見出し画像

「アルファヴィル」

コードナンバー003レミー・コーションは、人工知能アルファ60に管理されている都市アルファヴィルに潜入。ブラウン教授が作り上げたこの街は、感情を制御され自由な思想が許されていない街でした。レミーの体験を通して、アルファヴィルを覗いてゆきます。

この作品を知ったきっかけは、村上春樹さんの著書である「アフターダーク」に登場するラブホテルのアルファヴィル。
音の響きが気に入っていたのと、感情の自由を奪われた都市の名前をラブホテルに付したというのが面白くて、そこからいつか観てみたいと願っていた映画でした。

私の好きなディストピア系の内容で、涙を流したり笑ったりすることが禁じられている都市。感情の発露があったり、こんなことはおかしいという意見を持とうものなら、処刑は免れません。

こう書くと物騒ですが、処刑のシーンがお気に入りのひとつで、プールを舞台に行われるそれは、最初は処刑だと気がつかなかったくらいに風変わり。

ポスターになっている場面も、二人がおそらくは愛し合っている場面なのですが肌を見せたりなどの見慣れた演出ではなく奇抜さがあり素敵です。

言葉を辞書から削り、言葉を制限することで感情や思想を限定してしまうやり方は、ジョージ・オーウェルの「一九八四年」に登場するニュースピークを思い出します。

アルファ60という都市を最適にコントロールする為のコンピューターを作り上げたブラウン教授。確かに感情をセーブすることで起こり得なくなる所業などはあるでしょうが、それが極端にコントールされてしまうと生きているとは言えなくなってゆくのでしょう。視線がグレーになった人々の都市アルファヴィル。

はたして、映画の中だけのことなのか、未来のことなのか、アルファ60は現代のなにと置き換えることができるのかと考える。

監督 ジャン=リュック・ゴダール
制作国 フランス/イタリア
日本公開 1970

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?