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初めてエアギター大会を観てびっくらたまげた話

おはようございます、チェ・ブンブンです。

昨日は、大学時代の先輩であるホーリー(@ho_ri_yu )がエアギター選手権に出場するということだったので、応援に行きました。彼は法政大学北欧研究会時代に、学祭でエアギター大会をした時から、エアギターの魅力に惹き込まれいつの間にかガチ勢になっていました。昨年、予選ビリという辛酸を味わっただけに今年は本気を出すと気合いを入れていました。

エアギターって?

エアギターとは、そもそも何なんでしょうか?

まあ、その名の通りホンモノの楽器は使わず、目に見えないギターを弾き鳴らすものです。楽器をやっている人が聞くと馬鹿らしいと思うかもしれませんが、毎年フィンランドのオウルで世界大会が開かれるほど熱量のある文化となっています。

日本では「日本エアギター協会」たる組織が存在し、WebサイトやSNSでエアギター情報を発信しています。公式サイトによると日本から世界大会へ出場した方は多く、お笑い芸人ダイノジ大地も2度に渡り栄冠を勝ち取っているのです。また、今回の大会で審査員を務める2014年世界チャンピオンの名倉七海(@__SevenSeas)は17.8/18.0点という満点に近いスコアをオウルの街に叩きつけています。

エアギター世界大会出場者年表


2005年…金剛地武志(世界4位)
2006年…ダイノジ大地(世界優勝)、金剛地武志(世界4位)、かながわIQ(世界16位)
2007年…ダイノジ大地(世界優勝)、市川ザロック(世界5位)
2008年…市川ザロック(世界4位)、ダイノジ大地(世界6位)、かながわIQ(世界15位)
2009年…May(世界11位)
2010年…スナニー(世界9位)
2012年…チョコバット(世界6位)
2013年…いのがみこうしょう(世界6位)
2014年…名倉七海(世界優勝)、ケイスケ・ザ・ニンジャ(世界4位)
2015年…じゅんじゅん(世界6位)
2016年…TAM(世界7位)
2017年…門田亭笑勝(世界3位)

エアギターのルール

さて、そんなエアギターですが、世界大会が存在するということなので、しっかりとルールがあります。闇雲に目に見えぬギターを弾き鳴らすのが《エアギター》って訳ではありません。ここで、「日本エアギター協会」がまとめている公式ルールを紹介しよう。

1 AIRの名前どおり、楽器は目に見えないものに限定される。
2 プレイヤーはエレキ、アコースティックのどちらか、またはその両方を使用できる。
3 決勝進出するためには予選通過が必要である。
4 大会優勝者は無条件で次の大会に参加できる。
5 決勝では2回のパフォーマンスが行われる。
 その壱・・ 自分で60秒にまとめた音を使ったフリー・パフォーマンス。
 その弐・・ 大会側が用意した60秒の音を使った規定パフォーマンス。
6 個人的に目に見えない限りローディ(助手)の参加は許されているが、グループ演奏は一切許されない。
7 審判は大会主催者の会議によって選ばれる。
 [採点基準]
  ▽ オリジナリティ
  ▽ リズム感
  ▽ カリスマ性
  ▽ テクニック
  ▽ 芸術性とエアーな感じ
 [得点形式]
 フィギュア・スケートに準じ4.0〜6.0のスケールで採点される。 
8 参加条件 ・ この大会はすべての人に開かれている。
 ・ 公認団体のある国と地域の居住者は、
  その団体の開催する大会を勝ち抜かなければならない。
  なお、参加者は自らの責任を持って参加しなければならない。
9 優勝者賞金:本物のエレキギター
10 チャンピオンの義務:チャンピオンはエアギターの
  楽しいヴァイブスを全面的にアピールしていく義務を持つ

プロ/アマの垣根を超えた胸熱バトル!

ブンブン、ライブハウスはほとんど行ったことがありません。唯一、高校卒業前に友人のライブを観に行ったくらいで、基本的に「怖そう」「敷居が高い」を理由に近づかない男です。こういった敷居の高さって、強い内輪感だったり、プライドが高い人が多そうでマウント取られそうとかそういったネガティブなイメージから来る。正直、入るまではとても怖かったです。場所も新宿LOFTと有名なライブ会場らしいのですが、歌舞伎町にあるだけに戦々恐々もいいところです。

それがですねぇ...これがとてもアットホームな空間だったのです。

本大会は、新参者、単純にエアギターを楽しむ者からガチでフィンランドへ行こうとする者まで、入り乱れて行う大会。決して、新参者を頭ごなしに罵る訳ではない。審査員も、必ず演者のパフォーマンス後に講評するのだが、相手に合わせた評価を施す。新参者に対してはとにかく、良いところを褒め、その上で伸ばすべきポイントを指南する。一方、エアギター歴10年の巌汰・G・くらっしゃー(@GxGxCx_X_GsEdge )のパフォーマンスに対しては、「くらっしゃーさんの今のスタイルは完成系なんだ。もう伸び代がないと思うんだ。別の何かを見つけない限り、世界は狙えない」と厳しい言葉が飛ぶ。エアギター素人のブンブンからすると、他のエアギタリストが、己の恥ずかしさを克服できず照れが見えてしまっている中、圧倒的に自分を曝け出し、カリスマ性を見せつけていた彼に対しては「世界レベル」と天秤にかけた評価を下していたのです。審査員と彼との間に流れる、エアギター愛による対話は、熱いものを感じます。

