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詩集

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2024年6月の記事一覧

潜水艇の詩

潜水艇の詩

きみが知りたい

あたかも入水するように

薄い紙が尊い気もちを知ったかのように

変わることのない気持ちは

深いところへおちてゆく

息苦しさを知らずに

この海の暗さを知らずに

きみが知りたい

まるで底を探していつまでも着かない錨のように

ぼくはそれでも

きみが知りたい

もしも暗やみの中

ぼくの息の根が止まってしまって

ようやく底に辿りついても

そこにきみがいなくても

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浜辺の合唱団

浜辺の合唱団

息を呑む

わたしたちのメモリーズ

見えないものへ

きらめいて

口笛も

飛べない鳥のメモリーズ

足首のきず

庇って

白鳥を抱いた人

木陰で捕まった人

窓辺で飛びだった人

かなしみは

おそれを知らない

危険な露

泣きそうなほどの

やさしさを

知ることはなかった

悔やんでできた

ハーモニー

夕焼けに染まる

海に似ている

茶埜子尋子

月のおもかげ

月のおもかげ

月のおもかげひろがって

あなたの肩へとどいたら

ねむれない夜も

あたためてゆく

ギターはひかないよ

きみがいるから

きみがいるから

茶埜子尋子

銀色の詩

銀色の詩

高い音がする方へ

トキメキが足りない方へ

変わって

変わって

花のいのちも

奪ったら

明日への切符が

届くから

土星のまわりで

引き裂かれて

きみのそばで

詩を書くよ

窓のかぜを

つまみだして

茶埜子尋子

銀河のかげろう

銀河のかげろう

きみのなみだが

言霊のように

降り注いで

どうすれば生きれるかなんて

分からなくなってしまった

見たこともない

宇宙の意味を考えて

裸足のまま飛び降りる

蜃気楼はただ

美しいだけ

遠くを見つめて

傷になる

夜の星は

ぼくのものではない

そして

だれのものでも

なにも知らないのは

穢れた少女が抱えた

深い傷のような

凄惨なこと

美しさのなかで

化石になった

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草創の詩

草創の詩

青く燃える

きみの瞳のように

時代が輝きはじめている

ざわざわと震える

あの山々の連なり

時代は君を待っていた

花びらの先のように

細やかな潤いは

いずれ黒曜石の刃のような

鋭い孤独になるのだろう

時代に生きることなく

時代を攫っていけ

茶埜子尋子