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読書記録33冊目:朱華姫の御召人(あけひめのおめしびと)上 かくて愛しき、ニセモノ巫女/白川紺子著(集英社文庫)

 注:感想を書き連ねる間に重要なネタバレをしている可能性があります。ネタバレNGな方は読み進めることをおすすめしません。苦情については一切受け付けません。また、感想については個人的なものになります。ご理解ご了承の上、読んでいただくことをお願いいたします。

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「後宮の烏」の源点!
出生の秘密を抱える少女×孤独な第二皇子の和風ファンタジー!

帯より

 暁国には、護り神がいる。その神は、舞楽を得意とする朱華姫と呼ばれる少女の、その舞楽を気に入り国の護り神となった。
 以来、護り神に舞楽を捧げる役目を持つ姫を「朱華姫(あけひめ)」とし、朱華姫は代々神に仕えているという。
 そして、護り神は朱華姫そのものもたいそう気に入り、自分のそばにと妻に望んだが、求婚を断るためにおいた存在は、第二皇子が務める<仮の夫>。 
 そうして、暁国には神に仕える巫女のような役割の朱華姫と、彼女のそばには夫の役割を務め、補佐と護衛、つまり世話係となる「御召人(おめしびと)」と呼ばれる者が常にある。

 という舞台で、反乱により命を落とした先の帝のご落胤である主人公、蛍は母の言いつけにより出生の秘密を漏らさぬよう、母の生家で不遇の立場にあいながらけなげに生きていました。
 朱華姫が死亡して後にだんだんと謎の病が流行り、母もまた同じく倒れてしまい、しいたげられながらも母とそばにいつもいてくれる乳母子の巴とけなげに頑張っていたのですが、ひょんなことから「朱華姫」に選ばれてしまいます。
 
 よくある話とするなら、蛍ちゃん本人が神さまに出会ったり、不思議なものが見えていて、その能力がばれてあれよあれよとまつりあげられてしまい……という展開も見受けられますが、蛍ちゃんの場合は特にそういう事情もないわけで。
 あるとするならば自分が先の帝の子どもであると、誰にも言ってはいけない秘密を抱えていると言うこと。そして母からは秘密を守ることと帝の宮に近づいてはいけないと強く言われているということ。
 それは、直接には朱華姫に選ばれる理由にはならないので、おやおやちょっと展開が違うぞ……?という雰囲気。
 冒頭、御召人となる第二皇子の柊さんと出会っているのがときめきポイントですが、神秘的なエピソードに直接つながる感じではなく。
 では、なぜ蛍が「朱華姫」に選ばれたのか。それはもう、大人の事情、政治の道具にするのにちょうど良い立場だったから。それだけという。
 人ひとりの人生、簡単にどうにかできちゃうのが政治のこわいところだよなぁと思うのですが、救いは蛍ちゃんを朱華姫に選んだ帝が人道的な面を見せてくれるところ。ぎりっぎりの最低ラインですが笑
 そんなこんなで朱華姫として生活を始めた蛍ちゃんと、突然そばにいるようになった第二皇子の柊さん。初々しいやりとりとかときめきポイントが多いかと思いきや、あるはあるも終始ふたりのやりとりは食べ物ネタが多くて蛍ちゃんの不遇な環境もよくわかりつつ、ほっこりさせられます。
 蛍ちゃん、美味しいものいっぱい食べて健やかにおなり……!!!と思ってました。なんというか、細くてガリガリで、お菓子をあげたくなる女の子のイメージで読み進めてしまっていたので。
 中盤までは蛍ちゃんと柊さんの、信頼関係を築こうとする進み方です。なにせ、柊さんにも事情があって宮中ではあまり受け入れられていないどころかどちらかというと疎まれてすらある様子で、蛍ちゃんにも遠慮しがちで蛍ちゃんは蛍ちゃんで伝え方がわからずもだもだしていて。
 じっくりじわじわ、二人が近づくのと同時、どうしても避けられない「朱華姫であることの重さと役目」にも立ち向かわないといけないわけで。
 そのあたりが副題にも掲げられた大きな流れにもなっており、二人のそれぞれの事情が絡み合ってお話が展開されていくわけです。

 国の巫女たる朱華姫のお話とともに、上巻であるこちらは柊さんとの信頼関係を確固たるものにするかたちとなり、きゅん、とするしめくくりで下巻へとつながっていきます。

 主役を取り巻くキャラクターたちもみんな個性があって良いですね。
 第一皇子の萩(しゅう)さんや、朱華姫に仕える桃花司(つきのつかさ)の長である絲(いと)さんや、帝と帝の側近青藍(せいらん)さん、みんなそれぞれ、個性があって人が良いやら面白いやらで、二人に接するシーンがそれぞれ楽しく読み進めることができました。

 ちなみに。
 『後宮の烏』も愛読している私ですが、作者が同じと認識しつつタイトルとあらすじと表紙に惹かれて購入した今作。
 よくよく見たら”2014年5月に集英社コバルト文庫より刊行されました”とあったので、びっくり。購入したのは2022年の12月だったので、8年前のお話……!?となりました。
 当時に購入しなかったことを悔やむべきか、『後宮の烏』を読みながら同じ世界観を味わえる作品に平行して浸れることに喜べばよいものか。
 どちらであってもとても楽しめるのであろうなと思いつつ、体験できなかったほうの感覚に思いを馳せてしまうところです。

公式紹介ページはこちら

下巻はこちら(記事が更新され次第、リンクを貼ります)

お読みいただきありがとうございました!

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