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春の短歌集

いま君の髪を揺らしたその風は
かつてギリシャの詩を聞いていた

春風にめくられ進む物語
少女は駆ける 紙上の荒野を

教室の窓辺の君がはにかめば
知らない風は花を散らして

うそ、と君が笑えば真白のカーテン
やさしき春のひかりをたたえて

ゆきが降る、なんて君がうそぶけば
瞳に映る 桜のふぶき

水墨のような山あい 咲く花の
夢幻のごとし 白き春雨 

在りし日に通った坂道 学び舎の
桜の薫りは今も変わらず

年ごとに綴られ消える花の歌
それは桜の散るに同じか

歌舞伎町 ネオンが照らす夜桜の
血潮の花びら 路上に散って

花散らしビルの隙間を通る風
闇に響くは 鬼の吹く笛

嘘のよな桜の花の散る頃に
芽生える想いは蒼き葉桜

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