読書感想13冊目:おいしいベランダ。吾潟家のポートレート/竹岡葉月著(富士見L文庫)
注:感想を書き連ねる間に重要なネタバレをしている可能性があります。ネタバレNGな方は読み進めることをおすすめしません。苦情については一切受け付けません。また、感想については個人的なものになります。ご理解ご了承の上、読んでいただくことをお願いいたします。
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再忠告です。この本はシリーズの番外編となるため、シリーズを読了しているものとしてネタバレもふんだんに盛り込んでおります。
個人的にはこの感想で「読んでみたいな」と思っていただければ重畳!と意気込んではおりますが、ネタバレが地雷な方は要注意です。
前回の読書感想に続いて『おいしいベラシリーズシリーズ番外編第二段。
(前の感想やそもそものシリーズ説明に関しては下記の記事からどうぞ)
2023/10/11 タイトルに誤りを発見し、修正しました。
するっとさらっと読了感が良くて読みきってしまうので、私自身、竹岡先生の作品とは相性がいいんだなぁと思うところです。
自分の創作は暗めなのにね……明るいの下手なのにね……
はさておき。
本題の感想に入ります。
前巻で嬉しい報告で締めくくりを終えての続き。
今回も全部で書下ろしが4編、プラスエピローグ1編、後日譚ショートがそれぞれ。
今回はさらにさらに番外編のための番外編!ということでこう、ずっしりとコクとうまみの深まった一冊になっている感じです。
前巻が薄味だったというわけではなく、本編終了後のデザート、飲み物的な「飲みやすいもの」という感じでしょうか。
当番外編は豪華なデザート!という感じ。しかもこう、シェフのこだわり的な……そんな……感じ……?
ちょっとだけお腹にがつんとくる、でもメインじゃない。そんなお話立ちです。
シリーズになぞらえて食べ物系の伝え方になってしまいました。
優しい一文から始まるお話たちです。
1編目はまもりちゃんの妊娠生活のあれやこれ。
性別がわかったり赤ちゃんが生まれた後のことを考えたり。
現代社会ってキビシー!いろいろやることだらけ!にぶつかって悩む妊婦・まもりさん。
里帰り出産に向けての検診にあわせて親友の湊ちゃん(前回からお引っ越し済)とお茶に。
妊婦さんが口にできるものって、難しいですよねぇ。母体が胎児に与える影響、大きすぎる。
久しぶりに登場の志織さんの素敵なアシストで美味しいお茶を堪能して、かつゲットできたまもりちゃんにお茶好きな身としては「良かったねぇぇ」の一言です。
その後のちょっとしたハプニングにより、新たなRTA(リアル・タイム・アタック)が始まるのはまた、別のお話。←次回へ続く!
ちなみに今回のお話はがっつりご飯!」ではなく冒頭のそぼろ丼でした。肉そぼろ、いいなぁ。好き。
2編目。今回も実はご飯が冒頭に。メインは1編目のRTAの本格化なお話。
具体的にはマイホーム購入が決まった亜潟夫妻。そのリノベについて。
理想のおうちって難しいですよね。莫大なお金をかけて、人生の大半を過ごす場所を確保する。もしかしたら一生分どころか何世代もの人の生活の基盤にもなるのですから。
そんな大事に対し、今回はリノベ側の視点から二人を眺めるお話になっています。
求めることを聞き出す力、それを取り入れて形にする力、そして現実的推進力を持たせること。営業さんの求められるスキルって、本当に深いですね。
結果として、このお話でもみんな微笑ましい。未来が明るいって素敵。
3編目は冒頭、まもりちゃんが暗ーい顔をして登場。
現代の子育て問題。保活。
何年前になるのか。「落選した。日本〇ね」のSNS投稿が話題になりました。
それくらい、需要と供給がほんとうに高まっている問題。
いつも問題をポジティブに解決していく二人にも、なかなか、難しいものとして横たわります。
ちなみにご飯は冒頭と終わりにそれぞれメインとして美味しいものが。これ、作ってみたいな、食べたいなーとよだれが出てしまいました。
このお話は、まもりちゃんのいろんな心配をひとまず持ちすぎないように、旅立つ準備的な位置づけのように感じました。
なにせ、最後のご飯のシーンは二人で新婚生活を過ごしたアパートでの、「二人で食べる最後のご飯」だったのですから。
ということは、で次回に続きます。
ちなみに。3編目のその後のショートショートで、産気づいた報告を聞いた葉二さんの反応が「だから妊娠してない本人は!!!」なものだったので、社員の皆様のサポートがグッジョブ過ぎる、と思ったのでした。
これは葉二さんも優秀だけど、本当に良い社員を雇用してるな、良い会社だなと変な目線でも感心してしまったのでした。
4編目は前巻からほんの少し続いているお話(1編目の湊ちゃんも続いていると言えば続いてましたが)です。
まもりちゃんの弟、ユウキくん。番外編2でも引き続き登場。
今回も義兄の葉二さんとの絡みです。
新居生活、が始まっているわけではなくその対応をせまられるユウキくん。お庭造りにかまけてもろもろがおろそかになっている義兄に呆れているのか否か、せっせと作業をこなします。
そんな二人はお昼も夜も男飯、一般的なイメージよりももう少し本格的なそれは、美味しそうにお酒を飲む姿を彷彿とさせていて、男性同士の空気ってこんな風なんだなぁとある意味面白いシーンを読ませていただきました。
最後、つづきと称した意味が帰結する部分になるのですが、個人的に「やっぱりね」といい意味で安心するものでした。
若人にもたくさんの幸あれ~
ラストエピソードと、その前の後日談ショートショート。
夫婦にありがちな「うっかり」が描かれたショートはほっこりしつつ、その後のラストエピソードでそうして描かれた幸せっぷりが浮き彫りにされている様子。
そして一度はきっと思い描く、「あのときこうならなかったらーーー」女性にありがちなんでしょうか。悪いものでなくとも、今に満足している部分があるからこそ、その想像に少しぞっとしてしまう。
けれど夢から目覚めたとき、やっぱり幸せだなぁと感じる瞬間。それって本当に素敵なことなのかもしれませんね。
亜潟家もこれからますますほっこりあったかく賑やかに、美味しく幸せを紡いでいくのだろうなと思います。
というか、まだこのシリーズ、お話たくさんでてきてもおかしくないな!?と思いました。のぞいてみたい、今後の亜潟家のストーリー、そしてまわりの人々のストーリー。
そう思える作品に出会えたのことが、私にとっても幸せです。
公式紹介ページはこちら
お読みいただきありがとうございました!
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