。
牛の幸せを大切に考える飼育方法、牛肉の美味しさの秘密、美味しい牛乳とそうでない牛乳の違い、命を管理するということの倫理的な問題、牧場を開発することによる自然への影響など、他にもたくさん。
この大切な気づきを、みなさんにも共有したかったのです。そして、ぼくらだけではなく、みなさんと一緒に考えていきたいと思ったのです。だからメディアを始めることにしました。

🌱🐮🌱

このメディアを通じて考えたいこと

たとえば、牛のことを勉強するためにいろいろと調べていたら、こんな文章を目にしました。

“ブタが動物であることは忘れて、工場の機械のように扱いなさい。つまり、機械に定期的に油をさすように、ブタもスケジュールどおりに処理しなさい。繁殖期も、工場での組み立てラインの第一段階と思って扱えばよいし、市場に出す際も、仕上がった商品を出荷するのと同じように出せばよいのです。”(J・バーンズ, 『ホッグ・ファーム・マネジメント』1976年9月号より)

ぼくはこれを読んで、何も思わずにはいられませんでした。

言うまでもないことですが、牛は命です。ぼくらはその命をいただいています。つまり、たくさんの牛を死なせながら、ぼくらは生きています。それを悪いことだと言うつもりはありません。責めるつもりもありません。それが生きるということだと思うからです。
ですが、その裏でどんなことが起こっているのか、もう少しくらい知っておいてもいいと思ったのです。牛の幸せを願って大切に牛を育てている人の物語、美味しい肉の秘密を研究し続けている人の物語、人間のために苦しむ牛の物語、飼育工場の倫理について考え続けている人の物語、その他のたくさんの物語。ぼくらが何気なく牛を食べるその背後には、様々な物語があるのです。

この牛ラボマガジンでは、そういった「牛と人と自然の物語」を伝えていきたいと考えています。そして、それを通じてぼくたちもたくさん勉強していきたいと思っています。

🌱🐮🌱

牛から考える、社会・人間・自然

このメディアで伝えていきたいことの大きなカテゴリーは、「牛の生態」「動物の幸せ」「食と環境」「酪農とビジネス」「酪農のこれまでとこれから」の5つとなる予定です。
こんな不勉強なぼくが編集長を名乗るのは大変恐縮ですが、一生懸命勉強しながらみなさんと一緒に考えていきたいと思っていますので、暖かく見守っていただけたらと思います。大げさな話ではなく、牛のことを考えることは、人間や自然のこれからを考えることだと思うのです。

そして、ぼくらがいま作っている観光施設も、「牛と人と自然の物語」を中心とした観光施設になると思います。完成したらぜひ遊びに来てください。誰もが楽しめる場所を目指して、プロジェクトメンバー全員で一生懸命に考えながら計画しています。

次は、「牛から考える、これからの地球」をテーマに、有識者の方へのインタビューを記事にして掲載したいと考えています。2月中には公開できると思いますので、公開の際にはぜひ読んでいただけると嬉しいです。

最後に、ぼくが動物について深く考えるきっかけになった本の一文を紹介して終わりにしたいと思います。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。そして、これからよろしくお願いいたします。

“人類史はじまって以来9000年の永きにわたって、家畜動物たちは生産労働の苦役の多くを肩替わりして私たち人間を楽にしてくれた。そのおかげで私たちは、余暇の時間を文明のためにふり向けることができたのだ。しかるに今日、畜産業は最大の食品産業となり、日々の生活を左右する存在になっている。それが被っている変化について、私たちは目を見開かなくてはならないーー私たち自身のためのみならず、私たちをとりまく全自然のためにも、である。”(ジム・メイソン, ピーター・シンガー, 『アニマル・ファクトリー』 まえがきより)

🌱🐮🌱

(執筆・編集:山本文弥)