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31 カウントダウン

8月下旬に退院してから、私達は毎日母の様子をカレンダーに記録していった。

この記録を見返しながら姉が言う。

「毎週、火曜日がターニングポイントなのかも…。」

退院して一週間近くは、もちろん来客の嵐。
その中でも母はいろいろな人と楽しくお喋りができていた。

しかし、火曜日になると
痰が絡み苦しそうな様子になっていた。

その後も一週間ごとにせん妄のような症状が出始めたり、尿の不調や食欲のさらなる低下、睡眠時間の増加、意識障害……

『あ!これが、週単位か!』

終末期について予習をしていた私は
この変化に気付いた時には、
「これ!進研ゼミでやったやつだ!」並の感動すらあったが

と同時に、次のステージが怖くもなった。

四宮先生のYou Tubeで聞いた『終末期の変化』に母も則ってしまっているのか。
気づいてしまったからには

今がまさに「終末期」であり
順調に死に向かっていることを
認めざるを得なかった。

いつ、日単位になってしまうのだろう。
いつ、時間単位になってしまうのだろう。

記録を見ては、今日も昨日と同じ状態であることに安堵する。

しかし、変化は些細だ。

例えば、毎朝飲んでいる薬を今日は飲まなかった。

でも、それはもしかしたら偶々かもしれない。母の気分かもしれない。

なんて、そんな言葉で濁すことができるくらいの変化だってある。

でもほんの些細な変化が、
母が知らせてくれる、カウントダウンだったんだ。


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