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『博論日記』を読んだ元大学院生の感想
『博論日記』という、フランスの漫画を読みました。
2020年4月に花伝社から刊行。
「その研究、何の役に立つの」?
「で、まだ博論書いてるの」?
世界中の若手研究者たちから共感の嵐!
高学歴ワーキングプアまっしぐら⁉な文系院生が送る、笑って泣ける院生の日常を描いたバンド・デシネ。フランスでベストセラー! 英米、ドイツ、イタリア、スペイン、アラビア語圏、中国など各国で翻訳出版された話題図書!
何のサイトだったか忘れてしまったけど、この本の邦訳がでるよっていう紹介が載っていて、上記引用した本の紹介文の冒頭の言葉で、ぐっと心を掴まれ、即アマゾンでポチってしまった。
さて、私は何者かというと、
文系の大学院博士課程を満期退学をして、研究の世界から足を洗い、現在は民間の一般企業で働く一般人です。色々な葛藤があって、今に至ってるのですが、『博論日記』を手に取って、過去の院生時代の自分を再び呼び起こすことになりました。
舞台はフランスなので、日本の制度とは異なる部分も多いのですが、文系の院生をめぐる苦しみや辛さは同じなんだな、とリアルな描写がたくさん。
研究の沼に沈んで苦しむ日々、社会人としてステップアップしていく友人、結婚して幸せになっていく友人、離れていく恋人、親戚や家族には理解されない・・・etc
おそらく、20代を大学院で過ごしていた人ならもれなく共感の嵐なのではないかという内容満載です。主人公が院入学時の最初の希望に満ちたキラキラした姿がなんともいえない。
作者のティファンヌ リヴィエールさんはフランスで実際博論を書かれていたそうなので、実体験をもとにしたリアルな描写になっているんだなぁ。
巻末には、訳者の中條千晴さんの解説が掲載されていて、これもまた興味深い内容でした。フランスと日本の院生事情の違いや、ポスドク問題など、文系大学院生が直面する厳しい現実が記されています。
その中で少し触れられていた日本の女性文系研究者の自殺のニュースは、個人的にも当時ニュースで読んでいて大変ショックな出来事でした。
この頃は自分はもう研究の世界を脱していたのですが、自分の人生の選択の中にはこの道も当然あって。これからっていう方が自ら命を絶たれてしまったことに、どこか自分の分身のような苦しさを今でも感じています。訳者も書いていたけど、日本の方が社会的に院生の立場は厳しいのかもしれない。
なんだか暗い話になってしまったけど、今現役で頑張ってる人たちにちょっと読んでもらいたいなーなんて。どうしても孤独になるけどさ、同じような気持ちになれるものがあるとちょっと救われるような気がする。
そして、身近に院生がいる人にも是非読んでもらって、この世界の一端でもいいから、知ってもらえたらいいなと思う。
何よりも、これから大学院に進学する人たちや現役で頑張っている若手研究者が報われる世の中になっていきますように。切に願う元院生でございました。
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