184番「電話当番」(午後)

 わたしのいるメイドリフレクソロジィのお店は他の店舗と比べると部屋がひろい。元々が民家ということもあり、お風呂や洗濯機もある。

 ここは5階、6階に分かれており、5階部分は施術用ベッドと椅子のある個室が3部屋、椅子のみの部屋が1部屋ある。6階ではお客様用の待合室と受付、それに玄関がある。

 今日のわたしのお仕事は電話当番である。先輩たちは施術に専念される。

 電話当番のお仕事は主に4つ
・電話対応
・PCによるWeb予約の確認
・施術用のお部屋の準備、片づけ
・新規のお客さんへの案内

 フェリシーではオンライン予約サービスを展開しており、公式ホームページのリンクから予約フォームに飛んで、施術の予約を取ることが出来る。

 お客様によっては推しにしているメイドがいる場合があり、その際にどのメイドさんがいつ空いているかが視覚的に分かるため便利である。

 私自身もここフェリシーで勤めているメイドであるが、女性限定のお嬢様割引とメイド割引を併用して、ちょくちょく他の先輩メイドの方々を指名して帰宅もしている。

 トゥルルル

 電話の音がなった。

アカリ「はい。フェリシーです」

お客様「あの、その、は、初めてなのですけれど・・・」

 フェリシーは創業してもうすぐ10周年を迎えるお店だ。口コミがうわさをよび、新規で来店される方々が多いことは喜ばしいことだ。

アカリ「あ、初めての方ですね。いつ頃がよろしいでしょうか」

お客様「あ、明日は空いてますか」

アカリ「明日のどの時間辺りですか」

お客様「えっと、4時以降は大丈夫ですか」

アカリ「4時以降ですね。少々お待ちください」

 一旦、電話を保留にする。私は電話を左手に持ち替え、慣れた手つきで目の前にあるPCでスケジュールの確認をする。

アカリ「(えっと、この時間は。。。うん。大丈夫。あいてるみたい)」

 私は保留ボタンを解除して、電話に戻る。

アカリ「お待たせしました。4時以降ですよね。空いております。どなたか指名をされますか」

 フェリシーで働くメイドはアイドルからコスプレイヤー、声優、舞台役者まで多岐に渡る。

 それゆえに新規のお客様の中には、フェリシーのメイドさんをTwitterで知った、イベントで見かけたなどの声も多く存在するため、初来店の時点で指名をされるお客様もいる。

お客様「えと、よくわからなくて。。」

アカリ「あ、でしたら、フリーで宜しいでしょうか」

お客様「あ、はい。お願いします」

アカリ「承知いたしました。お時間はいかがされますか」

お客様「んーっと。60分で」

アカリ「わかりました。コースはいかがしますか」

お客様「何がありますか」

アカリ「椅子に座って行うベーシックコースとベッドで行うバックセラピーコース、オイルフットコースがありますね。全身がお疲れでしたら、バックセラピーコースがおすすめです」

お客様「あ、じゃあ、それで」

アカリ「バックセラピーコースですかね。では、お名前を伺ってよろしいですか」

お客様「ユウと申します」

アカリ「ユウ様ですね。かしこまりました。お電話番号をお聞きしてよろしいですか」

お客様「○○ー○○○○ー○○○○・・・」

アカリ「ありがとうございます。では、確認致しますね。明日の午後4時、時間は60分でフリーのバックセラピーコースですね」

お客様「はい」

アカリ「ではでは、お気をつけていらっしゃってください」

お客様「ありがとうございます」

 すっかり電話の対応も慣れてきたものだ。

 PCにて、お客様であるユウ様の予約を確保する。

 PCの画面を眺める。フェリシーは秋葉原にあるお店ということもあり、お名前が個性的な方も多い。ガイヤさんや銀河さん、名無しさんなんていう方も来店される。
 どのお客様も個性的な人が多く、お客様同士でフェリシーのオフ会と称して交流が深まっているという話を聞くと、一人のメイドとしてお客様のために働けていると思えてきて心が温かくなる。

 フェリシーのメイド長は一緒になって働いていて、経営もするし、どのメイドとも親身にむきあってくださる素敵な女性の方だ。

 そのメイド長はメイドリフレクソロジィで働き始めて14年になるが、施術を第一に重きをおいている。

 お客様によっては、オタク話をされる方や仕事の悩み相談にいらっしゃる人もいるものの、施術を受けにリピーターになる人もいるくらいだ。技術はピカイチといえる。

 私は記憶喪失の身で拾われた身ではあるけれど、ここフェリシーで働けることを誇りに思える。やさしい先輩方、それにお店を好いてくださるお客様、可愛いメイドさんもいる。

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