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シングルグレーンウイスキー知多にも、モルト(麦芽)を使います!

■シングルグレーンウイスキー知多の原材料

ラベルの裏貼り
原材料名=グレーン、モルト



知多は、連続式蒸溜機で作られているグレーンウイスキーです。
このグレーン(穀物)は知多においては、トウモロコシのことですが、ここで、ウイスキーについて詳しい方は、「ん? モルト??」と思うのではないでしょうか?



■グレーンウイスキーって?

そもそもグレーンウイスキーとは、どういうものかをご説明します。
一般的なウイスキーの分類としては、

A】モルトウイスキー原酒
大麦麦芽(モルト)100%、単式蒸溜器(ポットスチル)で蒸溜。

B】グレーンウイスキー原酒
大麦以外の穀物(小麦・トウモロコシetc.)が主原料、連続式蒸溜機で蒸溜。
AB】 ブレンディッド・ウイスキー
モルトウイスキー原酒とグレーンウイスキー原酒をブレンド。

この場合、モルト原酒もグレーン原酒も1種類ではなく、何種類もブレンドして味を調整することがほとんどです。
例えば、「ザ・スコッチ」と呼ばれ、ブレンディット・ウイスキーのスコッチの名品「バランタイン17年」では、モルト原酒・グレーン原酒を合わせて、40種類以上の原酒がブレンドされています。
流通するウイスキーの8割以上は、このブレンディッド・ウイスキーです。

AA】 ブレンディッド・モルトウイスキー
モルトウイスキー原酒とモルトウイスキー原酒をブレンド。
特に1つの蒸溜所のモルト原酒のみをブレンドする場合、シングルモルトウイウスキーと呼びます。

この場合、地酒的に「その蒸溜所ならではの味わい」のウイスキーとなるため、2000年前後から、世界的に人気が高まっているカテゴリーです。
(以前はヴァッテッド・モルトと言っていましたが、スコットランドでブレンディッド・モルトという表現に統一化されたのにともない、日本でも現在はブレンディッド・モルトということが一般的です。)

BB】 ブレンディッド・グレーンウイスキー
グレーンウイスキー原酒とグレーン原酒をブレンド。
特に1つの蒸溜所のグレーン原酒のみをブレンドする場合、シングルグレーンウイウスキーと呼びます。

グレーンウイスキーは、基本的にはお料理でいうところのダシのような「縁の下の力持ち」で、ブレンディッド・ウイスキーのために使われることがほとんどです。そのため、グレーンウイスキーのみで商品化することは、今までほんとんどありませんでした。
ただ、ニッカカフェグレーン(2013年日本発売)や、シングルグレーン知多(2015年全国発売)、シングルグレーン富士(2020年発売)など、現在はシングルグレーンウイスキーの発売も増え、かなりメジャーな存在となって来ています。


■「麦芽の酵素」のおさらい

少しだけ話がそれるようですが、グレーンウイスキーを知る上で重要なので、お付き合いください。前回の「六条大麦vs二条大麦」のおさらいです。

六条大麦 vs 二条大麦|チャーリー / ウイスキー日記|note

麦芽(発芽させて乾燥させた大麦)に含まれる重要な酵素に「デンプン分解酵素」「タンパク質分解酵素」があります。
酒づくりでは、特に『デンプン分解酵素』が重要となります。
なぜなら、穀物からアルコールをつくる場合、必ず下記の流れを踏むからです。

『デンプン』
  ↓
デンプン分解酵素が働く
  ↓
『糖分』が誕生
  ↓
酵母が働く
  ↓
『アルコール』が誕生

穀物(大麦・小麦・米・トウモロコシetc.)からお酒をつくる場合、フルーツとは異なり、必ず「デンプン→糖分」に変換する作業=糖化が必要になります。

(ブドウなどのフルーツの場合は、最初から糖分があるのでこの糖化作業は不要。)

その「デンプン→糖分」に変換してくれるのが、『デンプン分解酵素』なのです。


■グレーンウイスキーにも、大麦麦芽を使います!

「え? グレーンウイスキーは、大麦以外の穀物(小麦・トウモロコシetc.)が主原料って書いてあるじゃん!」という声が聞こえて来そうです。
ただ、「主原料」と書いてあるところがミソです。100%使用とは書いていません。

先ほど書いた通り、『デンプン分解酵素』がないと、穀物(小麦・米・とうもろこしetc.)から糖分、ひいてはお酒をつくることができません。
ですから、グレーンウイスキーをつくる際には、糖化酵素を持っている「麦芽」(発芽させて乾燥させた大麦)を加えているのです!


■グレーンウイスキーに入れるのは六条大麦!

「え? 前回、ビールやモルトウイスキーとか、お酒づくりには、二条大麦を使うって言ったじゃん!」という声が聞こえてきそうです。

二条大麦を使う理由は、アルコールのもととなる「デンプン」が多いからです。
ただ、小麦・トウモロコシなどを原料とするグレーンウイスキーづくりで、小麦・トウモロコシにデンプンがありますから、麦芽に果たしてもらいたい役割は「デンプンの供給」ではなく、『糖化』です。

そしてこの『糖化』の作業をしてくれる「デンプン分解酵素」ですが、ビールやモルトウイスキーで使用される「二条大麦」よりも、「六条大麦」に多く含まれることを、前回記事でご説明しました。
そのため、グレーンウイスキーには、六条大麦からつくられた麦芽(モルト)を混ぜ合わせるのです!


■モルトウイスキー=二条大麦、グレーンウイスキー=六条大麦

ビールやモルトウイスキーといった「原材料=大麦麦芽100%」でお酒をつくる場合
 → 二条大麦を使用
小麦やトウモロコシなど「大麦以外の穀物」でお酒をつくる場合
 → 小麦トウモロコシなどを80%程度使用
   + 六条大麦20%程度使用

大麦100%でお酒とつくる場合、デンプン分解酵素が弱い「二条大麦」を使いますが、100%使用するので、その弱い分解酵素でも、十分に糖化できます。
むしろ、二条大麦には糖化すべきデンプンが多いので、六条大麦よりもアルコールの収量が良くなるのです。

一方で、小麦やトウモロコシなど「大麦以外の穀物」でお酒をつくる場合、基本的にその穀物自身に「デンプン分解酵素」がありません。
そのため、デンプン分解酵素を持っている大麦麦芽を混ぜ合わせるのです。そして、その大麦は、デンプン分解酵素をより多く含む「六条大麦」となります!


■なぜ、シングルグレーン知多の原材料に「モルト」が入っているのか?

《答え》
『糖化材』の役割として、必ず「六条大麦の麦芽(モルト)」を入れるから。

これがスラッと答えられたら、超ウイスキー通です!

飲食店スタッフさんや、酒屋のスタッフさんでも、ぱっと答られる人はなかなかいないと思います!!

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