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C24生意気スペイン人とチームを組む

着いた先では、すでに何人かの農夫が作業をしていました。「トーマス!ちょっと来てくれ。」というと、作業している中から初老の男性が私たちの方に近づいてきました。「トーマス、今日の作業で使ってやってくれ。イキオとジェームスだ。」と私の肩を叩きながら、その作業主任に私たちを紹介しました。「イキオ、ジェームス、彼はここの主任でトーマスだ。今日は彼の指示で作業をしてくれ。」軽く私たちに会釈して「オーカイ、ボス。じゃあ作業を一緒に進めるように段取りするよ。」と手短に会話すると私たちについてくるようにとアゴで合図しました。

その作業場では、送水用の金属製のパイプを二人一組で運ぶ作業をしていました。トーマス主任は私たちに「お前ら二人でこのパイプを一本ずつトラックの荷台に積んでくれ」ということになりました。概ね8人が、長さ10m程のパイプを手前から順番に二人で持ってトラックの荷台で待っている作業者に渡します。荷台の作業者は奥の方から順番に詰めながら積み込み作業をしているようです。「じゃあやってみろ。」ということで、私とジェームスはパイプの両端に立ってパイプを持ちあげようとしました。他の作業者がトラックに近い側から持っているので私もそれにならって手前のパイプを持ち上げました。ところがジェームスは全く適当にこちらに気にすることもなく適当なパイプに手をやって持ち上げました。もちろん私とジェームスが持ち上げたパイプは違っているので、パイプが互い違いに持ち上がったことになります。

私は思わず「ばか!」と日本語で言った後「みんなトラックに近い側から順に積み込んでいるのだから、お前にとって一番右端のパイプから持ち上げるんだよ。」と言いました。不届きにもジェームスは「適当でいいじゃないか、イキオ、俺の持っているパイプをお前が持ちかえればいい。」と言い、私が持っているパイプを降ろし、彼が持っているパイプを持てと主張するではありませんか。「みんな、順序良くトラック側のパイプから持っているのだから、そのパターンを守れ。」と言い返すと、生意気にも一週間先輩の私に対して「いやだ。イキオがボクの持っているパイプを持ってよ。」といきなり口論となりました。

空気の読めない奴で、観察力のない奴と憤慨しながらも、他の作業者と同じルールで作業しないと、私以外の作業者と組む事になった時、また同じことになるだろうと思ったので、「ジェームス!他の作業者と同じやり方でやらないと作業がスムーズに進まない」と少し語気を強めて言い返しました。横で見ていたトーマス主任が、「そうだ、バカ!ジェームス、お前はイキオが言うように、トラックに一番近いパイプから持つんだよ!」と注意されました。他の作業者も「そうだ、イキオのようにやれ」と責められて、しぶしぶとふくれっ面をしながら、自分が持ち上げたパイプを降ろして、私が持っている一番右端のパイプを持ち直しました。

へぇー、日本語の「バカ」という言葉は世界標準で通じるのだなと感心しながら、これは使い方を気をつけないと日本語が通じないからと言って、気を抜いてバカとつぶやけないなとも思いました。空気の読めないジェームスはのろのろと作業をします。先ほどの注意されたことを根に持っているのか、あるいはスペイン育ちのぼっちゃんは頭が悪いのか、観察力がないのか働くことが嫌いなのか、いずれにしてもチームプレイにはちっともマッチングしない人材であることは明らかでした。他の作業員も同じように感じているようで、作業が進むにつれてジェームスへの風当たりは強くなっていきました。それに反して、ダメなジェームスと比べれば、キビキビと作業する私への評価は作業するごとに受け入れられていき、他の作業員も気軽に「イキオ、もう少し奥に」とか、「イキオあと10本積んだら、少しトラックを移動するから気をつけろ。」とか指示をするようになりました。ジェームスは他の作業員から半分無視されるようになり、ますます肩身が狭くなってしまいました。それはそうです。履いているジーンズにちょっとでも泥が付くと一生懸命汚れを取ろうとします。その間、流れ作業でやっている仕事なので、他の作業員の仕事も止まってしまいます。「そんな汚れが付くのが気になるようなジーンズなんか履いてくるなよな!」などと内心イラついていましたたが、他の作業員も同じようで「急げ急げ!」と追い立てられて怒鳴られました。その度に私も作業を止めなければならないので、半分呆れて、半分あきらめ10時のティータイムまで作業は続きました。

文化や慣習が違う同士の友情形成について

異文化間で友情を築くためには、いくつかの心得が重要です。まず、理解と尊重です。異なる文化や背景を持つ相手に対して、彼らの価値観や習慣を理解し、尊重する姿勢が大切です。これにより、相手も自分の文化を尊重してくれると感じ、信頼関係が築かれます。

次に、コミュニケーションです。言語の壁がある場合でも、努力してコミュニケーションを取ることが重要です。ジェスチャーや絵、簡単な単語を使って意思疎通を図り、相手との距離を縮めることができます。

また、柔軟性も必要です。異なる文化や習慣に対して柔軟に対応し、自分の価値観を押し付けず、相手の考え方を受け入れる姿勢が求められます。

最後に、共通の経験や活動を通じて友情を深めることが効果的です。一緒に何かを成し遂げたり、楽しんだりすることで、自然と絆が深まります。異文化間の友情は時間と努力が必要ですが、これらの心得を持って接することで、強い友情を築くことができます。

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