見出し画像

【鑑賞記録】表装の愉しみ ある表具師のものがたり

泉屋博古館で開催している特別展「表装の愉しみ ある表具師のものがたり」を拝見しました。

表装とは絵画を鑑賞するために欠くべからざるものです。絵が描かれている紙や絹を本紙と呼びますが、本紙だけではすぐに傷んでしまいます。また絵を見るのにも不便です。そこで掛軸や巻物に仕立てて保存と鑑賞両方に叶うように表装されます。もともとは中国でおこなわれた表装は、日本へも奈良時代頃に伝来した仏画によって知られるようになったとされます。

今回展示を拝見して感じたのは、中廻しの幅(表装の柱の幅)が作品の遠近や崇高さ親しみやすさを生み出すことがあるのだということです。泉屋博古館が所蔵する重要文化財の「布袋図」黙庵筆は柱が細く一文字を省略した輪補(りんぽ)表具です。布袋は笑みを浮かべその姿自体が親しみやすいですが、細い柱のために絵が近いように感じ親近感を感じさせてもいるように思います。
遠近感を感じた作品に住友春翠が描いた「盆踊図」2幅がありました。同じ構図で描かれる2幅は表装の柱の幅が異なります。柱が細い作品の方が手前のように感じられました。

中国絵画に見られる重厚感は絵とともに表装から生み出されているのだと感じました。
仏画や神像などの表装は独特な感じも受けました。

泉屋博古館が所蔵する佐竹本三十六歌仙絵切も当然展示されていて、作品だけでなく収蔵している箱も合わせて拝見できました。外箱と塗りの内箱、白木の作品をいれる箱の三重箱です。

展覧会図録には各部位の呼称など表装の基礎知識がまとめられています。裂についてもまとめられていて、印金とか金襴とか拡大図で説明されているのでよくわかります。

大阪の表具師であった井口古今堂の資料には表装を選定する時に使うミニ表装があって丁寧な仕事ぶりが伺えます。

展覧会は12月10日まで。