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絵描きの少年と自由人のお話

 今の医療ではどうにも出来ないのだと、医師は言った。
「息子には明るい将来が待っているんです。どうか、どうかできる限りの治療をしてください!」
 必死に医師へすがる両親の姿を見て、私の心はあっという間に冷めていった。
「もういいよ、二人とも。だから先生、はっきり言ってください。私の……いえ、私に残された時間は、あとどれくらいなんですか?」

 目的地へ到着するなり、私は深く息を吸い込んだ。
 潮の香りと波の音、ビーチでにぎわう人々の楽しそうな笑顔。それらすべてを一身に感じ、私は深く息をつく。
「ああ、ここが南ディストピアか」
 幼い頃から、私のずっと憧れてきた街だった。今でこそリゾート地として開発されているが、幼い頃に聞かされた”芸術家の街”の面影も、そこかしこに残っている。
 私は物心がついたときにはすでに家庭教師がいて、小学校へあがってからは勉強漬けの毎日だった。少しでも成績が落ちると、かならず父親に叱られた。そんな風に自分の時間というものを一切与えられなかった私は、難しいことを考えずにのんびりと、好きなように暮らす生き方に憧れていた。
 ビーチから離れて住宅街へ入ると、石畳の道が見えてきた。階段をあがっていき、メモに書かれた住所を探す。
 もう秋だというのに陽射しは夏のように暑く、じわりじわりと汗がにじんできた。
 住宅街を奥まで行って、私は右手に広場の見えてくることに気がついた。
 心の向くままそちらへ向かうと、風がふわっと吹き抜けて私の短い髪の毛を揺らした。
「あ……」
 振り返ると遠くの方に海が見えた。まっすぐ続いた坂道の先に青々とした海が広がっている。
「なんて美しい景色だろう」
 私はしばらくそこに立ちつくしていた。

 屋敷は想像していたよりも大きかった。
 私の祖父がその昔、伯父に買い与えたという別荘なのだが、十年以上も使われておらず、手放そうかどうか迷っていたという。そんな折、私が南ディストピアへ行きたいと言ったため、これからしばらくの間、この別荘は私のものとなった。
「お待ちしておりました、ホヴィス坊ちゃま」
 屋敷の管理を任されている中年の女性使用人は、そう言って、深々と頭を下げた。
 私は少し戸惑いながらも、にこりと笑みを返す。
「私ももう大人なので、坊ちゃまと呼ばれるのはちょっと……」
「それでは、ホヴィス様でよろしいでしょうか?」
「ああ、それで頼むよ。私としては、もう少しくだけてもらってもかまわないんだけどね」
 日に焼けて肌の黄色くなった彼女は目を丸くし、それからにっこりと微笑んだ。
「分かりました。ですが、私はあくまでも使用人です。困ったことがあれば、何なりとお申し付けください」
 彼女の中には、色濃くユーティ族の血が流れているようだった。上下関係やしきたりにうるさいのがその証拠だ。
 無論、私もユーティ族である。白い肌に金色の髪、青く澄んだ瞳は平和の女神ユーティからの賜りものだと言われている。しかし、神話に詳しくもなければ、興味もない私には、そんなことどうでも良かった。
 ただ思うのは、ユーティ族は平和の意味を履き違えているのではないか、ということだ。自分たちこそが正しいのだと言い張って、他国や他民族との間でいさかいを起こしては、その度に平和の意味をねじ曲げてきた。私には、どうしたってそう思えてならないのだ。

 翌日、女性使用人の作ってくれた朝食を一人で食べた。決してまずくはなかったが、何かが物足りなかった。
 その後、私は外へ出て街を散策した。医師や両親から身体を大事にしろと言われていたが、歩くだけなら問題はない。
 あいかわらず太陽は歩道を照りつけ、すれ違う人々の顔は活気で満ちている。
 昨日見つけた広場では幼い子どもたちが駆け回ったり、ベンチに座っておしゃべりを楽しむ女性たちの姿があった。
 帰り道にまた寄るつもりで、私は広場を通り過ぎる。すると、何やら大きな荷物を抱えた少年が前方からやってきて、私とすれ違った。
 かすかに絵の具の匂いがして、この街にもまだ絵描きがいるのだなと、嬉しく思った。
 住宅街を抜け、海辺の道を自分の歩調で歩く。私はいつも誰かの後について歩いていたが、同時にいつも誰かに追われているような感覚を覚えていた。しかし今、私の周りには誰もいない。私は一人で、誰の指示を受けることもなく歩いている。――病気にならなかったら、私は一生こんな風に過ごすこともなかったのだろうかと、少し皮肉に思う。
 あてもなく散策を続けていると、だんだん空に雲が増えてきた。先ほどまで暖かかった気温はぐっと下がったように感じられ、私はどこか屋内に入ろうと考えた。時間もちょうど昼時だし、カフェか何かで軽食を取ろう。
 さまざまな店の並ぶ通りへ入り、すぐに席へ着けそうなカフェを探す。リゾート地というだけあって、どこも観光客でいっぱいだ。
 店の外装も明るい色が多く使用され、この前まで住んでいた都会とはまったく違った趣だ。
 ふと目に付いた角を曲がると、なかなか雰囲気の良さそうなカフェを見つけた。私はそこへ入ることにした。

