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化学科に入った僕らは物理を学んでいた。【大学化学】

桜の舞う季節。僕らは化学科になった。
高校で学んだ元素やベンゼンの動きに惹かれ、大学で深く学びたいと思っていた。
そんな初々しい僕らを大学で優しく迎え入れてくれたのは…

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時間に依存しないシュレーディンガー方程式だった。

化学と物理

さて、多くの大学の化学科には物理化学、またはそれに該当するような講義があります。教科書に並んでいる数式、数式アンド数式に、一瞬「はて私は入学する学科を間違えてしまったかね」と思いますが、これはれっきとした化学です。

「波を表す関数を偏微分するなんて化学の要素ねえじゃん笑」
いいえ化学です。

よく大学では「化学が物理に、物理が数学に、数学が哲学」にと言われることがあります。化学と物理の境目がなくなる、というよりかは私は生物、化学、物理、数学の境界は意外と薄いのではと感じます。特に化学と物理というのは切っても切れない関係なのです。今回はなぜ化学を学ぶには物理を学ばなければいけないのかを考えてみたいと思います。

化学と熱力学

熱力学とはその名の通り熱を学ぶ学問です。
熱とは大雑把にはエネルギーのやり取りのこと。

化学を学ぶにおいて熱力学を学ぶということはずばり反応を学ぶことだと思います。化学反応や物理変化にはエネルギーの移動が生じます。この移動の仕方を学ぶ事によって反応を解き明かすのです。

例えば『アトキンス 物理化学』では量子論より先に熱力学が書かれています。ここからも熱力学の重要性を予想できると思います。

ただしここで私は化学を学んでいる人が学ぶ熱力学と物理を学んでいる人が学ぶ熱力学に若干相違があるように感じます。上記にとおり化学を中心に熱力学を学ぶと反応を紐解くための道具として学んでいるように感じます。一方、物理として学ぶと熱そのものを学んでいるように感じます。このときの道具は数学です。

つまり同じ熱力学でも化学徒と物理徒では見えているものが違うということです。細かい話をすると、これは私の予想ですが化学熱力学の教科書ではギブズエネルギー(化学ポテンシャル)、熱力学の教科書ではエントロピーが重視されている気がします。

化学と量子力学

冒頭のシュレーディンガー方程式をはじめとする、現代物理学において相対性理論と二大巨頭を置く量子力学。毎年多くの理系大学生を深淵へと落としていきます。

化学を学ぶにおいて量子力学を学ぶということはずばり電子を学ぶ事だと思います。そもそも極端な話、化学自体が電子を学ぶ学問として定義されてもおかしくない。有機化学も無機化学も電子に左右された学問です。
となると電子そのものを学ぶ必要があるでしょうという。

さっきの熱力学と比べるとこの量子力学に関しては化学徒と物理徒ではそんなに相違はないように思います。とはいえ化学徒が相変わらず道具として扱っていることに関しては否めませんが。

この分野。理系が惹かれる要素があるのか、本とかyoutubeの解説動画とかも多いです。あまり詳しくは言いませんが不確定性原理とか謎にワクワクしますよね。

ちなみに量子力学を深く学ぶためには解析や線形代数の知識は前提とされます。数弱だけど化学科に行きたい高校生は頑張って…。

化学と相対性理論

さて量子力学とともに現代物理学の双璧をなすのが相対性理論。
E=mc^2という式は質量とエネルギーが等価であるという化学でも物理でも大前提となっております。

しかし化学徒が相対性理論に触れる機会ってあんまりないように思えます。
というのも量子力学のように化学は比較的微視的なものを扱うことが多い、しかし相対性理論で説明される事象はブラックホールや重力といった比較的でかいものが多い。

だけども相対性理論ではが扱われているわけです。化学と光の関係は分析化学を見たらわかるように無視できるものではないと思います。よく金が金色である理由の説明に相対論が使われます。この化学の目線で相対性理論を学ぶことはできないかというのは個人的に学部生であるうちに突き詰めたい大きな命題です。

化学と電磁気学

最後にやっぱ電磁気学は無視できないでしょう。

クーロン力もファンデルワールス力もその行きつく先は電磁気学です。
古典力学と並ぶ物理の大前提。ただこの分野について広めていくと工学的な要素が強くなります。

結論:もう物理と化学分けなくていいのでは?

極論ですが物理と化学の境目は無くなります。特に大学では。
高校の時に生物、化学選択だったという人はまあまあ苦労します。(ただ化学分野に行く人が皆、物理&化学選択というのも考え物で生物や地学の見識がある人も必要だとは思います)

よって記事のタイトル、『化学科に入った僕らは物理を学んでいた』というのは修正しましょう。

『化学科に入った僕らは化学を学んでいた』

ありがとうございました。

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