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本当に逃げなくてはいけない人たちにどうやって避難してもらう?-第13回だれ一人取り残さない防災研究会(ゲスト:世界防災フォーラム代表理事・東北大学災害科学国際研究所教授 小野裕一さん)

みなさんこんにちは。チャレコミ防災チームの瀬沼です。
今回は2023年7月18日に開催した第13回のだれ一人取り残さない防災研究会の様子をお伝えしたいと思います。


だれ一人取り残さない防災研究会とは?

現在も台風や大雨などで被害を受け、復旧・復興に取り組んでいらっしゃる方が多くいらっしゃいます。災害が多い日本において、災害はいつどこで起こるかわからない、いつ自分に被害があるかもわからない状況になっています。
だれ一人取り残さない防災研究会では、災害が起こったときには日常からのつながりが重要になると考えています。
そのために、都市部の大企業や研究者の方々、地域のNPO、中間支援組織など立場の異なる方々が日常から学びあい、つながりをつくることで「もしも」の時にお互いのリソースを持ち寄れる関係性をつくること。
話を聞くだけでなく、参加するそれぞれの主体が自分たちの防災・災害支援に対しての取り組みを相談したり、仲間と組んで実際にやってみる機会にすること。を目的に開催しています。

ゲストのご紹介

今回ゲストとしてご登壇いただいたのは世界防災フォーラム代表理事・東北大学災害科学国際研究所教授でいらっしゃる小野裕一先生です。
研究会の幹事団体の一つでもある国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)さんからのご紹介でご登壇いただきました。

小野先生はJSTさんとも連携し、「最後の一人を救うコミュニティアラートシステムのモデル開発および実装」という研究をされていらっしゃいます。

今回はその研究で取り組まれた成果をもとに、本当に避難が必要な人が取り残されず避難するためには何が必要なのか?についてお話しいただきました。

「私は避難しなくても大丈夫」をなくすために

現在、災害時に大きな被害が予想される場合には行政機関から避難指示が発表されます。

しかし、災害時に行政が発表する避難指示は広範囲に及ぶ場合もあり、人々が災害を自分事として捉えられず、実際の避難行動に結び付かないことが大きな問題となっていました。
避難をするといっても小さなお子さんがいる家庭や、障害を持っている方、ご高齢の方などは避難所への避難をためらわれたり避難そのものが難しい状況にいる方も多いです。そのため、小野先生は個人や世帯単位でピンポイントに被災リスク情報を伝え、一人ひとりに合った形で避難できるような仕組みづくりを目指しています。

当日投影資料より抜粋


実はこの仕組みは、岩手県のとあるエリアで実際に行われていた取り組みに着眼点を得て取り組みを推進。専用アプリなども開発し、災害が発生した時には、アプリを利用してヘルプを出したり周囲の方々の避難状況を確認したりする機能の実装だけでなく、日常的にアプリやスマートフォンを使う訓練なども行い、より「自分事」として避難をしてもらうことを促す仕組みをつくっているとのことでした。
とはいえ、避難するかどうかは最終的には家庭の中でも意見が分かれてしまうもの。最後はコミュニケーションが重要になってくる。といったコメントも頂きました。人々の行動変容を促すためにはコミュニケーションはもちろん、メディア戦略や法整備など様々な取り組みを一体となって行うことが必要です。今後は「防災コミュニケーション学」として公衆衛生分野などの知見も参照しながら伝え方を研究していくご予定とのことです。

防災を世界中誰の手にも届ける

小野先生は世界防災フォーラムの代表理事も務められています。

世界的に見ると災害が発生した後に対応する「災害対応」が多く、「防災」という考え方はまだまだ一般的ではないとのこと。
私たち自身も備蓄をしたり避難所を確認したりといった災害に対して準備している人は多くないのかもしれません。
世界中のどんな人にとっても身近に感じてもらえるよう世界防災フォーラムとして取り組んでいらっしゃるとのことでした。

東日本大震災から10年経った沿岸部を40日かけて歩くウォークイベントを開催したり、仙台やスイスでフォーラムを開催するなど多岐にわたる活動をされていらっしゃいます。
また、今年は関東大震災から100年目ですが、世界防災フォーラムの取り組みとして、関東大震災発生当時のアメリカ大統領からの支援がなぜ日米関係が悪い中でもすぐに支援を決定されたのか、当時の日本の小中学生が送ったお礼のお手紙の調査を行うことで今後の首都直下型地震で発生した時に想定される経済的被害に対する先行事例として研究されていらっしゃるとのことでした。

ついこれからの災害にどう備えていくのか?といった視点ばかりになりがちなところを「これまでの災害やその支援から何を学び、次世代に残していくのか?」を考えることが、今後の災害が起こった際の行動の違いにも結び付いていくのではないかと感じました。
こうした視点は、build back betterとして、復興の過程に「防災」の視点を取り入れ、災害前よりもよりよい状態に戻していくにはどうしたらいいか。という復興の指針にも入っているそうです。
当時を知る人が減っていく中でどのように次の世代に伝えていくのか、何を残していけるのかを考えていくことが次の支援にもつながっていきます。

私たちの活動も災害発生直後の復旧だけでなく、長期的な地域の復興によりフォーカスするからこそ、復興過程で何を取り入れていくのかはもちろん、地域のなかに広げていくためにも、日常的な繋がりをつくっていくことの重要性を改めて感じました。

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だれ一人取り残さない防災研究会では参加者を募集しております。ご関心のある方は以下のWEBページをご覧の上、フォームからお問合せください。


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