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椰子の木、そよぐ。

とうとう、この日がやって来た。

ミャンマー初の社員旅行である。早朝4時台にタクシーがつかまるかわからず、バス停近くに前泊するという念の入れようである。

レセプションの方に入口を開けてもらうと、ぐっすり眠っている野良犬をふまないように、そうっと外へ出た。11月の空はまだ暗くて、星が瞬いている。

痛烈に、後悔がおそってきた。

もし皆に何かあったとき、責任がとれるだろうか。延期すべきだったのではないか・・
しかし、ホワイトボードには真っ赤な文字で、グエンサウンビーチ!!と記されている。みんな、この日を目標にこれまでの忙しさを乗りきってきたのだ。もし延期などしたら二重にがっかりするだろう。

なにもしなければ、失敗もない。

ふと足元に目をやると、たき火の周りで子猫たちが追いかけっこをしている。そうだ、このホテルの近くで、伝統市場がみられるといってたっけ。市場で働く人たちの食堂が夜明け前から、火をおこしているのだ。

気を取り直して、大通りに出ると、バス停は黒山の人だかりであった。ヤンゴン市内をぐるっと周ると大型バスは満席となり、何台も連なって、街道へと走り出した。


帰路に向かうバスの中は大合唱で、笑いがこぼれていた。ミャンマーの若者たちに笑いしかない風景を久々に見た気がする。

想い出したのは3.11の夏のことだ。
大学生であふれる仮眠所は、ブルーシートで男女に区切られていた。驚いたことに、すぐ外の簡易トイレに向かうために、女の子たちがマスカラをし始めたのだ。パックをしている子もいる。昼間は、波で荒れはてたお墓を片付けていた子たちだ。

大学の頃、ボランティアをするのは、化粧っ気もなく、教室の片隅ではにかんでいるような子たちであった。それが今や普通の子が、東北まで寝袋をもってやってくる。この若者たちが社会の主流となる、10年後の日本が楽しみだと思った。

そして2023年の今、ミャンマーで若者たちの大合唱をきいている。よく働き、よく遊び、心配ごとなんて歌い飛ばしちゃうのだ。そんな歌声をきいていたら、10年後のミャンマーが楽しみになってきた。

「あれは、ペンタクーですよ。」

車窓の向こうには満月の下、お菓子をねだる子供たちが走り回っている。昨年は初めてのペンタクーでひまわりの種を配った。今年は、椰子の木がそよぐのを皆で眺めている。


マイフェアレディという映画がある。
淑女というものは、周りからそう扱われることでレディになっていくというお話だ。
代表取締役というものもそうなのかもしれない。周りから責任を問われそのように扱われていくことで育まれていくのだ。そして重要なのは後半、取締の部分なのかもしれない。

月は東に、日は西に。

歌声の向こうに、ダザウモンの満月が浮かんでいた。




A Pyar Yaung Nya / Myo Gyi 


#旅のフォトアルバム #ミャンマー #グエンサンビーチ
#ダサウモン #満月 #多様性を考える

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