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働く人のための心理療法①(企業の研修企画をTAで話してみる)

TAについて簡単なまとめから

こんにちは。ブリーフセラピストであり、組織セラピストの森川です。
「働く人のためのブリーフセラピー」の姉妹版として「働く人のための心理療法」も書いていきます。
この「働く人のための心理療法」は心理療法をできるだけ気楽に、色々な見方でみることができるように書いてみます。タイトルには①と付けましたが、あまり順番ということは考えずに書きますので、「最初に書いたよ」ぐらいのナンバリングだと思ってください。

さてそれでは一つ目

TAを皆さんご存知でしょうか。
企業向け研修ではよくTAの概念を使った内容を話すことが多いので、私も以前調べたことがあり、書籍を何冊か読んでいました。
先日青沼先生のもとで「TA101」という基礎を学ぶ講座に参加しました。その時に感じたり考えて「こんなことにTAって使えるかも」を言葉にしてみたいと思います。
的外れだったり、「そこまで拡大解釈しちゃダメだろう」などあるかもしれませんが、お気づきの点があれば教えてください。

TAとは何か
TAとはアメリカの精神分析医エリック・バーン(Eric Berne)博士が、1950年代に創案して人間行動のまとまった理論として活用されているものです。日本では交流分析と呼ばれています。
ここではTAそのものの内容を詳しく書くことはしませんので、詳しい内容が知りたい方は私は関係者ではありませんが、受講して良かったので、一般社団法人TA-shuharismにお問い合わせください。

理論をいくつか提示します。
自我状態:エゴグラムで有名ですが、これわたし(個人)の中で起きていることを理解するための理論です。P(親の自我状態・CP支配的親とNP養育的親)、A(成人)、C(AC適応した子ども・FC自由な子ども)の3つに分かれます。
やりとり分析:P・A・Cのやりとりの分析のこと。
・相補交流:刺激を出した自我状態が予想通りの反応がやりとりされるもの
・交差交流:最初に出した刺激に対して期待した以外の反応が返ってくるもの
・裏面交流:2つのメッセージが同時に伝達される交流で複雑なもの
他にもストローク・ゲーム分析・脚本分析などがあります。
今日はこの中の自我状態の理論を使って考えてみます。

会社の企画は基本的にはCPになる

企業が研修など人材育成を企画するとき、その動機は様々です。
何か問題となる事象があり、それを改善するために行うこともあれば、現場が困っているからその知識等を現場で教えていくのではなく、企業全体で教える場を作ろうなどがあります。なので動機としてはこうすべきというCP(支配的親)の場合もあれば、何らか救済したいというNP(養育的親)の場合もあります。
動機は様々なのですが、通常は何らかの新しい知識か技術を付与しようとすることや意識を変化してもらおうとします。なのでメッセージとしては「変化してほしい」となります。こういったコミュニケーションは受講する側にとってはCPとして映るのではないでしょうか。
こう書いてみると当たり前のことだなぁと思うのですが、実際に人事部の方や企画担当者や私たち研修を実施する側も、「相手のために」という動機があった場合にはついつい私たちのコミュニケーションがどういう意味を持っているのかを忘れてしまうように思います。
この企画はCPのコミュニケーションなんだ、ということを認識するだけでも企画の実行時により受講者が受け止めやすい企画を検討できるのではないかと思います。

受講生の予想される態度を考える

さて企画の動機、意図に関わらず企画側からのコミュニケーションはCPとなると書きましたが、CPのコミュニケーションは何かを良い、悪いとする自我状態です。通常はCPのコミュニケーションを取るとき、相手にAC(適応した子ども)の態度を期待します。例えば管理職向けに「部下のキャリア支援研修」を実施するとすると受講者である管理職には「確かにキャリア支援必要だな、こうすれば良いのか」と思って受講して欲しいですよね。
ただ実際にはいかがでしょうか。
「この研修って本当に今必要でしょうか」といった反応があったり、なんとか理由をつけて受講しないようにしたり、表面では受講しているし、適応しているように見えても本当はそうではなく「こんなのやりたくない!」とか「頭ではわかっても行動したいとは思えない」などと思っていることもあります。
これはCPのコミュニケーションだとACの反応があると「相補交流」となりコミュニケーションが継続していくのですが、「この研修って」といったようなCPに対してAの反応である「交差交流」や表面上はACだけど裏ではFC(自由な子ども)の「裏面交流」が行われるとコミュニケーションが止まったりおかしな方向に行ってしまうのです。

