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若葉のついた青いことばたち。(桃太郎電鉄X 〜九州編もあるばい〜)

先週、『桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~』が発売された。年末が近づくと、コタツに入って桃鉄をプレイしたくなる。

桃鉄シリーズは、地元の友達と、それはそれはたくさんプレイした。FCの初代『桃太郎電鉄』から始まり、PCエンジンの『II』、SFCの『III』『DX』、PSの『7』『V』……。それからPS2の『12』まで、毎年新作をプレイしていたっけ。

小学生のころは、「666カード」や「冬眠カード」での妨害合戦が多かった。「桃鉄で地理を学びました」というのはよく聞く話だけれど、ゲームで体験した全国の都道府県が社会の授業で出てくるのは、やっぱりうれしかったな。

中学生になると知恵がついてきて、桃鉄がいわゆる"運ゲー"ではないことを知る。臨時収入が発生する物件を効率的に買い集める。銀次の出現率を把握し、現金が多いときは極力、物件マスに停まる。20年目を過ぎたころからは、シルバーカード/ゴールドカードの対策として刀狩りカード/剛速球カードを温存する。そういった戦略だ。実際、監督のさくまあきら氏も「実力7割・運3割を想定している」とのこと。

確率や期待値の計算ができる。日本の地理や航路が頭に入る。CPUの思考のクセを読む。小学生から中学生になるにつれ、自分たちの知識や考える能力が成長していく。そして、それに合わせてゲームのプレイングが洗練され、相手と高度なかけひきができる。そんな並走がたまらなく楽しかった。間違いなく、人生で一度きりしか味わえない楽しみかただったと思う。

高校はみんなバラバラになったから、いっしょにいる時間は減った。けれど年末にはお金を出しあって最新作を買い、夜通しでプレイするのが恒例になった。

このころになると、勝ちを狙って熱心にプレイするというよりは、桃鉄を媒介にして「最近どうよ?」と会話することがメインになっていた。スマブラやボンバーマンもよく遊んでいたけれど、アクションゲームでゆっくり話すのはなかなか難しかったのだ。

将来。受験。上京。恋愛。家族。夢。桃鉄のゴキゲンなBGMに揺られながら、いろんな話をした。まだお酒が飲めないから、お菓子をつまみながら、まるで飲み会をしているみたいにね。

不格好な強がりや、いじわるな冗談や、カッコつけた惹句。
若葉のついた青いことばたちを、無軌道に投げ合っていた。

『桃太郎電鉄』を思い返すといつも、グラフィックやBGMだけじゃなく、そのまわりの風景もいっしょによみがえってくる。いいゲームは、遊んだ思い出が宝物のように心にしまわれてゆく。そういうものなのだ。

隣から回ってきたコントローラーのぬくもり。みんなのくしゃくしゃな笑顔。炭酸のぬけた甘ったるいライフガード。子供から大人になってゆく僕たちのそばに、ずっと桃鉄がいてくれたことに感謝したい。新作もどうか、そんなふうに愛される作品でありますように。

あのころも思っていたし、いまはより強く思う。雪がしんしんと降り積もる岐阜のちいさな町で、バカみたいに笑いあって桃鉄をプレイできたことは、本当に幸運だったと。

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