「いらっしゃいませ。一名様ですか?」
「あ、ああ」
 そういえば一人で外食をするのは初めてだ。私はドキドキと胸を高鳴らせながら、店員に案内されてカウンター席へと座る。
 メニューはさまざまあり、普通のカフェと大して変わらない。しかし、一つだけ大きく違っていることに私は気づいていた。
 適当に軽食と飲み物を注文して、私は店内を見回した。
 壁のいたるところに大小さまざまな絵が飾られている。作風も違うため、何人もの画家の作品があるのだと見て取れた。
「お兄さん、このお店は初めて?」
 と、年若い黒髪の店員に声をかけられてはっとした。
「ああ。昨日、この街に引っ越してきたばかりなんだ」
「ふぅん。もしかしてお兄さん、絵画が好きなの? このお店はもう三十年近くやっててね、その頃からずっと、いろんな画家の絵を飾ってきたの」
 どこかあどけない口調で話す彼女に、私は思わず質問をしていた。
「じっくり見て回ってもいいかい?」
「ええ、もちろん。他のお客様の迷惑にならないようにね」
 いい店を見つけた。
 私は食事を終えるなり、絵画のひとつひとつを見て回った。この街をモチーフにしたものや誰かの肖像画、抽象画に神話のワンシーンを描いた作品などもある。
 まるで美術館に来たみたいで、私の胸は心地良く高鳴った。

 店を出る頃には天候も回復し、私はまた散策をしながら屋敷へと戻った。
 広場から子どもの声は聞こえなくなっていたが、行きにすれ違ったと思しき少年画家が、地面に座り込んで絵を描いていた。

「すっかり常連になっちゃったね。今時、あなたみたいな人って珍しいから嬉しいな」
 と、店員の彼女は言った。
 この街へ来て十日が経つ頃だった。私は二日に一度、カフェで昼食をとるようになっていた。
「そういえば、ずっと聞きたかったんだけど、どうして一人でこの街に?」
 首をかしげてたずねる彼女を見て、私は少しあいまいな表情を浮かべた。
「ようやく自分の人生を、歩みだせるようになったから……かな」
「だけど、ホヴィスは仕事してないんでしょ? あたしには、長い休暇を楽しんでいるようにしか見えないなぁ」
「はは。そうだね、これは長い休暇なのかもしれない。私にやっと与えられた、自由という名のバカンスなのかも」
 彼女は首をかしげたままだったが、私にはそれがおかしくてまた笑ってしまった。
「まぁ、いいや。あなたが変わった人だということは分かったから」
 そう言って彼女は私のそばを離れると、仕事へ戻っていった。

 その日は少し帰りが遅くなって、街はすっかり夕焼けの色に染めあげられていた。
 あまりにも見事な夕焼けだったため、私は広場へ寄ってあの景色をながめようと思った。
 きっと誰もいないだろうと予想していたのだが、広場には少年がいた。いつものように地面へ座り込み、道具を周りに広げて無心で絵を描いている。
 しかし、私は彼がどんな絵を描いているのか知らなかった。彼の絵を無性に見たくなって、その後ろへと回りこむ。
 そこから見えるのは、まっすぐに続いた道の先に広がる海だ。今は美しい橙色にきらめいて、この街の穏やかさを映し出している。
 そして私の目の前にいる少年画家は、そうした景色を荒々しくも繊細なタッチで描いていた。
「……君、いつもここで絵を描いているよね」
 少年ははっとして私を見上げると、人の好い笑みを見せた。
「はい。俺、有名な画家になるのが夢なんです」
 なるほど、少年の身につけた衣装はあちこちがすりきれてぼろぼろだ。それなのに道具だけは種類がそろっているところを見ると、彼の絵に対する熱意が分かる。
「アトリエはないのかい?」
「ええ、ありません。俺はまだまだ駆け出しですし、ちっとも絵が売れないので」
 と、少年は正直に返事をする。
 私は彼のそうした素直さを気に入って、にこりと微笑みを浮かべた。
「それなら、私の屋敷へ来ないか? 中でも一番広い部屋をアトリエとして貸し出そう」
「え?」
「私はホヴィス・ディシース。十日ほど前にこの街へ越してきたんだが、一人で住むには広すぎる屋敷に暮らしていてね。使用人とはどうも馬が合わないし、一人で食事をするのも寂しいと思っていたんだ」
 彼は金色の瞳を丸くして、ぽかんと口を開けていた。
「だから朝と夜、私と一緒に食事をしてくれるなら、金はいっさい取らない。この条件でどうだい?」
「……あ、ありがとうございますっ」
 彼は勢いよく立ちあがると、私の白い手をとった。
「俺はヒロンです。ヒロン・タレント。本当に、本当にありがとうございます!」
 ぼさぼさの茶色い髪を風に揺らしながら、カコット族の少年は笑った。

