ワンショットへのこだわり! 新進気鋭のシップスミス 《ジン⑪》
■ジンの3つの分類方法
前回、前々回と「マルチショット」についてご案内しました。
ジンのボトリング。最後にアレを加えます! 《ジン⑨》|チャーリー / ウイスキー日記 (note.com)
マルチショットも悪くない!? 新しいカテゴリーのスピリッツが誕生 《ジン⑩》 | 記事編集 | note
大手メーカーのスタンドードクラスのジンは、ボトリング時に、ジン原液に対して、水だけでなく、ニュートラル・スピリッツも加える「マルチショット」という製法が多い、とお伝えしました。
ただ、ニュートラル・スピリッツを加えずに、水で希釈するだけの「ワンショット」にこだわっているメーカーや製品もあります。
そのワンショット製法にこだわるメーカーの中で、特筆すべき「スップスミス」についてご紹介したいと思います。
■シップスミスとは
シップスミスとは、クラフト・ジン蒸溜所である「シップスミス蒸溜所」がつくる、人気のロンドン・ドライジンです。
そのシップスミス蒸溜所の「誕生秘話」、そしてクラフトならではの「製法のこだわり」が、ジン愛好家から一目置かれる存在となっています。
■シップスミス誕生秘話《蒸溜所開業:決意編》
シップスミス蒸溜所は、幼馴染のサムとフェアファックスという2人の青年が立ち上げた蒸溜所で、2008年に蒸溜免許を取得、2009年に蒸溜開始しています。
この蒸溜所誕生の何がすごいのか?
それは「約200年ぶりにロンドンに新規開業した蒸溜所」だからです!!
ジンクレイズというジンまみれの時代を経験し、その後、ロンドン・ドライジンが誕生したロンドンではありますが、19世紀に入ると、都市化による人口増加が引き起こした土地問題、アルコール規制とそれにともなう蒸溜事業免許の厳格化の問題など、様々な要因により新規蒸溜所の建設が難しくなりました。
むしろ、ロンドン市内から他の地へと移転する蒸溜所が相次ぎ、ロンドン・ドライジンと名乗りながらも「ロンドン市内で蒸溜されているジンブランド」は、ビーフィーター蒸溜所のみとなってしまいました。
そして、結果的には1820年を最後に、ロンドン市内において新規蒸溜所の開設はありませんでした。
シップスミスの創業者の1人サムは、アメリカで仕事をしていた2002年~2004年頃、アメリカにおけるクラフトビール・ブームを目の当たりにします。
サムは、幼馴染で「いつか一緒に大きな事業をはじめよう!」と夢を語り合っていたフェアファックスと、ジン蒸溜所の開設を決意します。
■シップスミス誕生秘話《蒸溜所開業:奮闘編》
「おし! ジンをつくるぞ!」と意気込んでも、世界各国、アルコール飲料の製造には免許が必要です。
さっそく、サムをフェアファックスは、ロンドンでのジン製造を、当局に申し出ますが、今度は困ったのは英国政府の関係部署です。
というわけで、ジン製造免許をGETするのに、2年の歳月がかかったそうです。
逆に言うと、「クラフトの本物のジンをつくりたい」という熱意を、2年間ずっと継続できたことに、並々ならぬ情熱を感じます!!
そして、2008年、やっとのことで入手できたジン製造の英国政府の許可証。
約200年ぶりのことで、許可証のフォーマットもなかったので、その許可証は『手書き』だったそうです。
このシップスミス蒸溜所の立ち上げは、一大ムーブメントを巻き起こし、約200年間まったく新規蒸溜所の開設がなかったロンドン市内において、その後、約70ものクラフト・ジンの蒸留所が立ち上がっています。
この約200年の沈黙を破り、そして今のロンドンのクラフト・ジンのブームをつくった立役者として、シップスミスはリスペクトされているのです!
■本物へのこだわり
シップスミスが目指した味わいは、古典的ともいえるドライジンのレシピです。
古い文献からレシピを徹底的に調べ上げ、核となる10種のボタニカルを選定しています。
その配合には、「伝統&本物」のドライジンの香味への強い想いが込められているそうです。
そもそも、シップスミスとは、こういう意味です。
伝統的な製法でつくる本格的なジンを広めたい、という情熱をブランド名に込めているそうです。
なんとなく、司馬遼太郎みたいですね。
■本題:ワンショット
シップスミスは、伝統的な本物のロンドン・ドライジンを目指しています。
そのため、ボトリングは、ワンショット製法にこだわっています。
水以外は一切加えない、昔ながらの製法で、濃厚で力強い味わいを引き出しているのです!
■5つ星ホテルへの売りこみ
スップスミスの創業者:サムとフェアファックスはロンドンにある5つ星ホテルをまわり、自らジンづくりの信念やこだわりについて語り、彼らの伝統的かつ本物のロンドン・ドライジンの取扱店を増やしていったそうです。
この情熱。
イチローズモルトのベンチャーウイスキーの創業期に似ていますね!!
創業者自らひたすらBAR回りの現場力、イチローズモルト!!|チャーリー / ウイスキー日記 (note.com)
■シップスミスのラインナップ
定番は2品です。
シップスミスのHPから引用します。
シップスミス -SIPSMITH- サントリー (suntory.co.jp)
VJOPは、ブランデーのVSOPを意識したネーミングだと思われます。
どちらにも「上質なもの」的なニュアンスがありますね!
■実は
ワンショットにこだわるスップスミス。
実は、2016年にサントリーが買収しています。
英高級クラフトジン、販売量2倍に サントリー系 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
そのため、日本でも手に入りやすいジンです。
今宵は、翠ジンソーダでなく、スップスミス・ソーダを飲んでみようかしら??
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