そしてホーリーの知人ということで、大会後にエアギタリストさんたちとお話する機会を頂いたのですが、皆謙虚で、マウントを取る訳でもなく、純粋にエアギターや音楽の面白さについて熱く語っていて本当に感動しました。

では、ここでブンブンが本大会で印象に残ったエアギタリストを紹介するとしよう。

1.ソウイチロック

会場にいる誰もが唖然とした。9歳の少年がステージに上がったのだ。彼がステージに上がった時、会場は何かを感じた。目の前にいる少年から殺気という名のオーラが出ていたのだ。まるでヒソカの念により動けなくなったゴンのような気持ちを抱いた。こいつはヤバイぞと。

斜に構え、「エアギターなんかチョロいっすよ」と言わんばかりのへの字の口元。そして、前振りが始まる。ブンブンは、一瞬、彼は見せかけだけかと落胆した。というのも、ただ暴れているだけだし、放送事故か、音が出ていなかったのだから。しかし、それは罠であることに気づいてしまった。彼はまだ、音楽を流す合図をしていないのです。と気づいた刹那を彼は切り裂く。

スッと指をあげると、MCは布袋寅泰の「RUSSIAN ROULETTE」をやるといっていたのに、いきなりLIVE AIDのエーオーコールをやり始めるのです。ただ、エーオーをやるだけの勝つためのエアギターは流石にあざと過ぎて高評価は出ないことでしょう。審査員も絶賛していたことなのですが、ソウイチロックは決してコール中も目に見えぬギターを抱えていたのです。芸が細かい!

そして会場を一気に盛り上げた上で「RUSSIAN ROULETTE」をぶちかます。革靴の滑りまで活かした颯爽とした指さばき。他のエアギタリストが、過去や自分のコンプレックスに打ち勝つのに必死で、顔や手に躊躇いが出ているのを「あんたら、何ビビっているんだ?」と言わんばかりの豪傑さで押し切る。無論、ギターは音と合っていなかったりするのですが、その会場にいる人は全員こう思ったのです。「彼は大物になる。彼をフィンランドに送りたい!」。

パフォーマンス後のインタビューでは、多くのエアギタリストが60秒全力投球し過ぎて息が上がっているのに、全く疲れているそぶりを見せず。「エアギター簡単だった」と語る。この彼から滲み出るギラリとした目線は、親の入れ知恵ではない。彼は本当にエアギターが好きで、ナルシストで素晴らしいアーティストだと思いました。

ナルシストというとネガティブなイメージが強いのですが、やはりアーティスト足るものナルシストでなければならぬ。自己陶酔を如何に面白く観客に提示するのかが大事だと9歳の少年に教えられました。

これは本当に将来スッキリで加藤浩次が興奮しながら紹介する未来しか見えない期待の新人といえます。結果は疑いようもなく1位通過でした。

2.門田亭笑勝(@airshowshow)

2017年世界大会でお相撲×エアギター×ウルトラソウルという素晴らしいパフォーマンスで3位に輝いた高校生エアギタリスト門田亭笑勝が今回、体重を20kg絞って出場しました。彼もソウイチロック同様小学生からエアギターにのめり込んだ方。エアギターと向き合いに向き合った彼のパフォーマンスは、ギターをかき鳴らす前から始まっていた!

ブンブンは、本大会が始まる前までは彼のことは知りませんでした。それだけに、詰襟学ランで登場した彼に小者のオーラしか感じませんでした。これがパフォーマンスとして非常に素晴らしい。エアギターというのは、元来ギターを弾けない人が楽しむものだ。ギターを弾けないコンプレックスから派生し、如何に《コンプレックス》からの覚醒を演出できるのかも魅せ場である。実際に、世界チャンピオンになった名倉七海は薄幸なシンデレラが覚醒して1分間で、カリスマヒロインに昇華するまでの過程を完璧に演出したからこそ優勝できたと思う。単にコスプレ文化日本を強調しただけじゃあそこまでの好成績は出せないのです。1分間でドラマを演出することが大事なのです。

閑話休題、今回の門田亭笑勝は詰襟の学ランという《窮屈》というイメージから、裸になり筋肉、筋肉、筋肉を魅せつける。まるで『マジック・マイク』を観ているような高揚感に包まれました。もちろん門田亭笑勝を知っている人が観ると、彼の鍛錬の歴史がそこに見えてさらに胸がアツアツになる。やはり世界に行った人のパフォーマンスは次元が違いました。