 ヒロンを連れて帰ると、使用人に嫌な顔をされた。
「この屋敷で一番広い部屋を彼に貸すことにしたんだ。食事もこれからは彼と二人でとる」
 じーっと観察するように彼女はヒロンをながめ、そして言った。
「かしこまりました」
 一言だけだった。彼を客人として扱う様子は微塵もなく、仕方がないので私が屋敷の中を案内することにした。
「さあ、ヒロン。私が屋敷を案内するから、ついておいで」
「あ、はいっ」
 ユーティ族はなんてめんどくさい民族なのだろう。私はもちろん例外だが、多くのユーティ族は他の民族を見下している。自分たちの方が優れているのだと思い込んでおり、彼のようなカコット族や黒い肌のディジー族をないがしろにする。それこそが平和を乱す原因であると、何故誰も気がつかないのだろう。
 ……いや、もし気付きながら平和を乱しているのだとしたら、この世界はなんて不公平に作られていることだろう。

「ベッドで眠るのなんて久しぶりで、昨夜はぐっすり眠れました。ありがとうございます」
「そうか、それは良かった。そう言ってもらえると私も嬉しいよ」
 二人でとる初めての朝食は、今までに比べて手抜きをされていたが、ヒロンはとてもおいしそうに食べた。それを見ていたら、私もおいしいと思えるようになった。二人で食べる食事なら、きっとどんなものでもおいしくなる。そんなことまで考えた。
 食事の後、彼はさっそくアトリエで絵を描き始めた。
「最初は青い海を描いていたんですけど、夕暮れの景色の方が綺麗なことに気づいて描き直したんです。そうしたら、ものすごく時間がかかっちゃいました」
 私は彼の背を見る位置に椅子を置いて、次々に描き足されていく色をながめていた。
「でも、こんな静かな部屋で絵を描けるなら、今までよりずっと集中できます。今描いている絵も、今日中に完成させられそうです」
「そうか。私は完成した作品を、誰よりも早く見ることが出来るんだね。喜ばしい限りだ」
 ヒロンは少し背中を揺らすと、手を止めてこちらを振り向いた。
「俺より上手い画家はたくさんいるでしょう? 褒められても困っちゃいます」
「おや、私は本音を言っただけなのだけれど」
「っ、だからそれが困るんです! 俺なんて、まだまだなのに……」
 と、ヒロンは口をとがらせた。しかし君には才能がある、なんて言ったら、彼はもっと機嫌を悪くするのだろう。
 私は少年に対する希望を口にはせず、静かに席を立った。
「それじゃあ、私は少し出かけてくるよ。君の邪魔をしても悪いからね」
 カフェへ行ってヒロンのことを話して聞かせよう、と思っていた。

 店員はとてもびっくりしてくれた。
「えー、画家の卵を拾ったってこと? ホヴィスって本当に変な人」
「私のことはいいから、彼の方に驚いてくれないか?」
「驚くって言っても、まだまだ駆け出しなんでしょ? まぁ、ホヴィスが見込んだくらいだから、才能はあるのかもしれないけれど」
 アイスティーを一口飲んで、私は彼女の言葉を待った。
「ヒロン・タレントねぇ……一応、名前だけは覚えておくわ」
「ありがとう、ジョイン。彼もきっと喜ぶよ」
 私は無意識に、彼のことを自分のことのように喜んでいた。もしかすると、私は自分が思う以上に、彼を気に入っているのかもしれない。
「そこで少し相談があるのだけれど……もし良ければ、ヒロンの絵を」
「うちには飾れないよ? 見て分かるでしょ、もう場所がないの」
「そうか……、残念だな」
 と、私はしょげて見せる。しかし、答えは聞く前から分かっていた。
 彼女はやれやれといった様子で息をつき、店長の方へ向かう。そして二言三言会話を交わすと、私の方へ戻ってきた。
「お店には置けないけど、馴染みの画廊を紹介するって。店長の名前を出せば、少しは優しくしてくれるはずよ」
 と、画廊の住所が書かれたメモを渡してくれる。
 私はありがたくメモを受け取って、にっこりと微笑んだ。
「ありがとう。屋敷へ戻ったら、すぐに彼へ話すよ」

