「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」
病に侵された母と、兄の三人で暮らす少年イングマル。母をゆっくり療養させるためにイングマルは田舎のおじさんの家に預けられます。そこでの少年の暮らしと成長、そして悲しみや淋しさを紛らわせてくれるユーモラスな出逢いの数々の物語。
イングマルは淋しいだなんて一言も言いませんが、代わりに“僕はあの人よりずっとましだ“と一人語りをし、誰かと比べることで自分はずっとましなのだからと言い聞かせます。
その誰かは人だけではなくて、スプートニクに乗せられて宇宙へ飛ばされたライカ犬のことに及びます。ライカ犬の存在を私が知ったのは村上春樹さんの「スプートニクの恋人」を読んだ時だったのを覚えています。なんて酷いことをするんだろうと苦しくなったことを今でも覚えています。
母に甘えたい盛りのイングマルにとって、母と離されるのは本当に淋しく辛いことだと思います。
けれど移り住んだ村のおじさん夫婦や、村の子どもたち、屋根から降りてこないおじいちゃん、芸術家や発明家、ガラス工場の人びとがイングマルの暮らしに面白さを絶えず与えます。
母との暮らしが世界の全部のようだった少年の世界が広がり、社会の中でたくさんの人と関わり、時にぶつかったりしながらも繋がってゆきます。
小さい頃、大人はなんでも出来ると思っていました。でもそうじゃなくて、大人も間違うし、なんでもはできないと次第に気がつきました。イングマルも大人のダメさやおかしさを知ってゆきます。
彼が劇的にではなく少しずつ成長してゆくのをあったかく描いた作品。
ポスターにイングマルと写っているのは、劇中に登場するイングマルの飼い犬であるシッカン。もじゃもじゃしていてかわいいんです。
監督 ラッセ・ハルストレム
制作国 スウェーデン
日本公開 1988年
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