「自転車泥棒」
舞台は求職者にあふれる第二次世界大戦後のローマ。職業安定所にようやく仕事を紹介してもらったアントニオ。ポスター貼りの仕事だがそれには自転車が必須。なんとか質屋から買い戻し意気揚々と初出勤の日。仕事中に自転車を盗まれてしまうことで物語が転がりだします。
マクガフィンというものについて。
ヒッチコックなどがその定義を普及させたマクガフィンとは、登場人物の行動や物語を進ませるために用いられる物/こと。
たとえば、ルパンが狙うお宝やなんかがそう。
ストーリーのきっかけであって、それ自体が常にでかでかと主張するわけではない。
この映画でいうと、自転車でしょうか。
自転車をきっかけに、困窮しているこの当時の社会を映しとってゆきます。
市井の人たちの貧しい様子や、藁にもすがる思いで占いに頼ったり、労働者の団結集会を開く者、仕事にあぶれて犯罪に手を染めてしまう者。
そういった群像劇が、見事に描かれています。
アントニオの息子のブルーノがわたしは好きで、まだ6歳くらいの少年がしっかりと父親を手伝い支えます。ブルーノの微妙な表情が素晴らしく、ラストシーンでの表情もたまりません。
ブルーノの父親を見上げる眼差しが不安げで、でも励ますようであって、父親の手を握ってあげたりと、観ていて胸がぎゅっとなります。
監督 ヴィットリオ・デ・シーカ
制作国 イタリア
日本公開 1950年
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