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[油圧ショベル×電気]EV化する油圧ショベルの課題[練習]

油圧ショベルに電動化の波

建設機械にも押し寄せる、電動化の波。
クルマ業界で”EV”という呼び名が広まって久しく、「クルマではじまれば、建設機械も」といった具合に、建設機械業界でも、各社メーカが"EV化"に取り組んでいます。

今回はこの「油圧ショベルの電動化」について、記事を書いてみることにします。

電動ショベルカーの現状 - 日本

先月、千葉で行われた建設機械の見本市「建設・測量生産性向上展 CSPI-EXPO」。
ここで、今回見られたのは以下のような機械たちでした。
・竹内製作所 TB20e(2tクラス電動油圧ショベル。去年もお披露目)
・BOBCAT E10e(1tクラス電動油圧ショベル)
・キャタピラー 320(22t)、301.9(2t)のバッテリ式電動油圧ショベル
・コマツ PC01E(340kgのマイクロ電動油圧ショベル)

昨年の同展覧会でも、一部お披露目していたメーカはありました。
しかし、今年の展覧会では、電動油圧ショベルを展示するメーカが増えた印象。

日本市場で、既に上市している(らしい)機械は、竹内製作所TB20eとコマツのPC01E。
一般販売はなく、レンタルのみで使用可能です。


電動ショベルカーの現状 - 欧州

脱炭素の取り組みが強いヨーロッパ。
機械を上市しているメーカのうち有名なのは、クルマメーカとしても有名なVOLVOでしょうか。
他にも、先述のBOBCATや、日立建機、ワッカーノイゾン、JCBなども、いくつかラインナップをそろえています。

昨年の10月に行われた世界的な建設機械の見本市"bauma(バウマ)"でも、各社が電動化油圧ショベルを展示している様子が見られました。

「2030年までに温室効果ガスを55%以上削減する」といった目標を掲げているヨーロッパ。
今後も、エンジンから電動モータへの置き換えは進みそうです。

電動化の課題について

電動化のメリットは、クルマ同様に挙げられています。
一方で、油圧ショベルの電動化には多くの課題が存在します。
その中でも、重要なものを3点挙げてみます。

  1. 電力供給インフラの整備

  2. 長時間稼働への対応

  3. 機械の重量とパフォーマンスのバランス

1. 電力供給インフラの整備

油圧ショベルを電気で動かそうとするとき、十分な電力供給が必要です。
今のクルマ、EVでも時折言われる「充電ステーションが見つからない問題」です。

油圧ショベルとEVが異なる点としては、以下だと思います。
 クルマは、道中に充電ステーションを経由することができる
 油圧ショベルは、作業中はずっと現場にいる

油圧ショベルが、充電しながら一日中作業を行うとき、現場に充電ステーションか、充電できる設備が必要となります。
スマートフォンのように、壁などのコンセントから充電ができると良いのですが、スマートフォン以上に大容量のバッテリを搭載する機械には、電力供給が足りません。

充電をしている間、工事を止めるわけにもいきません。
できるだけ短時間で満充電できるような電力供給が求められます。

また、工事現場に必ずコンセントがあるとは限りません。
例えば、山の中。
ガス欠であれば、軽油を持ってくれば対処可能そうですが、充電がなくなってしまうとどうしようもありません。
スマートフォンのように、モバイルバッテリーで充電ともできないのが現状です。


2. 長時間稼働への対応

油圧ショベルは、長時間にわたって動くことが求められます。
ざっと、1日の労働時間。すなわち8時間程度。

油圧ショベルの主な仕事は、土を掘る、運ぶ、埋める。
現場によっては、クレーンのようにモノを吊ったり、地面を平らにするために走ったり、木を切ったりします。現場によって様々な使われ方をします。

さらには、クルマと違って、ブレーキ時のエネルギー回収がありません。
航続距離を伸ばすために、クルマは、ブレーキ時や下り坂で、動エネルギーを電気エネルギーに変換し、バッテリーに回収します。

一方で、油圧ショベルには、エネルギー回収をする動作がほとんどありません。
バッテリの電力が続く限り、電気エネルギーを消費していきます。

このうえで、1日中作業ができることが求められます。


3. 機械の重量とパフォーマンスのバランス

電動化に伴うバッテリの搭載は、ショベルカーの重量やパフォーマンスに大きな影響を与えます。

一般的にバッテリーを搭載すると、元のエンジンを搭載した機械に比べて重量が重くなります。
そして、長時間稼働を目的に多くのバッテリーを搭載すると、それだけ機械は大きくなります。

大きな見た目と裏腹に、パフォーマンスは小さな機械。
工事現場で使うツールとしては、受け入れられなさそうです。

この稼働時間の確保と機械の大きさに加え、その機械として求められるパフォーマンスも確保できるかが、課題となっています。


課題クリアのために

これらの課題に対しては、様々な研究開発が進められています。
例えば、高密度・高容量なバッテリの開発、急速充電技術の進歩、そしてスマートグリッドとの連携などが挙げられます。

急速充電技術が進歩すれば、たとえ連続で長時間動かすことができなくとも、休憩時間で、フル充電を期待できます。

スマートグリッドとは、発電所と事業所が連携して、効率的に電力を供給する電力網のことを指します。
IT技術を利用したこの方法で、必要な時に、必要な場所へ電力を届けることができます。
例えば、近くの太陽光発電をしている場所から、充電電力を供給することができるかもしれません。
電力の供給網が強化されれば、それだけ現場の制約がなくなるものです。



まとめ

ショベルカーの将来を見据え、各社が取り組んでいる電動化。
確かに、使用時の排出ガスが無いことや、騒音・振動の削減には期待があります。
一方で、明らかな課題は、インフラ整備や長時間稼働への対応、重量とパフォーマンスのバランスなどがあります。

今後の技術の進歩によって、ショベルカーの電動化は進展するかもしれません。
より効率的で、環境にも配慮した建設現場となると良いですね。



今主流のリチウムイオンバッテリーの課題もありますが、これはそのうち。

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