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牛乳をすべて使いきる!ことができたらどれだけいいだろう

こんにちは、CHEESE STAND noteの編集担当の江六前です!

突然ですが、CHEESE STANDの商品の一つ「リコッタ」は、じつはモッツァレラやブッラータの「副産物」だったことを知ってますか?

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チーズ職人の「もったいない精神」が生んだリコッタ

リコッタは、「ホエイ」と呼ばれる液体に含まれるタンパク質や乳脂肪分を凝固させて作ったものです。では、このホエイとはどうやってできるものでしょうか?

モッツァレラやブッラータは、牛乳にレンネット(酵素)を添加することで、牛乳に含まれるタンパク質や乳脂肪分などが凝固したカード(凝固体)を作ったものを、熱を加えながら練り上げます。その際に、下の写真のように残った黄色っぽい液体成分がホエイです。乳清とも呼ばれます。

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冷蔵庫に入れておいたヨーグルトから上澄みの水分が出ることがありますよね? あれもホエイです。

このホエイにはホエイタンパクと呼ばれる成分が残っています。これを再度抽出したものがリコッタになります。

もう少し詳しく説明すると、ホエイを80℃程度に加熱すると、小さな白い粒が浮いてきて熱凝固が始まります。そこに酸凝固を促す前日のホエイを投入すると、ホエイタンパクが凝固するのです。熱の加え方、酸凝固をスタートするタイミングも重要で、CHEESE STANDのほわほわした独特の食感と、しっかり感じる甘さは、この2つのポイントによって生まれます。

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リコッタは、古代ローマ時代には生まれたといわれています。その歴史を辿るとイタリアでは比較的に豊かとは言い難い南イタリアで多く作られていました。モッツァレラを作って出たホエイをもう一度食べられるように工夫したわけです。

ちなみにリコッタは、ホエイ1㎏に対しわずか50ℊ程度しかとれません。ほとんど何も残っていないといえるホエイからでもなんとかリコッタを作ろうとしたのは、チーズ職人たちが大切な乳をすべて使いきろうと考えて、知恵を絞ったからだと思います。

捨てるしかないホエイ、どうにかできないの?

CHEESE STANDでは毎日400㎏の牛乳を使います。そして毎日350㎏ほどのホエイを廃棄しています。もちろんモッツァレラやブッラータを作り、さらにリコッタを作り終えたホエイですので、現状ではこれ以上使い道がなくなったホエイです。

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しかし、リコッタをとってもまだこのホエイには、まだ糖分や栄養価が含まれています。やっぱり「もったいない」「何か再利用できないか」と考えてしまいます。

たとえばSHIBUYA CHEESE STANDでは、モッツァレラやブッラータから出たホエイ(リコッタをとる前)を季節のフルーツやリキュールで割って「ホエイドリンク」(税込360円)を販売しています。

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さっぱりとした乳酸菌飲料のような味わいで、ホエイには水溶性タンパク質が豊富なので、栄養価が高いのが特徴。ドリンクにすることで、ホエイの廃棄を少しでも減らすことができます。

また、昭和8年創業、86年の歴史をもつ高円寺の老舗銭湯でありながら、スペインワインを投入した「スペイン風呂」や、長野県富士見町の石鹸ブランド「HOUR」さんの原料で使っているハチミツを入れた「はちみつ風呂」など斬新な企画で楽しませてくれる「小杉湯」さんでも、20ℓのホエイを使ったお風呂を限定で楽しめる「CHEESE STANDの湯」を企画してもらいました。

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ホエイ風呂は、保湿効果があるようで、湯上りの肌がしっとり。さらに番台前ではモッツァレラとリコッタも販売してくださいました。

海外ではホエイをエネルギーとして再利用する例も

こういった「ホエイの再利用」を進めてはいるのですが、それでもまだ大量に廃棄しなければいけない状況は変わりません。大企業では、ホエイをパウダーにして販売したり、ホエイ石鹸や畜産飼料として再利用したり(ホエイを食べた「ホエイ豚」など聞くこともありますよね?)していますが、小規模製造業のCHEESE STANDでは設備投資を含めてなかなか実現できずにいるのが現状です。

CHEESE STANDのチーズ職人で代表の藤川真至が、2020年1月にイタリア研修に行った際に、中小規模のチーズ工房では、製造で出たホエイを一カ所に集めて処理してバイオエネルギーとして再利用しているという話を聞いたといいます。

実際にイギリスでは、「Wensleydale Creamery」という会社が、ホエイを「Anaerobic digestion」(嫌気性消化)という方法で処理することでバイオガスを生産しているそうです(2019年6月の記事)。ホエイ産のバイオガスを発電に利用することで、約1万メガワット以上の電力(800世帯分の暖房エネルギーに相当)を作り出せるそうで、実際にチーズ工場と発電施設が契約を結んだことが発表されています。

ちなみに、バイオガス処理の際に出たものを隣接する農地に添加すると、土の品質が向上にもつながるそう。こうした、循環経済の実現とCO2排出量の削減のエコサイクルのなかにチーズ製造が組み込まれるのはとても画期的なことのように思います。

日本ではまだまだ中小規模チーズ製造業者が少ないので、乳製品大国のイタリアやイギリスといったヨーロッパの国々のようになるには何年もかかりそうですが、製造側も食べる側もそういった事実に目を向けてもらえれば、実現する期間を短くすることも可能かもしれません。

SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)に対して、すこしでもゴールに向かう力になる取り組みをすることが、これからの企業に求められることではないでしょうか。CHEESE STANDは小さな企業ではありますが、すこしでも力になれたらと思っています。

ホエイのこんな使い方」どうでしょう?というアイディアがあったら、ぜひお寄せください!

※ホエイの食品としての販売は、牛乳などを販売するのに必要な「乳処理製造業」の許可が必要です。残念ながらCHEESE STANDでは、牛乳などを加工製造して販売する「乳製品製造業」しかないため、残念ながら食品用で販売することはできません。

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text by Ichiro Erokumae

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