「え、画廊に俺の作品を?」
「ああ。どの作品でもかまわないから、持っていってみないか?」
 キャンバスに最後の一筆を置き、ヒロンは改めて私を見た。
「まだ自信がないので嫌です。この作品だって、ちゃんと乾くのを待たなくちゃいけないし」
 と、あの広場から見える風景そのものを描いた絵に視線を向ける。出来あがったばかりの作品は完成度が高く、海辺の街の穏やかさを見事に表現していた。
「それなら、自信を持てる作品が出来るまで待とう。私は君に強要するつもりはないから、画廊へ持っていける作品が出来るまで、君を待ち続けるよ」
 私がそう申し出ると、ヒロンは申し訳なさそうな顔をしてうつむいた。
「すみません、ホヴィスさん」
 彼は自分の力量を知っているから、私の言葉に反抗するのだろう。コネや金を使って有名にすることは出来るけれど、それは彼の熱意を踏みにじるだけだ。

 翌朝、食堂へ向かう最中にヒロンと出会った。
「おはよう、ヒロン」
「おはようございます、ホヴィスさん」
 私は彼の隣へ並んで歩調を彼に合わせる。
「あの、あなたに聞きたいことがあるんです。ホヴィスさんはどうして、こんな屋敷に一人で?」
 と、彼はちらりと私の様子をうかがった。
「さあ、何でだと思う?」
「分からないから聞いてるんです」
「はは、そうだね。……君には、話してもいいのかもしれないな」
 私はそう言葉にしながらも、その先を言うつもりはなかった。
「……話してくれないんですか?」
 食堂が見えてきてヒロンは足を止めた。
 私もつられて足を止めかけたが、やっぱりやめた。彼の先を行き、朝食をテーブルへ並べている使用人に声をかける。
「おはよう、ミセス・ファルナ。今日の朝食は何だい?」
 何故だか分からないが、私は彼にすべてを話すのが恐かった。病気のことだけじゃない、私という人間について話すことに、私は恐怖を覚えていた。

「私はもう若くないんだ」
 ようやくヒロンに言えたのはそれだけだった。いつものように広いアトリエで二人きり、彼の背中をながめていた。
「ホヴィスさんだってまだ二十代じゃないですか。それなのに、どうして俺のためにいろいろしてくれるんですか?」
 と、純粋に疑問をぶつけてくるヒロン。私は答えに迷った。
「それは……君を応援したいからだよ。芸術を愛する者として、私は君の背中を押してやりたいんだ」
 彼の聞きたいのはそんなことじゃない。分かっていても、私は言えなかった。
「それは分かります。ホヴィスさんの気持ちは嬉しいと思っています。でも、やっぱり納得がいきません」
 と、彼は私の方を見た。
 私だってきちんと話を出来ないことが悔しい。形の見えない恐怖に怯えている自分自身が、憎くてたまらない。――しかし、私は彼に対して素直でいるべきだった。正直であるべきだった。

   *  *  *

 その朝、ホヴィスさんは起きて来なかった。食堂にはミセス・ファルナがいるだけで、仕方なく俺は彼の寝室へ向かった。
「ホヴィスさん? 朝ですよー、起きてください」
 と、声をかけながらドアを開く。
 ベッドには彼の姿があり、まだ眠っているのだろうかと思った。しかし、ベッド脇まで来たところで俺ははっとした。
「ホヴィスさん?」
 苦しそうに顔をゆがめながら、ホヴィスさんは頭を抱え込んでいた。俺の存在には気付いたようだが、彼は頭がひどく痛むのか動けないでいる。
「待っててください、すぐに医者を呼んできますから!」
 と、状況を把握した俺はすぐに彼へ背を向けた。その直後、俺はホヴィスさんに手首をつかまれる。
「大丈夫だ、すぐに……よくなる……」
 消え入りそうな声でそう言って、ホヴィスさんは俺を見つめた。
 その後、ホヴィスさんは何事もなかったように起き出して、いつもと変わらない様子で朝食をとった。
 俺は彼に何もしてやれなかったことが歯がゆくて、何故だか無性に腹が立った。
「今朝は何があったんですか? 話してください、ホヴィスさん」
 俺は彼を無理矢理アトリエに連れてくるなり、真面目な顔で問い詰めた。
 ホヴィスさんは困ったように笑って口を開いたが、言葉が出てくるまでに時間がかかった。
「……病気、なんだ」
「何の病気ですか? 病院へ行かなくて大丈夫なんですか?」
 ふいと視線を外した彼は、いつも腰かけている椅子へ向かう。
「実家にいる時に病院へ行ったよ。手術だってした」
「手術!? そんなに大変な病気なんですか?」
 俺は目を丸くして、椅子に座った彼の前へ立つ。
「教えてください、ホヴィスさん!」
 彼は両目を伏せた。ため息をつき、俺を見ないように顔を背けてから、ゆっくりと目を開ける。
「脳に腫瘍があるんだ。アーモロートの中で最も腕のいい医者に、手術をしてもらった。だけど、手術では取り除けない位置に転移してしまって、もう一年も生きられないと言われたんだ」
 白くて整った横顔が自嘲の笑みを浮かべる。
「出来れば君を巻き込みたくなかった。君に、こんな重い話をしたくはなかった」
 金色の髪の毛は細くさらさらとしており、青い瞳はどこか遠くを見つめたまま動かない。俺よりも背が高く美しい体躯は、今だけとても小さく見えた。まるで縮んでしまったかのように、とても小さく、儚い。
「……それじゃあ、この街へ来たのは」
「うん。残された時間くらいは、自分の好きなように生きたくてね。これまで私は、人の言うとおりに生きてきたから」
 彼の祖父は政治家だと聞いたことがある。厳しい家庭に育った父に、自分もまた厳しく育てられたと。
「君のように未来のある若者を見ていたら、無性に手を差し伸べたくなったんだ。けれどもそれは、私の自己満足だったね。まったく無関係だった君に、私が勝手な希望を抱いていただけだった」
「そんなことありません! 俺は……俺は、ホヴィスさんに感謝してるんですっ」
 じっと彼を見下ろして、俺ははっきりと告げた。
「俺が今まで絵を描き続けてこられたのは、ホヴィスさんのおかげです!」
「ヒロン……」
「だから俺は、あなたの助けになりたいです。残された時間は短いかもしれないけれど、俺はあなたに恩を返したい。だから、だから……っ」
 彼の白く細い指が俺の頬に触れる。涙を拭ってくれたのだと分かって、俺は初めて自分が泣いていることに気付いた。
「ありがとう、ヒロン。君に出会えて、本当によかったよ」
「……っ、それはこっちの台詞です」
 俺は手の甲でぐいっと涙を拭う。
 涙でぼやけた視界が元の色を取り戻したとき、ホヴィスさんは優しく微笑んでいた。

