水木なぎ

言葉にしないと消えてしまうものを。 心にすっと沁み込むものが書けたら。 音楽みたいに。

水木なぎ

言葉にしないと消えてしまうものを。 心にすっと沁み込むものが書けたら。 音楽みたいに。

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固定された記事

世界を

世界を 見失うくらいに 君が好き

水木なぎ
6か月前
30

Silent Voice

静かな満員電車に 次の駅を告げるアナウンスだけが 響き渡る 物音を立てられず 揺られるだけの夜行バス 声を上げる届ける 音もなく地面に着地する葉っぱではなく 岩にぶ…

水木なぎ
11時間前
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原則

心はいつも 寒いと言ってる 行く先々で 凍えないよう 宿を見つける 心の 例にもれず 着るものを求める 片割れだという 一晩中 話を聞いてくれる 友を求めて 友のための…

水木なぎ
7日前
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君に出会えたのは

君に出会えたのは 一冊の本を読むためだった

水木なぎ
2週間前
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水粒のカーテン

手紙を開く前と後で 世界にくっきり線が引かれる 呼吸を整え 封を開く 窓を開けたら 4月には不似合いの 冷気が頬に心地いい さあ、ここから 幕が開くのは あなたを守っ…

水木なぎ
3週間前
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【朗読】 詩誌『凪』5号 「腕」

00:00 | 00:00

詩誌『凪』 5号 「腕」を朗読しました。

水木なぎ
1か月前
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三月

3月28日に地元を離れた 会えなくなる、なんて実感がないから 涙は出なかった さびしいも、さびしくないも 違った 一人になって 音のない部屋が 新しい生活の始まりだった …

水木なぎ
1か月前
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光合成

ベッドに貼りついた体をはがして 今日の自分を始める 天気予報はくもりなのに 雨が降っていて 世界はどんよりしてる 新緑はどんよりを食べて 酸素をたくさん吐き出す 春…

水木なぎ
1か月前
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きみに聞こえる

きみがいる うれしいことに きみがいる きみがいる しあわせなことに きみがいる きみがいる 口からこぼれた きみがいる 君がいる 初めて口にした きみがいる

水木なぎ
1か月前
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求めるもの

たくさん実がなるマンゴーの木を探して どこにあるか聞いてみる あっちにあるよ 見つけたものは思ったより少なかった マンゴーの木を見たくて あてもなく歩く どこにある…

水木なぎ
1か月前
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光射す

暗がりにいるから 光が射すのがわかる それは 太陽の下よりもあたたかい

水木なぎ
2か月前
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心をなでる

つま先がすり減ってるのを気にしてる 靴修理のムッシュが 「誰もそんなとこ見ないよ」 っておどけて言う 自分で自分の機嫌は取れるけど 自分では自分を癒せない 誰の心に…

水木なぎ
2か月前
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夜の忘れもの

忘れられた街灯のひかりは そこだけ暖炉の色で 夜から朝への置き手紙 帰りの電車の中の 何気ない会話 道路脇のポスター 見つけたいものは 目的地じゃなく 途中でよく見つ…

水木なぎ
2か月前
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根もと

心根は 目尻と口のはじにある やさしさは 強さと弱さの中にある さびしさは 夜と海の淵にある 清らかさは おはようとおやすみの前にある 精神は 言葉と声に宿ってる …

水木なぎ
2か月前
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惜しみない時間

脳内で君に相談して 行先を決めて 君の好きな本を読んで 感想を心で言って いくつもの一瞬を惜しんで 守った時間で 豊かな土地を手に入れた 今までに 自分のセリフ以外…

水木なぎ
3か月前
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流れ

背もたれのないイスには 長くすわっていられない 毎日 同じ壁を見てると 毎日 同じことを考える 歩道橋の下では 毎日 同じ方向に 同じスピードで車が流れてる 背中の血…

