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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

まごころを君に【シン・エヴァ感想】

こんにちは、とりのてばさきです。

好きなものは鶏の唐揚げです。

シン・エヴァ観賞後から心が一向に戻ってきません…笑
すっかり腑抜けてしまったと言うか、いつまでもそばに居るんだろうなと思っていた10代からの友人が旅立ってしまった様な感覚です。

前作の「Q」から指折り数えて…いやもう指バッキバキになるくらい数え過ぎて9年も待ち続けましたが終わってしまうと本当に寂しいですね。
終わらない終わらない詐欺みたいに思っていたのに!笑

夢の終わりは現実の始まり。

向き合う為に思いの丈をつらつらと書きました。あまりに長くなりましたが、自分なりにエヴァという作品をここで咀嚼して反芻して行きますので、お付き合い頂けたら幸いです。

ネタバレ全開ですので、くれぐれも未鑑賞の方はご注意下さい。

以下ネタバレ注意…………………

まごころを君に

>今回のタイトルにも使った「まごころを君に」と言えば旧劇の「END OF EVANGELION」(以下EOE) の副題「Air/まごころを君に」から来ています。(ビデオフォーマット版26話のタイトルでもあるけどまぁツッコミはさて置き)
EOEと言えば皆のトラウマが随所に挙げられるであろう旧エヴァの結末にして陰鬱さと悲劇をこれでもかとごった煮したシナリオと恐ろしく緻密な作画とでキレッキレの戦闘シーンがてんこもりな絶望のエンターテイメント作品になっています。


初めて見た時のショックは凄まじかったです…そして観終わって思ったことはまごころって何ぞ…???

誠意とは真逆のものを感じたし、ヲタクに対しての皮肉がすごい。映像や演出も、話はさっぱり分からんけど声優さんの熱演も秀逸…なのに作品に対してのぶん投げ具合がそれを上回る。
エヴァに対しての監督の破壊衝動はすごい伝わるが、これが偽りのない心って事なのか?
そもそもキャッチコピーが「だから皆死んでしまえばいいのに」でしたしね…
最後「終劇」と表示された時のあの暴投をくらった様な感覚は忘れません。一方的に終わりを叩きつけられた感が半端なかった。

そんな終わりに対してのトラウマがあったので正直シン・エヴァに関しても恐らくモヤモヤして終わるだろうと考えていました…

なのに、こんな綺麗に終わるとは。

大人になると言う事

>今回の映画はこれに尽きます。
庵野監督もだけど、キャラクター達が圧倒的に大人になってしまった。
「Q」の作中で「破」の時点より14年経ったとは言われていたけども、「シン」の公開までリアルな年数もかかったせいなのか、ありとあらゆるキャラクターが成長していました。
大人の定義は簡単に言えば成人する事だと思いますが、エヴァに登場する人物達って身体は成熟していても精神が未成熟で大人があまりにも少なかった。
ゲンドウを筆頭に、ミサトさん然り。
大人の仮面を被り、他者との交流を試みるも精神が伴わない為に上手くコミュニケーションが取れない。エヴァは作中キャラクター同士のやり取りは多々あるものの、同じ目線に立ち、真正面を向いて会話するシーンが割と少ないんですよね。

会話していても隣に並んでいる、背中に向けて、電話越しやモニター越しでは表示だったり。珍しく視線が合うかと思えば視逸らしている。
たまに真正面に向き合ったと思えば、ラッキースケベたったり、平手打ちされたりする始末…笑
「Q」で は特に顕著でWILLEクルーのシンジに対しての塩対応と言ったら無かった。そりゃコミュニケーションスキル爆高のカヲルくんの方に行ってしまうよ!笑
カヲルくんはエヴァ内でも非常に稀な他者と目線を合わせて会話するキャラクターでした。
ただし受け手(ここではシンジとします)も同じくコミュニケーション能力が高かったならばお互いの意思疎通がもっと上手く機能し、円満な世界になったかもしれませんが…そうはならないのが、エヴァの世界だよなぁ。

絶望のまま終わった「Q」から始まる「シン」前半パートは驚くほど他者とのコミュニケーションが描かれています。まさかお馴染みのキャラクター達が生存していたとは!
前半シンジはカヲルくん爆死(言い方!)のショックから旧友たちとの関わりを拒絶します。旧劇の設定であればこの時点でもうバッドエンド、人類補完計画がすぐさま発動されてしまう所でしょうが今回は周りの環境が違った。
どれだけ拒絶されても純粋にシンジと関わろうとするアヤナミ(仮称)や、14年の時を経て既に大人になってしまった旧友達は彼を見放す事なく寄り添い続けてくれます。
個人的には前半のアヤナミが大層可愛かったのですが、あの「何故なに」質問を鬼の様に受けつつ、ちゃんと逐一返してくれる元委員長に母親となったからこその優しさを感じました…。
彼等大人からの優しさを受けてシンジくんは静かに立ち直り、ようやく大人へとなる事を決意するのです。