 それから数日が経過した日のこと。
 俺は一枚の絵を描き終えるなり、庭を散歩していたホヴィスさんへ声をかけた。
「ホヴィスさん、ちょっといいですか?」
 と、手にしたキャンバスを表にして彼へ見せる。
「あの……この作品を、画廊に持って行こうと思うんです。どう思いますか?」
 彼は目を丸くすると嬉しそうに笑った。
「もちろんだよ、ヒロン! それなら今すぐ向かおう、準備をしてくる」
 と、慌てて屋敷の中へ入っていく。まるで病気などしていないかのように振舞う彼を、俺はひそかに心配していた。

 ホヴィスさんのひいきにしているカフェの、店長から教えてもらったという画廊には、やや怖い顔をした老年の男性がいた。
「こんにちは。カフェ・エヴァレストの店長、オールディさんに紹介されて来たのですが」
 と、育ちの良さを思わせるしっかりとした口調でホヴィスさんは言った。
 男性は俺の手にしたキャンバスをじっと見つめ、手を差し出す。
「絵を見せに来たのだろう? さあ、早くそれをよこしなさい」
「は、はいっ」
 俺は緊張しながらも、おそるおそるキャンバスを手渡した。
 男性は俺の作品を隅から隅まで見るとうなった。
「うーん、まだまだ芸術として見るには物足りないが、センスは悪くないな」
 褒められてつい口元がにやけてしまう俺を、ホヴィスさんがくすっと笑う。
「あんた、名前は?」
「ヒロン・タレントです」
「出身は?」
「カコトピア東部です」
「絵は誰から教わった?」
「誰からも教わってません。強いて言うなら、住んでいた町に大聖堂があったので、そこのステンドグラスや天井画を見て覚えました」
 男性は顔をあげると、俺の目をじっと見つめた。
「次の作品が出来たら、また見せに来なさい。そのうちに買い手も探してやろう」
「ほ、本当ですか! ありがとうございますっ」
 天にも昇る思いで俺は男性へ頭を下げた。隣にいたホヴィスさんもまた、深々と礼をしていた。