3.エアネスサイゴウ

最初、ブンブンは耳を疑いました。MCがこう言うのです。

「曲名は、菅官房長官で《令和》です。」

ゴールデンボンバーが《令和》という曲をリリースしたのは分かるが、菅官房長官は《令和》を発表した人でしょう。

すると、あの令和発表演説が始まるのです。そして、エアネスサイゴウが菅官房長官になりきって《令和》を発表すると、エリック・クラプトンの『いとしのレイラ(Layla)』が流れる。確かに、パフォーマンスミスで、《令和》ボードの裏に《半裸》というネタが貼られているのがバレバレで審査員にも指摘されていたが、個人的に《令和》と《レイラ》を掛け合わせる面白さ。そして一発芸としての面白さに満ち溢れたパフォーマンスで好きでした。

4.シャリテン Kd(@sharitenkd)

去年の法政大学北欧研究会のエアギターレクチャーに講師として来ていたイケメンエアギタリストのShariten Kdは、超絶技巧のパフォーマンスを魅せてくれました。彼はQueenの『愛にすべてを(Somebody To Love)』を選曲。『愛にすべてを(Somebody To Love)』って、ゆったりとした音楽なので到底1分で魅せるのは難しいと思っていたのですが、本局のSomebody To Love~と叫ぶところを細切れにして、ヘビメタ超絶技巧と対比させるメリハリと本局の引き伸ばされたカタルシスを活かした演出はとてつもなく面白かったです。エアギターの曲編集の面白さに特化したパフォーマンスであり、ヒップホップにおけるサンプリングの妙を伺える演出に痺れました。

5.ジャスミン@ベリー(@jasmine5626)

今回初出場とのことである、如何にもバーフバリ好きそうなエアギタリスト・ジャスミンはベリーダンサーの世界では賞を受賞している凄腕だそうです。ベリーダンサーとしてのエンタメ根性がここに凝縮されていました。

インド映画さながらの民族衣装で登場し、コールも声が小さいと煽ってきます。

ジャスミン  Are you ready?
観客     Yeah...
ジャスミン  Non, non... ARE YOU READY?
観客                 YEAH!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

と行った感じで煽ってくるのです。そこからは完全に彼女の豪快なパフォーマンスに釘付けです。ロングヘアーをギターに見立てた演出。そして頭に刀を乗っけて回転するあっと驚く場面もあるのです。

6.祝繁義(@shigeyoshi_iwai)

なんと、吉幾三の『おら東京さ行くだ』までもがエアギターの曲に選ばれるとはビックリしました。本大会3位通過した祝繁義は、農業衣装、ヨボヨボの体から、1分間でカリスマエアギタリストに豹変するまでの早着替えのプロセスの面白さを120%引き出した演出です。

カリスマ性0%のところから、着替えることによりオーラをビンビンにさせていく。一点特化の強さに満ち溢れたパフォーマンスでした。

7.うえし(@wanwanbowwow)

本業はマジシャンと語る新参者うえしは、マジック×エアギターのマリアージュを試みたユニークなパフォーマンスを魅せていました。ギターを弾きながら、無限に手から生えてくるトランプカードは怪盗キッドもビックリです。初出場ながらの照れこそあったものの、《驚き》のベクトルが同じであるマジックとエアギターの親和性は高いなと感じました。

8.ホーリー(@ho_ri_yu )

ブンブンの先輩であるホーリーのパフォーマンスについて言及しないといけません。北欧研究会時代でのパフォーマンスは、正直出オチでやっている感じが強く、全体的に照れがキツいパフォーマンスでした。そんな彼が去年味わった青春の蹉跌を力にパワーアップして帰って来た!!

セプテンバーミーの『キツネ憑きの唄』を選曲。狐格好で登場する。そして弾き始めるのですが、そこには恥じらいの「は」の字もありませんでした。ダイナミック、豪快にINVISIBLE(=目に見えない)なギターを激しくかき鳴らし、狐のお面を天に打ち上げる。ホーリーの軌跡を知っている者として成長が骨の髄にまでビンビン伝わってくる演出でした。

もちろん、手つきに迷いはあれども、今後も技術鍛錬してフィンランドの地を踏む姿をブンブンに魅せて欲しいなと願うあまりです。

最後に

今回、初めてエアギター大会を観戦したのですが、とっても楽しかったです。どんなにガチ勢になっても、そこから滲み出る人の良さやコンプレックスがうっかり表に出てしまう。そこを如何にコントロールしてカリスマヒーローになるのか?地を這いつくばるようにして生み出された演出を観ると元気をもらいます。

アンディ・ウォーホルは「将来、誰でも15分は世界的な有名人になれるだろう」と名言を残しているが、多くの人にとっては「そんな15分もヒーローになんかなれないよ」と躊躇してしまう。しかし、1分だけなら...1分だけなら輝ける場所がエアギター界にはありました。熟年のエアギタリストだろうと、目が肥えた審査員でも決して見下すのではなく、エアギタリストには敬意を払う。ディスりに愛がある。

これはまた行きたいなと思いました。

ブンブンは出ないのって?

いやブンブンはトークショーで十分ですよw

観るだけで幸せですww


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