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「息もできない」

サンフンは子どもの頃の出来事がきっかけになって、大人になった今はヤクザのような暮らしを送っていました。取り立てに行けば人を殴るのは当たり前ですし、後輩たちにもすぐ手をあげます。ある日、通りすがりの女子高生のヨニと口論になったことで二人は出会い、不思議な交流が始まります。

ヨニも、家庭に問題を抱えていて気が滅入るどころではない毎日を過ごしています。

ヨニは思ったことを真っ直ぐに言い放ち、サンフンもそれに応戦しますが、言い負かされてしまったり、喧嘩しながらも友だちのような関係になってゆきます。

二人とも苦しみながらもがきながら生きていて、けれど二人でいるときは、笑ったり泣くことだってありました。二人で過ごす時間が、大きく息をつける場所にいつのまにかなっていたのだと思います。

子どもの頃からの体験でペコペコにつぶれてしまっていたサンフンの心。まるいボールがひしゃげてしまっているのを思い起こさせます。そのボールがあたたかいお湯に入りその本来の優しいまるさを取り戻してゆきます。

サンフンも根はまるいのです。
けれど、たくさんの暴力的な力が外から加わって潰れてしまっているのだと感じました。

そんなサンフンを受け止めるヨニの心が母のようでもあり、その心の大きさに驚かされ、そして胸がひりひりと苦しくなります。

人を傷つける行為を擁護はできませんが、傷つける側も傷を負っているのだと改めて考えさせられる作品です。

監督 ヤン・イクチュン
制作国 韓国
日本公開 2010

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