 その帰り、ホヴィスさんは報告ついでに紹介したいと言って、俺をカフェへ連れて行ってくれた。
「いらっしゃいませ。って、あら? ホヴィスがこんな時間に来るなんて珍しい」
「今日は紹介したい人がいてね。前に話したから分かると思うけど、彼がヒロンだよ」
 と、ホヴィスさんは店員の女性へ俺を紹介した。
「どうも、ヒロン・タレントです」
「ああ、あなたが……あたしはジョイン、よろしくね」
 にこっと笑う彼女は気さくな人に見えたが、ホヴィスさんの親密にしている人だと思うと、妙な心地になる。
 ホヴィスさんがいつも座っているというカウンター席へ着き、今度は店長に紹介された。
「オールディ店長、彼がヒロンだよ」
「ああ、いつも話している彼か。よく来たね、歓迎するよ」
 と、店長は穏やかな表情で笑う。
「それで、今日はどうしたんだ? 彼を紹介するためだけに来たのか?」
「もちろん違うよ。この前、画廊を紹介してもらっただろう? そこに今日、ヒロンの絵を持っていったんだ」
 テーブルを拭いていたジョインがはっと顔をあげる。
「そうしたら、次の作品も見せてくれって頼まれたんだよ」
 事実とは少し異なるが、ホヴィスさんがあまりにも嬉しそうに言うものだから、俺は訂正するのをやめた。
「へぇ、良かったじゃないか。あのじいさんのお眼鏡にかなったってことは、ヒロンは将来、でかい画家になるな」
「すごいじゃない、ヒロン。ほら、もっと胸張って」
 と、ジョインが後ろから俺の背を叩いた。
「痛っ、急に叩かれるのはちょっと」
「いいじゃない。ほら、もっと堂々としなさいよ」
 と、ジョイン。彼女の気持ちは嬉しかったけれど、俺は苦笑するばかりだ。
 見ると、ホヴィスさんはやっぱり嬉しそうな顔をして俺の方を見ていた。みんなの優しさが温かくて、俺は少しだけはにかんだ。

 病魔は確実にホヴィスさんの身体をむしばんでいた。
 朝はいつも廊下で顔を合わせていたのに、それがいつの間にか当たり前ではなくなっていた。ホヴィスさんが食事の後に嘔吐していると気づいたのは、その頃だった。
「頭が痛くて気持ち悪くなるんだ。前もそうだったから、本当にひどくなった時にはちゃんと分かる」
「そういう問題じゃないです! このままだとホヴィスさん、何も食べられないじゃないですか」
 彼は弱々しく笑ってみせてから、諦めたように言う。
「いいんだよ、ヒロン。どうせ、もう長くはないんだ。今さら病院へ行ったって何も変わらないさ」
「ダメです、ホヴィスさん! 病院へ行けば薬をもらえるんでしょう? 必要以上に苦しまなくてすむんでしょう? 行きましょう、病院へ」
 するとホヴィスさんはいつになく寂しげな目をした。
「すまない、ヒロン。私は少し、弱気になっていたようだ。君の言うとおり、病院へ行くよ」
 ――しかし、病院からもらった薬は気休めにしかならなかった。改めて検査をしたものの、彼の余命が伸びることはなかった。

 新しいキャンバスを買って屋敷へ戻る途中、ホヴィスさんが二階の窓から顔を出しているのが見えた。
 風に吹かれながらどこか遠くをながめている姿が印象的で、俺はしばらく道に立ったまま彼を見つめる。
 季節は冬。一年中暖かな気候のこの街でも、夏に比べたら気温は下がっているし、空の色も違う。他の場所より感じにくい季節の変化を、彼は感じ取ろうとしているのだろうか。
「……ああ、そうだ」
 彼の姿を残そう。真っ白なキャンバスに美しい彼の姿を残そう。そうしたらきっと、彼も喜んでくれる。
 彼のいる風景をしっかりと脳裏に焼き付けて、俺は歩き出した。
 屋敷へ入り、彼のいる二階へと向かう。
「ホヴィスさん、次のモチーフが決まりました」
「おかえり、ヒロン。それで、次は何を描くんだい?」
「はい、この世界を描こうと思います。俺の見ている世界、ホヴィスさんの生きている世界を」
 彼は少し首をかしげたが、すぐに子どものような無邪気さを見せた。
「そうか、完成するのが楽しみだな。期待しているよ、ヒロン」
 俺はその日からさっそく作品制作にとりかかった。

 ホヴィスさんの起床時刻は日に日に遅くなり、時には俺が助けなければ、起きあがれない日さえあった。
 調子のいい日には一緒にカフェへ出かけたが、彼は飲み物を口にするのがやっとという様子だ。
「このお店にはいい絵がたくさん飾られているけれど、ホヴィスはヒロンには勝てないって言うの」
「え? それってどういうことですか?」
 ジョインに突然話しかけられて、俺はそれまで見ていた絵画から目を離した。
 すると彼女は呆れた表情を浮かべて言う。
「ヒロンには無限の可能性が眠っている。だから、どれほど素晴らしい画家の絵でも、自分からしたら、ヒロンの作品より劣っているようにしか見えない。そう言ってあの人、いつも笑うのよ」
 俺はカウンター席で店長と談笑しているホヴィスさんを、ちらりと盗み見た。
「彼がそんな風に……? そうか、嬉しいな」
「まったく、嫉妬しちゃうわ。あたしだってそばにいるのに」
 と、ジョインはわざとらしく唇をとがらせた。
 その意図が分からなかった俺は思わず首をかしげたが、ジョインはすぐに離れていってしまった。

 一方で俺は、彼の生きている世界を描くことに専念していた。
 俺の見上げた先で遠くをながめているユーティ族の青年と、彼を取り囲む穏やかな海辺の街。十年ほど前までは、芸術家を志す者たちが集まって、お互いを高めあったといわれる街。俺とホヴィスさんが出会った”芸術の街”南ディストピアだ。