さていかがでしょうか。皆さんの企画に対して受講生や受益者となる人たちはどのような反応を示しがちでしょうか。

相補交流も悪循環になるよね

今回相補交流があると良いというような文脈で上記文章を書いていますが、一方相補交流自体が悪循環になることもあります。
ここはブリーフセラピーの考えで書きますが、もしかするとTAでも触れているかもしれません。お恥ずかしいのですが、不勉強で把握できていませんので、ブリーフセラピーで書いていきます。
さて企業が企画するということはコミュニケーションではCPとなります。そしてコミュニケーションが続いていくこととして相手がACの反応であると書きました。
このACの反応は企画者側からするとありがたかったりするわけですが、本当にそれがいいとは限りません。
例えばビジネスの考え方を「こうあるべき」とインプットをしていき、それを若手社員がなんの疑問もなく「確かにそうだ」と受け取る反応であるとします。これは研修は滞りなく終わるかもしれませんが、従順な受け身な受講生を作り出してしまっており、多様な発想や主体的な行動を阻害していることもあり得ます。
反応がスムーズかどうかだけをみると悪循環に気づけないのです。
裏面交流はともかく、交差交流は実は歓迎すべき反応だったりもするのではないかと思います。

どうすると良いのかのアイデアを出してみる

さて、ここまで企業側、企画側と受講者側、受益者側とのコミュニケーションについて考えてきました。ここでいくつかアイデアを書いています。
①受講者・受益者側をCPにし、企業・企画者側をACとして対応する
例えば、社員の声を聴く会を催したり意見を募ったりして「もっと会社はこういう施策をうってほしい、研修をやってほしい」といった声を集め、それに答える形で研修を実施します、といった形を作る。こうやって発信側を逆転させることで相補交流ができるようにする。

②CPではなくNPの意味づけを行う
これは企画そのものよりも企画内容を伝達する際の工夫になりますが、「〜すべき」ではなく「あなたの状況をよくしたいんです」といった文脈の伝達を行っていく。そうすることでFCの受講者・受益者が受け取りやすい表現にする。

①相手の反応に合わせた反応を返す
これは研修講師は皆さんやっているのではないかと思いますが、Aの反応で「この研修は今必要ですか?」などがあれば「なぜ必要かと言うと・・・」といったAの反応を返す。また「わかるけど現場だと難しいよ」というFCの反応には「ですよねー。難しいですよね。そこで」といったNPの反応を返していくようにする

いかがでしょうか。
アイデアを出してみましたが、どれも皆さん企業側、企画者側はやったことがある、見たことあるやり方だと思います。よく使う工夫をTAで説明してみました。

気楽に心理療法の使い方をしてみよう

いやー、この文章を書くのは実は勇気が入りました。
ちょっと想像するだけでも・・・
TAの理論の解釈のここが間違っている
こんな大雑把な解釈をするんじゃない
心理学、心理療法の冒涜だ!
などなど・・・

ここから書くことも批判があるかもしれないのですが、私は心理学とか心理療法を厳密に使うだけが使い方ではないと思っています。
カウンセラーがクライアントに接する場面では理論や技法の正しい理解がとっても大事で、それがクライアントにとって安全でかつ解決に結びやすくなります。理論や技法への誤解や無理解がクライアントにとって悪いアプローチになってしまう可能性をはらんでいます。私はブリーフセラピーを教える立場でもありますので、そういったクライアントへの悪影響を持つ可能性のあることを何度も繰り返しお伝えしています。
カウンセラーの場合は対象が「問題を抱えている人」で深刻な緊急性のある問題を抱えている場合も多くあります。
そういった場合では今回のような拡大解釈や当て嵌めは危険です。
一方企業で「成果を出すため」といった時にはそこまで厳密に考えなくて良いのではないかと思っています。
企業で行う企画やマネジメントの中では「こうなんじゃないか」と見立てを立てて、行動して結果と照らし合わせて修正しての繰り返しを行います。また基本的には対象者は健常者です。この場合では少々大雑把でも見立てを立てるための軸づくりが重要となるのです。
その軸づくりのために今回紹介したTAやブリーフセラピー、認知行動療法などは使っていけるのではないでしょうか。

上記のような考えを持っているので、心理学や心理療法を働く人に伝えて、それを軸としながら各種判断をしやすくなると良いのではないかと思っています。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
少しでも興味を持っていただけるとうれしいです。
私は上記の考えを研修という形にした「組織セラピスト養成講座」を開いていますので、興味がありましたらお声がけいただけるとうれしいです。
それではまた次回よろしくお願いします。


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