見出し画像

ポットスチル・ウイスキーの可能性

■色々な穀物を使っていた「ポットスチル・ウイスキー」

前回、ポットスチル・ウイスキーについて、ご説明しました。

アイリッシュ・ウイスキーならではの『ポットスチル・ウイスキー』|チャーリー / ウイスキー日記|note

麦芽に課税されるようになったアイルランド島で、節税対策で「大麦麦芽」「未発芽の大麦」が加えられるようになったわけですが、加えられたのは「未発芽の大麦」だけではありませんでした。

「未発芽の大麦」に加え、
「オート麦」
「小麦」
「ライ麦」
といった4種類の穀物が、「大麦麦芽の使用料を減らすための原料」として使用されました。

この4種の全部を使用することもあったようですが、多くの場合は、
「大麦麦芽」
「未発芽の大麦」
「オート麦」
を原料としたようです。

ちなみに、大麦麦芽は必ず使用します。麦芽を入れなければ、穀物のデンプンを糖分にすることができないので、アルコールをつくることができません。

詳しくはこちら
シングルグレーンウイスキー知多にも、モルト(麦芽)を使います!|チャーリー / ウイスキー日記|note

そして、それぞれの穀物を、ポットスチル・ウイスキーの原料に使用する場合、代表的な配合比率は、以下のようだったそうです。

代表的な混合比率は大麦麦芽(モルト)30~50%、未発芽大麦30~40%、小麦5~10%、オート麦(カラス麦)20~30%、ライ麦3~6であった。
ウイスキーコニサー資格認定試験教本2021 下巻 P11(ウイスキー文化研究所)


■ポットスチル・ウイスキーの原料についての法定義

《ポットスチル・ウイスキー 原料の法定義》
 ①大麦麦芽30%以上
 ②未発芽の大麦30%以上
 ③その他の穀物は合計5%以下

少しわかりずらいので言い換えると、

①    大麦麦芽+②未発芽の大麦=95%以上

ということです!

これは、ポットスチル・ウイスキーがつくられるようになったころの混合比率と異なるため、新興のクラフト蒸溜所では、「③その他の穀物」を敢えて5%以上使用したウイスキーづくりを行っているケースも存在しています。
(ただし、この場合、法的には「ポットスチル・ウイスキー」とは名乗れないため「グレーン・ウイスキー」の扱いとなります。)

この法定義については、「ポットスチル・ウイスキーの法定義の見直し」の声も上がっているようなので、今後の展開を注目したいと思います!

ちなみに、ポットスチル・ウイスキーの法定義には「ノンピート麦芽のみ=ピート麦芽は使用不可」というものもあります。

これにより、一般的なポットスチル・ウイスキーは、

・(法定義ではないですが基本的に)大きなポットスチルで、軽やかな酒質

・(法定義ではないですが基本的に)3回蒸溜で、軽やかな酒質

・(法定義として)ピート麦芽使用不可で、軽やかな酒質

と、軽やかの三乗となり、かなり飲み口の良いウイスキーとなっています。


代表的なポットスチル・ウイスキー

◇レッドブレスト

日本で一番手に入りやすい、かつメジャーなポットスチル・ウイスキー。
原料は、「大麦麦芽」「未発芽の大麦」のみで、その他の穀物は使われていないそうです。
レッドブレスト - ウイスキー - ペルノ・リカール・ジャパン (pernod-ricard-japan.com)

◇バスカー

アイリッシュウイスキーの新興のクラフト蒸溜所の商品です。最近、日本国内でもよく見かけます。
このバスカー・ブランドでは、シングル・ポットスチル以外にも、シングル・モルト、シングル・グレーン、ブレンディッドが発売されています。
バスカー | Whisk-e


■可能性を感じるぞ! ポットスチル蒸溜のグレーン・ウイスキー

ポットスチル・ウイスキーは、「大麦麦芽」+「大麦麦芽以外の穀物原料」「ポットスチル蒸溜」しているアイリッシュ・ウイスキーのウイスキー・カテゴリーのひとつです。(細かな法規定はありますが)

スコットランドの法律では、グレーン・ウイスキーに該当します。
このポットスチル蒸溜のグレーン・ウイスキーは、

・「ポットスチル蒸溜」で原料の味わいが良く残る。
・「大麦以外の穀物」も使えるため、色々な可能性を秘めている。

と思います。

日本だけでなく、世界的なウイスキーブームの中、この『ポットスチル蒸溜のグレーン・ウイスキー』で、面白い商品が生まれてくるかも知れませんね!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?