 ホヴィスさんが病を告白してちょうど一ヵ月半が経った夜、俺のベッドに一通の手紙が置かれていた。
 手にとって見るまでもなく、俺はホヴィスさんからの手紙だと気がついた。
 上質な素材のベッドに腰をおろし、封筒を開ける。中に入っていたのは二枚の手紙だった。
『親愛なるヒロンへ
 あと一週間もしないうちに、私はおそらく入院することになると思う。もう君は気づいているかも知れないが、私は手足の自由が利かなくなってきているんだ。今はかろうじて自分の力で歩いているが、朝はいつも君の助けを借りないと起きあがれない。まったく医者というものはすごいな、宣告された余命のとおりだ。
 そこで、君に一つ頼みがある。私が入院することになっても、家族には何も知らせないでくれないか? ミセス・ファルナには怒られてしまうかもしれないが、どうか何も知らせないで欲しい。思えば、私はあまり家族が好きではなかった。家族とともに過ごすより、君といる方が何倍だって楽しいんだ。私が入院したと聞いたら、家族はきっとこちらへやってくるだろう。そしてアーモロートの病院へ移されてしまう。そうしたら私は君に会えなくなる。そんなの耐えられない。ヒロン、君ならこの気持ちを分かってくれるだろう?』
 読みやすく達筆な文字だったが、文章を追うごとにどんどん形はゆがんでいく。
『初めに病を宣告された時、私は残された時間を好きに生きるだけで充分だと思った。自分の好きな街で、好きなことをして、好きなように生きる。私はそれだけで、人生を満喫できるはずだった。
 しかし、君に出会って考えが変わったよ。私はもっと君のそばにいたい。君のそばで君の作品を見て、君の絵があの画廊に飾られるところを見届けたい。そして君の名前が人々に知れ渡り、いつか美術館に君の絵がたくさん飾られて、より多くの人々の目に映る様子をこの目で見たい。君という画家が、君という人間が、たくさんの人々に認められる日まで、私は君をすぐそばで支えていたい。
 君のことを考える度、私は残された時間の短さに悔しい思いをさせられる。朝を迎えるのが怖くて、眠れない夜もあるほどだ。出来ることならもっと長く生きていたいよ。こんな中途半端なところで人生を終わらせたくない。』
 ゆがんだ文字は所々がにじんでいて、俺は彼の思いの深さを知った。
『私は、家族以外に人を愛したことがないから、こう言うのは間違えているかもしれない。けれども今は、こんな言葉しか浮かばないんだ。愛しているよ、ヒロン。君と出会えて本当に良かった。
 ……ずっとそばにいてやれなくて、ごめん。』
 刻々と近づいてくるタイムリミットを、俺はただ受け入れた。

 ホヴィスさんは手紙に書いたとおり、一週間もしないうちに自力での歩行が困難になって倒れた。
 病院へ運ばれるなり彼の入院が決まった。そして意識を取り戻したホヴィスさんは、ただ自嘲気味に微笑む。
「すまない、ヒロン。君にはまた、迷惑を……」
「気にしないでください。俺、迷惑だなんて思ってませんから」
 彼のもう動かせない手を、俺はそっと両手で包み込んだ。
「それに俺、言ったでしょう? あなたの助けになりたいって」
 ホヴィスさんは吊りあげた口角をおろし、両目を閉ざした。すると涙が頬を伝って、ホヴィスさんは言った。
「ありがとう……本当に、ありがとう」
 俺はぽろぽろと涙を流す彼をただ見守った。ホヴィスさんの体温をきちんと覚えていたくて、ただ彼の手を握っていた。

 病院を出た俺は一直線にカフェへ向かった。彼は嫌がったけれど、どうしても伝えなくちゃいけないと思ったからだ。
「あら、ヒロンじゃない。どうしたの、深刻そうな顔をして」
 いつもの日常を過ごしているジョインをじっと見つめて、俺ははっきりと告げる。
「ホヴィスさんが倒れました。脳に腫瘍があって、あと一ヶ月生きられるかどうか分からないんです」
 ジョインは俺よりも綺麗な金色の目を丸くして店長を振り返る。
 話を聞いていた店長は無言でうなずいてみせた。
「っ、な、何でよ! 何でそうなるの!?」
 と、彼女が取り乱す。
「ホヴィスさんは、あなたや店長に心配をかけたくなくて、ずっと黙っていましたが……本当のことなんです、信じてください」
 彼女はショックを受けたように押し黙ったが、やがて潤んだ瞳で俺をにらんだ。
「あんた、ちゃんと最期まで彼のそばにいなさい。じゃないとあたし、許さないから」

