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003皮や殻が美味しいという話

皮や殻は捨てていいものだと思っていたし、捨てるべきものだとさえ思っていた。「美味しいところだけ食べて後は捨てればいいじゃない」と、どこかの国の貴族みたいなことを思っていた。でも違う、本当は皮とか殻が美味しいという事実を大人になってから知った。

地元に私の行きつけの天ぷら屋さん「天ぷら天悟(てんさと)」がある。大将とおかみさんは、あの超有名店、銀座天一で長年修行した、まさにプロフェッショナルで、この店では最高の天ぷらをリーズナブルに楽しむことができる。

大将は、腕はもちろんだが、食材への愛情も凄まじく、どう食べるか、何が美味しいか、どのような食材かだけではなく、栄養価や、時には作っている場所、生産者はどんな人かまでプレゼンしてくれる。
だから「その地域の出身ですか?」と良くお客さんに聞かれるそうだ。

そんな食材への愛が溢れている大将だからこその天ぷらがある。それは海老だ。いや、天ぷら屋さんで海老は普通でしょ、と思うかもしれないが、ここの海老天はちょっと違う。まずは皆さんご存知のプリプリジューシーな海老天が出てくる、その直後に、その海老の殻を素揚げにして一緒に出してくれる。もうね、これがうまいのなんのって。なんなら本体より好きかもしれない。
サクサクで海老の香りがふわーとして、最高級のえびせんを食べているような感じ。ボキャブラリーがなくてすみません。でもまだ海老の殻は再利用する価値がありそうだし、食べる人もいるし、なんとなく想像できる人も多いと思う。

しかし、もう一つ、忘れられない天ぷらがある。それは里芋の皮だ。里芋の皮は大抵の人が捨てると思う。私も捨てるし、なんなら厚めに剥く。あのヒゲのような部分が再利用できるとは到底思えないからだ。

しかし、天悟ではその皮の部分も出してくれる。こちらも食べてみるとめちゃくちゃ美味しい、本体はもちろん美味しいが、それを超えるくらい美味しい。
なにこれ、なんでみんな教えてくれなかったの? 小学校の教科書に書いておいて欲しかった。それくらい美味しいし、その皮食べたさに里芋を頼みたいくらいだ。

フードロスの問題や食の問題に取り組む時、ふと思うことがある。「もったいないから」とか「有効活用できるから」とか「栄養価が高い」とか「○○のために食べましょう」とか、もしかしたらその付加価値ってやつが余計なものになっているんじゃないかということ。
その付加価値が食べ物の敷居を上げている気がする。

それよりも、「美味しいよ!」 「私は美味しいから食べちゃうの!」 っていうのが実は一番伝わるんじゃないかな。

皮ももったいないから使いましょうってまるで皮の価値を下げているみたいに感じてしまう。だって皮こそ美味しかったことを、私はもう知ってしまったから。

美味しいものはちゃんと伝わる、食べればわかる。でもそのためにはそれを伝える知識や技術を持つ人が必要だ。天悟の大将のような人が。

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天悟天丼

天ぷら天悟
住所:〒279-0002 千葉県浦安市北栄1-2-3 1階
電話:047-314-5190

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