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短編小説『綾の果てまで』

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短編小説です。 陽が沈む間近の海辺を歩いてる感覚になる関係の男女。 引き寄せ合うことも離れることもない距離感で、一度だけ交わった。多分。それも錯覚かもしれない。 歳を重ねるご…
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2024年8月の記事一覧

短編小説『綾の果てまで』⑧

短編小説『綾の果てまで』⑧

彼がよく行く本屋さんに案内してもらう。
自動ドアが開いて足を踏み入れたら、本屋独特の少し埃が混ざっているような紙の匂いがした。

学生の頃から印刷物の匂いが好きだったから、本屋の匂いだけでもワクワクしてくる。

『とりあえず1時間くらい別行動しようか。1時間後にこの入口前集合ね。ここ2階もあるからすごく楽しめると思う』と彼と「またあとでね」と交わして一旦離れた。

彼にどの本を渡そうかと、スマート

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