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狭霧 織花
2022年11月27日 21:09
『忘れないで。また会おうね。絶対ね』 そう言われて渡されたのは、たった一輪の大きく立派に咲いた花。『ずっと忘れないよ。またどこかで、絶対に会おう』 そう返したのを覚えてる。 くる、くるとまわすと、花びらが風車のように回る。 ―――こんなんが約束の印かよ。――― 少し笑いがこみ上げる。口元にのぼる笑みは、きっと皮肉めいているだろう。 春、夏、秋、冬。あれから何度、季節は巡ったのか。
2022年11月20日 21:15
夢を見ていた。目の前に広がるのは幻想的な草原。 どこまでも、どこまでも果てなく続いていく緑の海原。 切なく、懐かしい思いが込み上げてくる。 なぜかはわからない。 ただ、涙が込み上げるように、夢を見る。 ただ、ずっと恋焦がれるように。願うように、夢を見る。 夢を、見ていた。 なぜ……? 問い掛けても答えはなくて。 ゆっくりと目を開くと、目の前には愛しい人の横顔が見えた。「
2022年11月13日 22:12
ずっとずっと不思議だった。 目の前に映るものの、全てが。なにもかもが。とてもとても、不思議だった。 ある日私は尋ねてみた。「どうして人は人を好きになるの?」 母は笑って答えた。「さあ、どうしてかしら?でも、母さんは父さんのことがとっても好きよ?」 偽りの無い素直な言葉。その声音が、甘さと幸せを含んでいた。 そして、「あなたのことも好きよ。私の大事な人たち」 続けられた言葉は私に