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話題のレッサー・ユリィ。絵を見るには画家自身のルーツを知るべし。

こんにちは。ちあきんぎょです。

少し前のことですが、東京・丸の内にある三菱一号館美術館で開催されていた「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 -モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン」に行ってきました。

三菱一号館美術館といえば、西洋風の特徴的な建物が特徴ですよね。

館内では暖炉風な壁に絵が飾られていたり、趣のある展示が素敵です。

併設されるミュージアムカフェ「Cafe1894」は、もともと銀行営業室として使われていたということで、元銀行員のわたしにとっては何ともシンパシーを感じる場所です。

一度だけミュージアムカフェで食事をしたことがあるのですが、復元された銀行の窓口や引き出しなど、「おおっ」と思うような内装でした。

さて、都内の会期が終了したのに今更なぜ、記事を書いているのかといいますと。

すでに展覧会へ行かれた方は「レッサー・ユリィだな」と、これから行くために情報収集されている方も「レッサー・ユリィだな」と思われていることでしょう。その通りです

わたしも、初めて見るユリィの絵に一目惚れをした一人です。

そしてつい先日、山田五郎さんのチャンネルでもレッサー・ユリィが紹介されているのを見つけ、触発されて筆を執っている次第です。


初めて見たときの感想


光の系譜展へは主人と二人で行ったのですが、初めてユリィの絵を見た途端、お互い顔を見合わせてしまいました。

「こんなに素敵な印象派の画家がいたんだ!すごい!」
そんな感じでした。

〈夜のポツダム広場〉は、雨に濡れた地面に、じんわりと建物内の灯りで照らされています。傘を持つ人々の話し声、濡れた足音が聞こえてきそうです。
「好き!」そう思いました。

左〈夜のポルダム広場〉 右〈赤い絨毯〉
どちらもポストカードの写真です。

他にも、〈赤い絨毯〉〈風景〉〈冬のベルリン〉の計4点が来日しており、つい足を止めてしまう素敵な絵画ばかりでした。

帰宅してからレッサー・ユリィについて検索しましたが、ほとんど情報がなく。
主人と「良い絵だったね」と乾杯しながら、またどこかの美術館で会えたらいいなと思っていました。


山田五郎さんの解説動画


山田五郎さんも、ユリィはご存じなかったそうです。

ユリィについて調べようとしてもインターネットには情報が少なく、アマゾンで購入できる文献はドイツ語ばかりだったからと、ドイツ語の文献を読んで解説してくれていました。

ぜひ、五郎さんの解説動画は見ていただくとして、僭越ながら、動画の内容をかいつまみながら、わたしの感想も挟ませていただきます。

わたしはユリィの絵を見たとき、「素敵な印象派の画家」と感じたのですが、彼の生年は印象派のもっと後。
モネやルノワールより20歳下で、ロートレックやムンクと同年代です。

そして、彼の絵を見るうえで大事な点は2つ。
1つめは、ユリィが「ユダヤ人」であるということ。
2つめは、「お金」が関係しているということです。(やっぱり!)

自分の好きなこと(仕事)をしてお金がもらえたら、それほど幸せなことはないですよね。わたしもそうです。誰だってそうだと思います。

魅力的な夜景や街角の絵を描くユリィですが、彼が本当に描きたかったのは、宗教画でした。

シオニズム運動に影響を受けていたユリィは、旧約聖書(ユダヤ教)の物語を現代的に描きたい。そんな宗教画家としての顔もあったようです。

〈祈るダビデ〉1900~1907年
ウィキメディア・コモンズ引用

しかし、彼の宗教画はあまり売れなかったので、生活のためにも夜景や街角などの絵を描きました。
若いころは絵の修行のため各国を飛び、さまざまな師匠のもとで学んだことで、印象派の技法も身につけていたのでしょう。

当時、ユリィが描いた宗教画たちは、ベルリン・ユダヤ博物館に収蔵されます。
しかし、ナチス政権下となったことで、ユダヤ博物館は閉鎖、作品は没収、散逸・・・その後、作品の一部がイスラエル博物館へ行き渡りました。

ナチス政権下となったのはユリィ没後のことだったので、こういった悲惨な事実をユリィ自身は知ることはありませんでした。

ユダヤ人に限りませんが、宗教観は民族や個人のアイデンティティを形成する重要な部分ですよね。
日本人には宗教観って馴染みは薄いかもしれませんが、もったいない精神とかは日本の神道に通ずるものかと思います。八百万の神様ですから。


解説を見たあとの感想


わたしが「素敵な印象派の画家」と感じた人は、本当は「シオニズム画家」でした。

第一印象も大切ですが、初対面の人をそれだけで判断してはいけないなぁ、きちんと相手の本質やルーツを知るべきだなぁと思いました。

ユリィの描く夜景や街角などの絵は素敵です。しかし、こういった同じような絵を描きすぎたことで、後年の絵の価格相場はイマイチなんだそうです。

でも、そうだとしたら、どうしてクロード・モネは評価されているのだろう?

睡蓮シリーズは200枚を超えます。
「同じような」という言葉だけ取り出せば、人によっては「同じような睡蓮」と言えるかもしれない。

絵画の価格、価値ってすごく難しいと思います。
価値という言葉は特に難しいです。値段的な価値や文献的な価値など、さまざまあるので、都度定義づけが必要かもしれません。

「だって、モネだから高いものでしょう」ではなくて、その価値観がどうやって作られてきたのか? その価値観ってほんと?という疑問は常に持つといいかなと思いました。

画家の絵だけを見るのでなくて、画家自身の人生を見つめてみたら、一つのヒントになるかもしれません。

考えるきっかけになった、とても良い展覧会でした。
東京の会期は終了していますが、大阪・阿倍野のあべのハルカス美術館へ巡回しています。ぜひ。


山田五郎さん、とても勉強になりました。ありがとうございます。


おまけ〈東京と大阪のチラシの違い?〉


あと、最後に。

三菱一号館美術館とあべのハルカス美術館の展覧会チラシを見比べてみました。
メインビジュアルはもちろん同じなのですが、あべのハルカス美術館のチラシの方が気持ち派手に見えました。笑

「印象派★の系譜」と、がきらり、「光」の文字が強調されていて、大阪だからかな?といらぬことを考えてしまいました。
よろしければ、見比べてみてくださいね。

最後までご覧くださりありがとうございます。

雪が降りそうなほど冷える日もありましたね。皆さまご自愛くださいませ。次はどこに行こうかな。

最後までご覧いだたきありがとうございます! 今後の記事のため、美術館の入館費にしたいと思います。