実父に誘拐されかけた話

私は2歳の頃に両親が離婚している。
親権は母親だ。
親との折り合いもよくないので、特に離婚の理由は聞いていない。
しかし母は酔うと自ら話し出す。

「あんた誘拐されかけたんだよ」
「離婚した後、近くの団地からずっと家を見られていた」
「生活パターンがバレていた」

なんの話しかわからなかった。

「スーパーの前でよく焼き鳥屋さん来てたの覚えてる?
あそこであんたが団子(つくねのこと)食べたい!ってゴネるから繋いでた手を離してお財布を出していたの。
そしたらその瞬間2歳のあんたが担がれて逃げられた」

その担いで逃げた人が離婚したばかりの元旦那、つまり私の血の繋がった父だったらしい。

「慌てて誘拐です!って言ったらスーパー前にいた人みんなが追いかけてくれて。
結果坂道ですっ転んで呆気なく捕獲。買い物客の主婦がパトカー呼んでくれてたからあっという間に警察きたよ。
近くにいたタクシーの運転手さんが取り押さえてくれて。」
「そのとき私怪我なかったの?」
「無傷」

私は母親に暴力、暴言を日常的に受けていた。
誘拐しようとした実父は、自分が転ぶときに私をうまい具合に庇ったらしい。

日常的に暴力、暴言を振るう母親、
坂道で盛大に転んだ際になんとか怪我がないように私を庇った実父、
どちらが親として正しいのか、27年経った今でも私はわからない。

そんな実父も風のうわさによると再婚して子宝にも恵まれているらしい。私に固執しないで新しい人生を歩んでいる。
少し悲しみ・寂しい気持ちはあるので、わがままを言うと私がいたことを忘れないでいてほしいというのが本音だ。

一方母は母で17年ほど前に再婚している。
母は私に言いたいことがあると再婚相手を使うようになった。
母の再婚相手は距離感が未だに掴めないので、関わり方がわからない。それはきっと、向こうも同じことを思っている。
なのに、母は再婚相手を伝書鳩のように使う。
人生で一度だけ言いたいことを全て伝えたことがある。
それに対しての返事は
「どうせ私は毒親です。すみませんでした。」
やはり私は母を理解できない、再認識をした。

「なんだかんだ腹を痛めて産んだ子は可愛い」
そんな話をよく聞く。
しかしすべての家庭に当てはまらないことを、理解とまではいかなくとも、認識してもらえる世の中になると良いなと思う。

話が逸れたが、誘拐未遂を犯してまで私の親権が欲しかった実父、
世間体を気にして親権を手にした母、
前者の方がきっと私をしっかり子供として育たてくれたのではないかと、ふとした瞬間に考えてしまうことがある。

正直、実父には会いたい。
当時の心境、離婚の原因を知りたい。
新しい家庭があるから難しいのは知ってる。
だが知る権利はあるのではないかと思う。

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