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ゲルニカ/ピカソ (ソフィア王妃芸術センター)inマドリッド

昔働いていた職場に美術の先生をしていた人がいて、『本物のゲルニカを見たときブワーっと涙が出てきた』と話してくれた。だいぶ昔に日本のどこかの美術館でゲルニカのポストカードを手に入れたけど、こんなものはもう買えないかもしれないと思い、少しの間壁に飾ったら蓋付きの箱にしまった。普通のポストカードの1.5倍ぐらいの横幅がある変わったサイズだった。
そして私はゲルニカに会いに行く日を迎えた。他の作品は全く目に入らず、廊下を足速に通り過ぎてゲルニカのある部屋へたどり着いた。この絵が美術館から無くなることはないというのに、そわそわしながら早歩きしたので、ちょっと息苦しかったぐらいだ。
ソフィア王妃芸術センターはフラッシュ無しなら作品を撮影しても良いのだか、ゲルニカだけは禁止されているので、絵の両側に警備員のおじさんが立っていて来場者に注意していた。
待ちに待ったゲルニカの方へ少しずつ進む。ちょうどおじさんのほぼ向かいの場所で止まった。恥ずかしい気持ちはどこかに飛んでいき、やはり涙を流していた。想像していたよりもこの絵が大きかったことにびっくりしたし、この絵がマドリッドに運ばれるまでの道のりも知っていたから感情的になっていたこともある。でも決定的だったのはモノクロとは思えないほどの衝撃をこの絵から受けたことだ。こちらに刺さってきたとも言える。言葉に変換できない気持ちがどんどんあふれてくるので、泣くことしかできないのだ。
それから1年ぐらい後にゲルニカの街に行くことができた。小さな街なのにどの建物も新しくて想像と違ったけれど、破壊されたから再建されたのだと気づいてから、はしゃいで歩くことはできなかった。坂をのぼった所にゲルニカのレプリカが飾ってあった。もしここにゲルニカの本物があったらどうなっていたんだろう。たくさん議論されてきた問題に私も勝手に参加し、長い時間眺めていた。私だけじゃなくてグループで来ていた年配の方々も静かに眺めていた。

ゲルニカにある『ゲルニカ』
ソフィア王妃芸術センターの廊下