19 焦る心

私は仕事を休むために、介護休業を申請した。

介護休業とは、介護対象者一人に付き最大三ヶ月間お休みをもらえる制度。
余命1、2ヶ月ということで目一杯の3ヶ月間申請を行った。
(お休み期間が短いのが介護休暇。)

なのでこの期間はずっと実家に居て母のそばにいることができた。
ちなみに父も介護休業を取得していた。
姉はいつもは市内のアパート暮らしだがこの期間は実家で在宅勤務をし、実家に住んでいた。

問題は父だった。

私も姉もいるからと言い、毎日物置小屋の整理に明け暮れていた。

その姿に私は多少なりとも苛立ちを感じていた。

食事介助に排泄介助、服薬、時間指定の薬だって私しか対応していない。看護師さんやお医者さんの対応なども父はどこかに居なくなり、私ばかりだ。
まず、ナースコールもない、大きな声も出せない母の部屋に誰かがいないと駄目なのにすぐに誰もいなくなるじゃないか。

普段様々な対応をしていないと、いざというときに分からない。
父に、「どうするといいんだ?」と聞かれても、イライラ口調で応答してしまう。


しかし、そんな父の姿が心配でもあった。
今までやりもしなかった片付けに手を付ける意味は、子どもたちが母のそばにいるからというだけではないだろう。

もちろん、母も同じことを感じていた。


「男の人は弱くてだめなんだね。気持ちばかり焦って、動いてないとやってられないんだろうな。こんなに落ち着かない人だとは思わなかったよ。」

母は呆れた口調で言う。

「片付け休暇じゃないんだからさ…」


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