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主人公エリーズと同じバレエダンサーの孤独と、それを救ってくれた一言とは・・・。上野水香さん(東京バレエ団のゲスト・プリンシパル)が大絶賛!映画『ダンサー イン Paris』イベントレポート

9 月15 日(金)より、セドリック・クラピッシュ監督最新作の映画『ダンサー イン Paris』が、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下、シネ・リーブル池袋ほか全国順次公開いたします。

この度、先行一般試写会が実施され、上映後のトークイベントに東京バレエ団のゲスト・プリンシパルである上野水香さんが登壇。
日本のバレエ界を20 年以上に渡ってトップランナーとして牽引し、日本人で唯一、モーリス・ベジャール振付の「ボレロ」を踊ることを許された女性ダンサーならではの、バレエ愛に満ちた映画鑑賞のポイントやご自身の半生も含めてお話いただきました。


「若い頃はよく分からない世界にいる人のような扱いを受けて孤独を感じました」

本作はパリ・オペラ座バレエ団でエトワールをめざす主人公のエリーズが、怪我をきっかけに第二の人生を歩み出すといったストーリー。エリーズと同様に幼少期からバレエ一筋の日々を送ってきた上野は「エリーズに乗り移ったような、そんな感覚」で映画を観たと絶賛。
ダンサーとして共感するポイントを聞かれると「ある意味で孤独を感じるところ。一般の方からすると、バレエという世界に対してどこか距離を置いてしまうところがあるようで、もちろん好きだから頑張れて、その気持ちが一番強いからこそ今もこうして進んでこられたと思うけれど、若い頃はよく分からない世界にいる人のような扱いを受けて孤独を感じました」と、ダンサーの孤独な心境を告白した。

映画『ダンサー イン Paris』

その孤独から救ってくれた言葉や経験などがあるか聞かれると、「30 代前半には引退を考えたことがあって、退団届まで出しました。これから先、良い未来が見えないからやめようと。ちょうどその時、偉大なバレエダンサーのウラジミール・マラーホフさんが日本にいらしていて、その話しをしたら『君はやめたら駄目だ』と言われ、でも私は『自信も無いし、自分のことが信じられないから』と答えると、彼は『自分が信じられないなら僕を信じなさい』と言われ…その一言が今でもとても印象に残っています」とダンサー同士の少ない言葉のなかに宿る、熱い交流に救われたエピソードを披露。

上野水香さん
Photo : Mitsuhiro Yoshida

主人公のエリーズの怪我について聞かれると「怪我って、身体が休憩したがっているところで起きる。でも不思議で、踊っている時はもう辛くてしんどくて休みたくて、でもいざ怪我をするとその瞬間からすぐにでも踊りたい気持ちになるんですね。わたしの場合は怪我の3 ヶ月後に舞台が決まっていたので、まだ骨がついていないぐらいから踊っていました。治っていく時って、割と前向きだったりするんですね。治療中に急にカルシウムを摂取したり規則正しい生活になったり」と、信じられないほどストイックな内容にも関わらず観客席からも自然に笑いが起きる。

映画『ダンサー イン Paris』

本作は、冒頭15 分間『ラ・バヤデール』の舞台と舞台裏を台詞無しで一気に見せる。自身のレパートリーとしても本当に大事な作品だという『ラ・バヤデール』の15 分間について「舞台裏の緊張感だったり、本番前にざわつく
ようなことが起こったり、すごくリアル。オペラ座でバレエを撮っているクラピッシュ監督は本当にバレエの世界を分かっている方
」と大絶賛。
特にそれが顕著なシーンとして、街中でラ・バヤデールのコール・ド(群舞)が出てくるシーンを挙げる。「ラ・バヤデールでのコール・ドの意味と、本作の主人公から見たコール・ドの意味を重ねて観ると、バレエを感じられる」とお墨付き。

映画『ダンサー イン Paris』

劇中でエリーズが踊るホフェッシュ・シェクターの『ポリティカル・マザー ザ・コレオグラファーズ・カット』については「生物の本能だったり、自然の流れだったり、そういったものを動きにしたらこうなるんだよ、というような。自然界の全てを表現しているような壮大なイメージ」と、コンテンポラリーダンスの舞台作品としての面白さも楽しめることを力説。
映画を観終わったあとの爽やかさも素晴らしい。気付いたら感動していて、全くわざとらしさが無い。全員がハッピーで素晴らしい作品」と声を弾ませた。

上野水香さん
Photo : Mitsuhiro Yoshida

東京バレエ団で20 年間トップダンサーとして活躍し、今年あらたにゲスト・プリンシパルになられた上野水香さん。今後の夢や展望などについて問われると「具体的なものは無いけど、都度、全力で自分の目の前のことをやる。それが自分らしさに繋がると思って。明日がわからないからこそ120%の力でやっていきたい」と力強く語った。


【『ダンサー イン Paris』 9/15(金)より全国順次公開】

パリ・オペラ座バレエ団で、エトワールをめざす主人公のエリーズ。幼少期からバレエ一筋の日々を送ってきた彼女だったが、夢の実現を目前に恋人の裏切りから心乱れ、本番中に足首を負傷。医師から踊れなくなる可能性を告げられる。踊ることを半ば諦め、新しい生き方を模索する失意のエリーズだったが、そんななか料理のアシスタント係の仕事で訪れたブルターニュで、今を時めく注目のダンスカンパニーと出会う。これまでのバレエとは違う、独創的なコンテンポラリーダンスが生み出される過程を目撃し、やがて誘われるまま練習に参加したエリーズは、未知なるダンスを踊る喜びと新たな自分を発見していくのだった。

全てが本物のリアル・ダンス・ムービー!


本作の主役のエリーズを演じるのは、パリ・オペラ座バレエのプルミエール・ダンスーズで、クラシックとコンテンポラリーを自在に行き来するマリオン・バルボー。ダンスシーンに一切のスタントを使わないと決意したクラピッシュ監督が、映画初出演にも拘らず主演に抜擢した。エリーズが出会うダンスカンパニーの主宰者に、コンテンポラリー界の奇才として名を馳せるホフェッシュ・シェクターが本人役で出演。代表作「ポリティカル・マザー ザ・コレオグラファーズ・カット」を振り付ける過程にカメラが密着。監督は『スパニッシュ・アパートメント』、『パリのどこかで、あなたと』など、フランスで最も愛される監督の一人となったセドリック・クラピッシ
ュ監督。思春期の頃から一観客としてダンスへの情熱を燃やし続け、いまやパリ・オペラ座からの依頼で定期的にステージも撮影している巨匠が20 年来の構想を実現させた。

映画『ダンサー イン Paris』公式サイト (dancerinparis.com)

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