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【南大沢土木構造物めぐり】No.1 小山内裏トンネル(その2) メモ(もっと知りたい人のために

多摩ニュータウン通りの西側、南大沢駅と多摩境駅の間にある、尾根を越えるトンネルである小山内裏トンネル。大きな断面の道路トンネルが近くに2本並ぶという、当時では難しい工事を実施したことで、土木学会賞を受賞したトンネルです。その詳細を本編に続き、もう少し見てみることにしましょう。

(本編は、下記のところにあります)

【構造物概要】
 名称:小山内裏トンネル
 路線名:都道158号 小山乞田線(多摩ニュータウン通り)

 延長:389m(上下線2本並列)

 断面:幅約9m、高さ約8m、上下線の離隔約5m
 工法:山岳トンネル工法(中壁式NATM(CD)工法)

【参考】
「小山内裏トンネルの計測結果に関する一考察」
(土木学会HPのアーカイブスより)

http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00019/1992/24-0171.pdf

 発注者:東京都多摩都市整備本部
 施工者:鹿島・坂本工業JV(八王子側)、清水・清水組JV(町田側)
 完成:1991年1月
 特記事項:土木学会技術賞受賞(1991年5月)

竣工当時の貴重な写真が、施工会社である清水建設のHPにあります。

【技術的解説】
 小山内裏トンネルは、上下線2本のトンネルが近接して掘削する必要があるため、大きな断面を一度に掘るのではなく、トンネルの真ん中に中壁を設け、アルファベットの「C」と「D」のような形でトンネルを分割して掘っていく「CD工法」が採用されました。先にアルファベットの「D」の部分を先に掘り、「D」の縦棒の部分を「中壁」に見立てて、中壁を残したまま「C」の部分を掘り、トンネルの形を完成させてから中壁を撤去する掘削手順で掘り上げます。これにより、隣のトンネルを掘った時の変位を小さくすることができるということです。この工法の活用が当時の最先端の技術であったために、土木学会の技術賞を受けました。掘削した土質は、トンネル上半分が「御殿峠礫層」、下半分が「上総層固結シルト」で、トンネルの上部に関東ローム層です。礫層は、掘った時にバサバサと崩れる可能性もある土質ですが、掘ったらすぐに吹付コンクリートで固め、支保工を立てて山を崩れるのを防ぎ、山の動きを計測して危険が無いかを確認しつつ掘り進めていくことをします。こうした工事の結果、今のトンネルが出来上がっているのです。

【散策おすすめポイント】
トンネルといえば、薄暗くてじめじめしていて、人もあまり通らず、轟音が鳴り響いて不気味なイメージが強いですが、ここは市街地の中の一直線の大断面トンネルなので、見通しも良く、両側の坑口の明かりも見え、広々として比較的人通りも多いので、トンネル観察をする方にもおすすめです。高速道路のトンネルなどでよく見かける、非常用の電話や消火栓などの設備も間近で見ることができ、両トンネルの坑口付近の表示板関係や、坑門工なども観察できます。町田・八王子側両坑口やトンネルの直上は都立小山内裏公園が広がっており、トンネルの歩道からも公園に容易にアクセスできるので、公園の散策ついでに坑門だけ見学というのも十分可能です。

トンネル特有の、薄暗い雰囲気はあまりありません。

【周辺の散策スポットなど】
 トンネルの上部やその周辺に広がる小山内裏公園は、広大な敷地を有する都立公園で、大きな池や芝生広場、ビジターセンター、大型すべり台、ドッグランがあり、また尾根の中には自然保護のためのサンクチュアリや、森林浴やトレッキングのようなことを楽しめるエリアがあり、尾根の最上部には尾根緑道が公園内を通り抜けています。散策を楽しむ人や、ジョギング、子供たちの遊び、自然観察(動植物)など、様々な楽しみがある魅力的な公園です。町田側は多摩境駅に近く、食べ放題のレストランや大型店舗も多く、特に休日は多くの車や人が行き交っています。多摩境駅周辺へショッピングついでや、小山内裏公園に散策ついでに寄り道してはいかがでしょうか。

【アクセス】
八王子側の坑口には、京王相模原線南大沢駅から徒歩約20分、町田側坑口へは、多摩境駅から徒歩約5分で到着します。


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