instrumental
「愛されたい」って、田舎の畦道、黒い怪物の背が並ぶ、そこに叫んだ。
私だって、誰かの一部になって良い筈なんだって、そう、認めて。
素直を知らないまま、いつだってその眼前の、
“大切”が去る事は咎めなかった。
行かないで、と言えるほどの自信さえ、私は持ち合わせていないから。
気付いていないよ。
離していいよ。
戻らないでいい、形も、声も。
どっかに行ってしまって、そのまま。
……私の胎の奥で、静かに死ねば良い。
誰も居ない、という事実だけが、私の安心に変わるから。
飛んで行った鳥の様に、眩い白の羽が瞬いて、どうしようもなく、貴方が耐えられなくなった時にだけ、何度も触れたその喉で、美しい小さな囀りを聞かせて。
疲れた私の、引き摺った足が向かうその先で、貴方がただ、誰かと笑っているその瞬間を、私は愛しいと思いたい。思っていたい。
貴方に、何が知れようとも。
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