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叶いもしない夢を見て


いつかMステの常連アーティストになる

いつか東京ドームでライブをする

いつか国民的アーティストになる

いつか、いつか、いつか。


私たちは子供の頃、仮面ライダーやプリキュアになりたかったのと同じように、大人になっても夢を見る。


「魔法使いになりたい」

無邪気に笑う小さな子供を見て、こんな時代もあったねなんて優しく微笑むようになる。


大人になるとは、叶わない夢を知ることでもある。


引き出しの中からどんな時代にも行けるとか

ある日突然、魔法学校から招待がくるとか

悪の勢力と戦うために、とんでもない冒険をはじめるとか

無垢に信じることができていた世界は、次第に小さくなっていく。


大企業に就職するために、いい大学に行かなくちゃ

スポーツ選手になるには小さい頃から始めていなきゃ間に合わなかったよね

医者になりたいけど、パイロットになりたいけど…

金銭的な理由から才能、身体的な問題まで、様々な理由をつけて、夢を見ることをやめてしまう。


私だって歌手を夢見た15の頃からは、音楽業界の厳しさも、自分の才能の限界も、随分と詳しくなってしまった。

いつしか、「歌手になれるなんて思っていないんだけどね、一応ね、」なんて、心にもない枕詞をつけて、誰にでもない自分に言い訳するようになっていた。


顔がよければ、才能があれば、もっと声がよかったら、もっと若い時から始めていれば。

ああしたらよかったなあ、こうすればよかったなあなんて、数えだしたらきりがない。


でもそんな世界で、私はまだ、夢を見ている。

叶わないと言われる、難しい夢を。



大学に入り、ただ無邪気に夢を語るだけではいられなくなって

就職を考える同級生達を間近で見て

年齢の限界なんて言葉も聞こえてきた。


そうやって、あれこれ理由をつけて、やりたくない理由を探して、辞めてもいい言い訳をどうにか見つけたけれど、それでも残ったのは

「歌いたい」

ただそれだけだった。

素晴らしいアーティストになれる道は険しいかもしれないけれど、

もしかしたら一生芽が出ないかもしれないけれど、

歌のない自分を想像したら、怖くて怖くてたまらなかった。

誰かに歌を届けようとしない私なんて、私じゃなかった。


これほどまでに、自分が歌いたいと思っていたことを、諦めようとして初めて知った。


世の中にいる素敵なアーティスト達みたいな

世界平和のために

心の中の想いのために

誰かのために

そんな大それたことではなく、歌を通して自分が呼吸できているから、私は歌っているんだと思う。


だからこそ、そんな私についてきてくれて、好きだと言ってくれるファンの人達を私は眩しいほど、誇らしく、ありがたいと思う。

本当に、心から。

歌いたい、と言えるのは、聞いてくれる人がいるから。

こんな片隅で歌っている私を見つけてくれて、本当にありがとう。


貴方達がいて初めて、私は叶わない夢を、叶わないとされる夢を、追うことができている。


SNSが当たり前になり、様々な形で、やりたいことが実現できるこの世の中で

踏み切ることができていない人が、まだ多くいると思う。

私だって、なりたい自分になれているわけじゃないから、何一つ偉そうには言えないのだけれど


少しでもやりたいことがあるなら、そしてそれをどうにかやれる環境があるなら

一緒に追いかけてくれたらうれしい。

全力で頑張って、

うまく行かなかったら、その時考えよう。

多分今は、まだその時じゃないから。


まるで綺麗事、されど綺麗事。

後悔するなら一緒に、"叶わない"夢を叶える道を進みませんか。


やるならもちろん、捨てるものは何もない、全力の覚悟で。




ではまた、楽しい金曜の夜をね。




菜摘





音楽活動の足しになります、執筆活動の気合いになります、よかったら…!