水木なぎ
3か月前
17
世界を

世界を

世界を
見失うくらいに
君が好き

Silent Voice

Silent Voice

静かな満員電車に
次の駅を告げるアナウンスだけが
響き渡る

物音を立てられず
揺られるだけの夜行バス

声を上げる届ける
音もなく地面に着地する葉っぱではなく
岩にぶつかり音を立てる波

貝に波音を詰める
聞こえるように
ちゃんと届くように
ひとりだけに
届くように

原則

原則

心はいつも
寒いと言ってる

行く先々で
凍えないよう
宿を見つける

心の 例にもれず
着るものを求める

片割れだという
一晩中 話を聞いてくれる
友を求めて

友のための絆創膏を
いつでも持ってる

君に出会えたのは

君に出会えたのは

君に出会えたのは
一冊の本を読むためだった

水粒のカーテン

水粒のカーテン

手紙を開く前と後で
世界にくっきり線が引かれる

呼吸を整え
封を開く

窓を開けたら
4月には不似合いの
冷気が頬に心地いい

さあ、ここから
幕が開くのは
あなたを守った世界だよ

00:00 | 00:00

詩誌『凪』 5号 「腕」を朗読しました。

三月

三月

3月28日に地元を離れた
会えなくなる、なんて実感がないから
涙は出なかった
さびしいも、さびしくないも
違った

一人になって
音のない部屋が
新しい生活の始まりだった
イヤフォンで音楽を聴くと
小さな部屋が迫ってくる

卒業の曲を今聴いたら
あの頃出なかった
涙がにじんだ

光合成

光合成

ベッドに貼りついた体をはがして
今日の自分を始める

天気予報はくもりなのに
雨が降っていて
世界はどんよりしてる

新緑はどんよりを食べて
酸素をたくさん吐き出す
春はだから いつもより
空気がきれい

今夜もまた
眠りにつく
たくさん酸素を吐き出せるように

きみに聞こえる

きみに聞こえる

きみがいる
うれしいことに
きみがいる

きみがいる
しあわせなことに
きみがいる

きみがいる
口からこぼれた
きみがいる

君がいる
初めて口にした

きみがいる

求めるもの

求めるもの

たくさん実がなるマンゴーの木を探して
どこにあるか聞いてみる
あっちにあるよ
見つけたものは思ったより少なかった

マンゴーの木を見たくて
あてもなく歩く
どこにあるか聞いてみる
あっちにあるよ
思った以上にたくさんの実

マンゴーをあげる
教えてもらえて うれしくて

光射す

光射す

暗がりにいるから
光が射すのがわかる
それは 太陽の下よりもあたたかい

心をなでる

心をなでる

つま先がすり減ってるのを気にしてる
靴修理のムッシュが
「誰もそんなとこ見ないよ」
っておどけて言う

自分で自分の機嫌は取れるけど
自分では自分を癒せない

誰の心にも
つま先で降り立って
頭をなでていく
たんぽぽの綿毛の精が要る

夜の忘れもの

夜の忘れもの

忘れられた街灯のひかりは
そこだけ暖炉の色で
夜から朝への置き手紙

帰りの電車の中の
何気ない会話
道路脇のポスター

見つけたいものは
目的地じゃなく
途中でよく見つかる

一晩中あたためていたメッセージを
置いておくね
後でゆっくり読んでね

根もと

根もと

心根は
目尻と口のはじにある

やさしさは
強さと弱さの中にある

さびしさは
夜と海の淵にある

清らかさは
おはようとおやすみの前にある

精神は
言葉と声に宿ってる

人の根も 見えてるんだね ヒヤシンス

惜しみない時間

惜しみない時間

脳内で君に相談して
行先を決めて

君の好きな本を読んで
感想を心で言って

いくつもの一瞬を惜しんで
守った時間で
豊かな土地を手に入れた

今までに
自分のセリフ以外に
場面が一変したことはあったかな

惜しんじゃいけないことを
惜しんで
にんじんは細く 長くなった

流れ

流れ

背もたれのないイスには
長くすわっていられない

毎日 同じ壁を見てると
毎日 同じことを考える

歩道橋の下では
毎日 同じ方向に
同じスピードで車が流れてる

背中の血が
背もたれに邪魔されず
不規則に流れたがってる