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パイナップル・ドリーム

今から3年ほど前。2020年の春。新型コロナの感染症が流行り始めたころのこと。台湾パイナップルを購入して欲しいといった何かの呼びかけがあり、台湾パイナップルを買ってみた。

完熟した台湾パイナップルは確かに美味しかった。

けれども、いつものパイナップルより割高に思えて、上の葉を捨てることがモッタイナイと感じられた。そこで、葉っぱの部分を育ててみようと思い立ったのだ。

最初は、水栽培からスタートした。それほどヤル気いっぱいだったわけではないため、なんとなくそのまま放置して、知らぬ間に枯れてしまいそうなくらいの心細いスタートだった。



結局、2年以上も水だけで育てられたパイナップルの葉だったが、窓際で細々と生き延びていたので、土に植えることにした。

他の目的で買っていた水苔があったので、水苔で丁寧に根を巻いてから土に植えた。2022年夏の終わりのことだ。

そして、冬を迎える頃、これまでの雑な扱いを詫びる気持ちで、ミニ温室を買った。

モッタイナイから始まったパイナップル栽培だったが妙な親心のようなものが私の中に芽生えていた。遅まきながらエンジンがかかったのだ。



温室の中で冬を越したものの、パイナップルの育ち具合は今一つだった。

葉は黄色く変色していたが、根が枯れている様子ではない。だから私は世話をした。

とはいっても、水を与えて、日に当てて、ちょっとだけ気を配る。その程度のことではあったが、これまで以上に心にとめて夏を過ごしたのだ。

しかし、葉は黄色いまま。一向に元気になる様子はなかった。でも、土に近いところは妙に青々としていた。

「生きたい!」とパイナップルが叫んでいるようだった。



今年の暑い夏が終わりに近づいてきて。

パイナップルの元気を取り戻すために、植え替えをしようかと思い立った。改めてゆっくり観察してみると、脇芽が出ていることに気が付いた。

それが脇芽と確信が持てるまでは、本当に脇芽なのかと、半信半疑だったが。日に日に確信が持てるようになった。これは紛れもなく脇芽である。

そして、これを新しい株として育てていけることを知った。うまくいくかは分からないが、今、挑戦に向けたワクワクに満たされている。



パイナップルの脇芽を見ていると、熱い気持ちがこみ上げてくるのを感じる。

「こんなことが起きるもんなんだな」

という、不思議な生命現象に対する感嘆の気持ちだ。

パイナップル・ドリーム。

「いつか実が成る夢」を見せてくれる。

そんな日は来ないかもしれないが、そんな日が来ればいいなという期待を胸に、これからも大切に育てていこう。