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程よい関係を、つくり続けるむずかしさ。

 意識していないつもりではあるけれど、毎年4月は、いろいろ気に係ることの多い月であるように感じます。特に、新卒の新入社員を迎え入れた年は。そんな4月も、早いもので今日で終わりというタイミング。今月はこの本を手にとりました。

 毎年のように、『今年の新入社員は〇〇タイプ』なんていうことが、ニュースになったりしていましたが、ここ数年、以前のようには聞かなくなったように思います。どんな学問や分野でも、最後の最後は、『多様化』とか、『複雑系』なんていう言葉でざっくりとくくってしまうことが多いですが、この本の著者の古屋星斗先生の指摘によると、『学生の価値観だけでなく、職場が変化して多様化している』ということがあまり意識されないため、より一層、若手社員と企業との価値観の擦り合わせが難しくなっているからなのかもしれません。

 外部からの視点では細かなことにでも変化に気づきやすいですが、ずっと同じ職場や組織に属していると、数年間の変化にさえ、気づきにくくなっているということは、誰しも経験したことがあることだと思います。採用難の現在において、大手中小を問わず、せっかく入社してくれた人材が長く社内に属して、活躍し続けてもらうことが、重要視されるようになっています。そのような観点で、やさしい職場、この本の表現を借りると『ゆるい職場』が増え続けているのだと思います。その反面、『早く成長するために、若いうちからバリバリ働きたい』という思いで会社を選ぶ若者が存在することも確か。ただ、昭和のバリバリと、現在の若者のバリバリにも、差があるわけで、同じ言葉であったとしても、中身の擦り合わせなしにお互いが理解しあえることはないように思います。多くの組織を見ていると、このどちらかに傾倒している職場が多いのではないかと思いますが、組織の考え方をベースにする必要がありますがこれらのバランスが重要な時代になっているのかもしれません。

 『心理的安全性』という言葉は、とても良く耳にしていましたが、『キャリア安全性』という表現は、私はこの本で初めて目にしたように思います。いくつかの尺度があるようですが、どの尺度も、自分自身の市場価値につながる概念であると、個人的には感じました。転職サービスのCMを見ない日がない程に、日本の中でも転職ということが当たり前になってきたということが理由なのかもしれませんが、面接などで学生の皆さんとお話していても、学生時代の就職活動を、『ファーストキャリア』として認識している学生がほとんどだと思います。最近の統計データでも出ているように、定年まで同じ会社で働き続けることが当たり前という時代も、もう、過去の話になっているということが、確実なようです。

 指導する側の環境も大きく変わってきていて、何でもハラスメントにつながってしまうという危険を回避するため、面と向かって厳しい指摘をしない上司が増えているようです。確かにやり方を間違えれば、すぐにハラスメントと認定されてしまいかねない状況下では、厳しさや表現に対する考え方は難しいと思います。ですが、的確な指導をしなければ、必要な成長もできないわけで、今まで以上に信頼関係を構築するということが必要な時代になっているのではないかと、個人的には考えます。

 そして、古屋先生もこの本の中で何度か指摘していらっしゃるように思いますが、若手社員の仕事への目的意識と、ショートゴールを含めた達成感をどのように味あわせることができるかということが、長期的な活躍や貴族につながるのではないかと思います。この本を通して、アンケート等のデータとして、若い世代についての考え方を少し見ることができたように思います。データ分析はあまり得意ではないですが、データから見える傾向を、組織の仕組みに活かしていくことも、大切だと、あらためて感じました。

『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』
古屋 星斗 著 日本経済新聞出版発行 を読んでの感想

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