碇ゲンドウと葛城ミサト

>後半パートでシンジは2人の親と対峙します。
1人は母親代わりとなってくれた葛城ミサト。
旧劇では母親になろうとしたものの、上手く立ち回れずに終わってしまいましたが、今作では実際の母親になった事も加わってようやくシンジの「母親」として彼の背中を押してくれます。「破」での後悔があり、「Q」でずっと悔やんでいた事、「シン」での本当の思い。別れ際のシーンは彼女の優しさが伝わってきます。あんな温かな抱擁エヴァで観たこと無いよ…
息子2人の写真を手元に母親として、大佐として最後の仕事を全うするシーンは涙腺に来るものが有ります。
もう1人は実の父親、碇ゲンドウ。
蓋を開けてしまえばこの「シン・エヴァンゲリヲン」という作品は碇ゲンドウの物語で有りました。前半パートで驚くほど大人になってしまったシンジくんはただ物語の紡ぎ手として、ゲンドウの話を聞いてくれます。
寄り道をしながら(この寄り道が個人的に物凄くシュールで笑った…ミサトさんのマンションで戦うのズルい)父親になれないままのゲンドウと対話を試みるシンジ。
かつての2人なら決して向かい合う事なんてしなかったでしょうが、大人になり、他者との関わりを恐れないシンジくんと息子と目線を合わす事が出来ない(合わせなくて良い)姿になってしまったゲンドウだからこそ実現したのだと思います。
碇ユイへのただひたすらな愛情と再会を渇望する願いはとても切ないのですが、人類を巻き添えにして願う事じゃないだろうよ!!どんだけユイ好きやねん!!クローン作っちゃうぐらい好きなんは分かるけど!!
まぁ物語の悪役は、おおよそ利己主義な理由で地球の征服を目論んだりしますし、そういう意味ではラスボスに相応しいキャラクターだったかもしれませんね。
結末まで見ると、劇場版主題歌の歌詞は恐らく彼の歌だったんだと気付きます(「桜流し」はエヴァ関係なくヒッキーが作ったらしいと聞いたけれども…だとしたら本当にすごい)

理想の親としての渚カヲルと綾波レイ

>前回の記事で割とキャラクターのカップリング論寄りな話を書いたのですが、自分なりに再度解釈し出した結論は、上記2人はシンジにとっての理想の親像だったからこそ結ばれなかったのではと考えました。
ピアノ好き、(シンジの)父さんに似ている発言等…何より最後に出てくる「渚司令」というパワーワード!笑
全てを受け入れてくれる優しい父親像(=カヲル)なんだろうな、と。
一応カヲルくん自身使徒として、人として存在していましたが、ゲンドウと向き合う前にヴンダー内に一瞬現れるカヲルくんがシンジにしか見えないイマジナリーフレンドの様だったので現実からの逃避としての父親像にも見えました。

綾波は、新劇では有りませんでしたがテレビ版でシンジが「お母さんみたいだ」と評していたので、母親像としていた所は少なからずあったと考えます。まぁ味噌汁をあんな炊き出しの鍋いっぱい作る母親どないやねん!!と思わなくもないが、息子と父親の蟠りを解消すべく食事会を画策したり、辛い目に遭わせない(エヴァに乗せない)為に奮闘していた姿は誰よりも母親していたんじゃないでしょうか。
最後に2人それぞれと別れる場面でカヲルくんは涙を流し、綾波が目を細めて笑うのがとても対照的で印象深く残りました。あんなにも2人が本心から感情を表す様なシーンがあるなんてな、感無量。

想いを伝え、進む

>今回の映画はお互いの想いをはっきりと伝える事がとても意味を成しました。サクラやスミレ、ゲンドウ。決してシンジにとって好意的な想いばかりでは無かったけれど伝える事でそれぞれ前進する事ができました。特にアスカ。
式波シリーズというクローン人間だと言う事が発覚し、孤独の理由やケンスケとの関係性など最終章で新事実が色々と発覚しましたが、想いを精算する事で過去の呪縛からようやく解放された様でした。お弁当を作ってくれた時に好きだった事、そして惣流の時の想いもようやくシンジに伝わりました。
何よりEOE最後の絶望のシーンが、少しでも報われる結果になったのは本当に嬉しかった。
個人的には2人生き残ったあの結末がアダムとイヴの様で最悪な状態にせよ、心に残ってはいたので少し残念には思いますが。
結ばれる事がお互い幸せとは限らないしね。



大きなカブ

>エヴァを観てホッとして帰る日が来ようとは思いもしませんでした。
少し穿った見方をすると「家族を作れ」が全面的に押し出された作品になっていた気もしますが笑それでも旧劇からの続きからと考えると、登場人物達がやっと報われたシナリオだったと思います。制作に関わられたあらゆる方々本当にお疲れ様でした。やっと作品から「まごころ」を感じた終わりでした。

立派なカブを育てて下さって有難うございました。またカブを味わう為に映画館へ向かいます。



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