「ヒロン、この世界は不公平だと思わないか?」
 ある時、彼はベッドに寝た状態のままそう言った。
「不公平、ですか?」
「ああ……私はこれまで、ずっと将来有望だと言われてきた。両親が期待するとおりに国立の大学へ通って法律を学び、卒業後は知り合いの弁護士事務所で仕事をしていた。行く行くは私も立派な弁護士となり、活躍するつもりだったんだ」
 彼の視線は遠くを見ていた。窓の外には青い空が広がっているが、海は見えない。
「それなのに私は、もうすぐこの世界から消えてなくなる。三十年も生きないうちに、私という人間は終わってしまうんだ」
 家が貧しいことも手伝ってか、比較的自由に育ってきた俺とは違う。自分の好きなことに熱中して、自分の好きなことを仕事にしようと決めて、これまで生きてきた。
 けれども、俺と彼とでは何が違う? 何が違うから彼は死ななければならない?
「不公平だと思います、俺も。だってホヴィスさんは、俺にとってかけがえのない人で、とても大切な……」
 言葉がのどに引っかかる。言いたいことがあるのに言えない。
 俺へ顔を向けたホヴィスさんは、かろうじて動く右手で俺の頬を撫でた。
「嬉しいよ、ヒロン。私だって同じ気持ちだ」
 ホヴィスさんの優しい声が無性に愛おしく思えて、俺は彼の白く細い手を取った。両手でぎゅっと握って、声にならない感情を伝えようとしたけれど、俺は無力だった。

 その翌日、彼は激しい眩暈に襲われて、深い眠りへ落ちた。
 俺は彼の目が覚めるまで、毎日病院へ行って看病をした。
 屋敷へ戻ると食事をとるのも忘れて、絵の続きを描いた。
 そして彼が目を覚ましたのは、三日が経ってからだった。

「長い夢を見ていたよ。私はまだ幼くて、立派な画家になっている君へサインをねだるんだ。すると君はにっこり笑って、私の頭を優しく撫でてくれた」
 穏やかな表情で話すホヴィスさんは、これまでともに過ごしてきたどの瞬間よりも綺麗だった。
「私はとても嬉しかったけれど、君の周りにはたくさんの人がいて……私は君の幸せそうな笑顔を見て、君のそばを離れることにした。君の幸せを壊したくはないから、私は背を向けて戻っていくんだ」
「戻るって、どこにですか?」
「大地だよ。私たち男は大地から生まれ、女は大海から生まれた。だから私は大地へ帰るんだ」
 彼の口から神話を聞くのは初めてだった。もしかすると夢を見ている最中、彼はどこかで神様に会ったのかもしれない。
「私は悲しくなかったよ。少しだけ寂しかったけれど、君の幸せこそが私にとっての幸せでもあるんだ」
 ホヴィスさんはそう言うと、俺の目を見つめて微笑んだ。
「ヒロン、どうか幸せになってくれ。私のことは、時々思い出してくれればいいから……」
 うとうととうたた寝をするように彼は目を閉じる。
「ホヴィスさん? ホヴィスさんっ」
 名前を呼んでも返事はない。彼の呼吸する音が止まって、俺は目の前が真っ暗になった。

 生前の遺言に従って、彼の葬儀は南ディストピアの片隅でひっそりと行われた。
 神聖な炎に焼かれて灰になる。その炎の青さに見とれながら、俺は呆然と涙を流していた。
 そして繊細な細工の施された美しいドーラが俺へ手渡された。今やホヴィスさんは灰と骨だけとなり、俺よりもちっぽけな存在になっていた。
 俺は一通の手紙を添えて、首都アーモロートにいる家族の元へ彼のドーラを送ってやった。
「これからどうするの、ヒロン」
「分かりません。でも、屋敷を出る前に、どうしても完成させたい作品があるんです」
 あの屋敷はホヴィスさんのものであって、俺のものではない。使用人のミセス・ファルナも、屋敷の片付けが終わったら出て行くという。
 まっすぐに続く道の先できらめく海を見つめたまま、ジョインはたずねた。
「あなたは、まだこの街にいるつもりなの?」
「ええ……もうしばらく、ここで腕を磨こうと思ってます。画廊の主人に認めてもらえる日まで、頑張ろうと思います」
 彼女は空を見上げると、ため息をついた。
「あたしはこの街を出るわ。あなたのことは応援したいけど、彼を思い出すのが辛いから」
 数日後、彼女はその言葉どおりに街を出ていった。

 青い空を見上げる金髪の青年。素晴らしくも儚く、不公平な世界を見つめる蒼い瞳の青年。
「タイトルは……そう、『不公平な世界』だ」
 きっとこのモチーフは、俺が生涯をかけて描き続けるテーマになる。
 この不公平な世界から、少しでも早く抜け出すために。一人でも多くの人を、ここから助けだすために……俺はひたすらに絵を描き続けていく。(終)

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