見出し画像

ヤマダタロウ氏(仮名)からのクレーム。

今日オレんとこに荷物持ってきたヤツぁだれやぁぁぁーーー!
出せやぁぁーーー!!

いつもの毎日、いつものように鳴る電話を取った私が耳にしたのは
とんでもなく興奮したオジサマのガラガラした声だった。

お客様サービスセンターを設けている我が社だが、たま〜に営業所に
直接電話をかけてくる方もいらっしゃる。
この場合、たいがいがご意見という名のクレームだ。

「お電話ありがとうございます。申し訳ありませんがお名前を教えて
いただけますか?」と、丁寧すぎるほど丁寧に聞いた。
するとオジサマは
「名前ぇぇ?教えんぞ!おりゃ名前やら教えんぞー--!!ゼッタイに!」と取り付く島もない。
このままでは何がどうしてどうなったかもわからないし、
このオジサマの口を封じ込めることもできやしないので、
再度、「申し訳ありません、このままではご対応ができかねますので
お名前を・・・」と、私が言い終わらないうちに
「ヤマダタロウ(仮名)や!おれがヤマダタロウやー--!」と食い気味に
教えてくれた。ゼッタイに!と言った割には早かった。

さて、このヤマダタロウ氏に何があったのか?

「今日は食品の配達が来るから、受け取っていてくださいね。
受け取ったら冷凍庫と冷蔵庫に分けて入れといてくださいね。」

と、外出する妻様に言われていたのだそう。

用件を言いつかったヤマダタロウ氏だったが、
休暇だし妻様も外出。よっしゃとばかりにひとり昼呑みをしながら
好きな音楽を聴いたりテレビを観たりしてのんびりしていたんだそうだ。

そして「ちょっとウトウトしている間に商品が玄関前に置いてあった」
らしく、ヤマダタロウ氏がそれに気づく前に妻様が帰宅したもんだから
「ちょっと!タロウさん!?何をしていたんですか?私がお願いしたこと
してくれなかったんですか??」と叱られたんだそう。

そう、早い話が妻様に叱られただけなのだ。

ヤマダタロウ氏が言うには
「インターホンは鳴らんやったぞ!(オレが叱られたのは)
オマエんとこのせいや!」らしい。
商品に異常はなかったか、とか他に不手際はなかったか?と聞いても
「オマエんとこのせいや」を連発される。
とりあえず事実確認だ。ヤマダタロウ氏のお宅に商品を届けた職員に
状況を聞かなければ。

私が、いったん電話を切ってお届け時の状況を確認したのち
再度ご連絡いたします。と伝えようとしたところ
後ろの方から「タロウさん?どこに電話してるんですか?」と妻様の声。
とたんにモゴモゴするタロウさん。

「もう、ほんとスミマセン!こんなことで電話なんかして。
こっちが悪いんです。ほんと、ごめんなさいね~」
・・・タロウさんから受話器を奪い取った妻様から丁寧に謝罪され、
一方的に電話が切れた。ヤレヤレ、である。

次の日に、ヤマダタロウ氏から名指しで電話があった。

「あ、タナカサン!?」すっかり友達だ。
用件はというと「昨日のこと謝ろうと思ってね」いや、恋人レベルか?
やたらと馴れ馴れしくなったヤマダタロウ氏は

昨日、あれから妻様と大喧嘩をしたとか
酔っぱらったオレが悪いんだけどあの言い方はないよね、とか
どうでもいい話をしていた。めんどくさいので適当に相づちをうち、
髪の毛を人差し指でクルクルしたり、メモ紙にヤマダウザイとか
落書きしながらヤマダタロウ氏の気が済むまで喋らせてのち
「ご用件はお済みでしょうか?では次回からはお客様サービスセンターにご連絡ください。私からは以上です。ありがとうございました。」
冷たくそう言って話器を置いた。

今度は私がヤマダタロウ氏の妻様にクレームの電話をする番だ。フフフフフ



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?